545 天国の跡地

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経営コラム SOLID AS FAITH 第545号
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 ご愛読ありがとうございます。第545話をお届けします。

 10月に入って世の中はVUCA全開になってきました。それも結構嬉しいVUCA
です。

 大量に押し寄せる移民で社会も経済も大混乱のEUは、宇露戦争でエネルギ
ーも枯渇した上に、記録的な旱魃でロワール、ライン、ドナウなど主要河川
の水上物流に大打撃です。経済力に見合わない安さのユーロで輸出益を享受
してきた盟主ドイツも世界がブロック経済に移行して大変なことになってい
ます。自分達に有利なグローバル経済を作り上げるために仕掛けたSDGsブー
ムも自分達で幕を引かねばならない様相です。

 米国はグレート・レジグネーションで人件費は高騰し、金利は急上昇し、
終わりの見えないインフレ退治で経済活動全体の縮小が見込まれています。
中国版アパルトヘイトが火種の中国はバブル崩壊で暴動だらけで、「一帯一
路」もあちこちで綻んで来て、おまけに人口縮小まで見えてきました。ロシ
アの行き詰まりは言わずもがなです。
 
 ネットでもマスメディアでも、何かと言えば、「日本はダメだ」、「お先
真っ暗だ」と国外で富裕層として暮らしながら日本を論う有名人の神輿を担
いで、馬鹿げた日本叩きを繰り返す人々の話ばかりが目立ちますが、客観的
に見て、他の先進国と称する国々がどんどん失速する中、日本だけが横這い
好調という風に見えます。
 
 円安も騒がれていますが、欧州の電力企業群が信用不安で210兆円もの追
加証拠金を差し入れる必要があるなど、日本以外全世界的に総じて資金が逼
迫する中で、円安・金利安で円は超大人気になる可能性もあります。
 
 円安で輸入製品の価格が上がると騒がれていますが、元々ブロック経済に
移行しつつあるのですから、これを機に国内産業を振興し、あらゆる製品の
自給率を挙げていけば良いだけのことです。寧ろビジネス・エリアが国内市
場に留まることが多い中小零細企業には、天国のような時代の到来かもしれ
ません。「ピンチはチャンス」どころではありません。チャンスだらけの時
代が訪れています。
 
 今回お届けする『天国の跡地』は、そんな日本の社会や経済を見直してみ
る内容です。ベーシック・インカムの社会的な効果を軸に色々と考えてみま
した。是非暫しご一緒にご一考ください。ご意見・ご感想をお待ちしており
ます。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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その545:天国の跡地

「何が足りないかはたいして重要ではない。足りないのが時間であれ、金銭
であれ、友情であれ、食べ物であれ、――そのすべてが、『欠乏の心理』を
もたらす。(中略)『欠乏の心理』がもたらす悪影響は、そのメリットをし
のぐ。欠乏はあなたの気持ちを、差し迫った不足に集中させる。五分後に始
まる打ち合わせとか、翌日に迫った支払とか。そうなると、長期的な視野は
完全に失われる。『欠乏は人間を消耗させる』とシャファーは言う。『他に
も等しく重要なことがあるのに、そちらに気持ちを向けられなくなるのだ』」

『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』の
中の「欠乏の心理」の説明。プリンストン大のシャファーとハーバード大の
ムライナサンの研究では、「貧困はIQを13~14ポイント押し下げる」と結
論付けられている。貧困に喘ぐ人に仕事や教育を提供する福祉制度を設けて
も、その存在や価値に気づけない。単に金を撒けばすべて解決する。現実に
ベーシック・インカムで薬物中毒者も減り治安も良くなり教育も皆が望み、
不思議なことに就職率まで上がった社会実験の事例が紹介されている。金を
貰って生活に困らなくなると、皆真面目に働き始めたということになる。遠
い異国の話。

 全く違う世界の話を知っている。宮口幸治の『ケーキの切れない非行少年
たち』。1950年代の一時期、「知的障害はIQ85未満」とされたが、全体の
16%にもなってしまうため、「IQ70未満を知的障害」とし、IQ70から84の範
囲は「境界知能」と呼ぶことにした。欠乏を感じていなくても全人口の16%
は知的な困難を抱える可能性がある。
 
 薬物中毒者も他先進国に比べ少なく、識字率も読解力もトップクラス。治
安は言うまでもない。その日本で真鍋昌平の描く『闇金ウシジマくん』や
『九条の大罪』の中のリアルな人々は生活保護を始めとする福祉を施されて
も全く生活を改めない。この対称を考えていて、ふと第226話『天国の蛹』
でも挙げた曽野綾子の『貧困の光景』を思い出した。

「途上国の多くの人たちは、日本が地球上のどこにあるかも知らず、日本の
現状など知るすべもないが、国家が必ず食わせてくれると聞いたら、それだ
けで、『そこは天国だ!』『私はそこに行きたい!』と叫ぶだろう。」と曽
野は言う。一億総中流は「失われた〇年」とやらで、ジワリと貧困に近づい
た。けれども市場には廉価なモノが溢れ、生活に喘ぐ者も未だ極少で、リス
カをライフスタイルと称する人々さえ存在する余裕が残っている。

 そうか。これら二つの社会観は撒かれる金の限界効用のグラフの左端と右
端だったのではないか。撒かれた金は社会が酷いうちは効果をどんどん出す。
しかし限界効用逓減の法則により、金は急速に神通力を失う。私達は世界で
も稀な天国の跡地にいる。
 
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■第226話『天国の蛹』 http://tales.msi-group.org/?p=338
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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『萬屋日和』 「会社の萬屋 企画改善請負本舗」からのPR

「会社の萬屋 企画改善請負本舗」の奥田美幸です。
新型コロナウイルスの流行で外出自体に
心理的な抵抗を感じる人が増え、
わざわざ出かけてでも行きたくなるようでなければ、
小売店は生き残ることが難しくなってきました。

店舗経営において立地が最も売上を左右する重要な要素です。
先日あるクライアント様の新規出店計画に伴い、
候補地周辺を師匠の市川と半日かけて歩き、
商圏調査を行ないました。

人の流れや住んでいる方々の雰囲気など、
数字だけではわからないことを中心に見ることで
出店した後に繁盛店になるかがわかってきます。

商圏調査を含めた新規事業立ち上げの事例を
以下ページの≪事例2≫に紹介しておりますので、
ぜひご高覧ください。
https://kaisha-yorozuya.support/works/solutionsaboutprofit-exp/

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『萬屋のもっと深く愛してい』第42回_生体認証(導入)

スマートフォンやパソコンの画面に、顔を向けたり指を置いたりするだけで、
簡単にロックを解除できる「生体認証」の技術は、私たちにとって身近なも
のとして生活の中に溶け込みつつあります。

そもそも「生体認証」とは、顔や指紋などの生体情報を使って本人を識別す
る仕組みです。事前に本人を識別するための生体情報を登録し、認証時に読
み取った情報と照合をすることで本人を識別します。バイオメトリック
(biometric)認証あるいはバイオメトリクス(biometrics)認証とも呼ば
れています。

生体認証の利用に適した生体情報の条件には、「すべての人が持つ特徴であ
ること」、「同じ特徴を持つ他人がいないこと」、「時間によって特徴が変
化しないこと」が挙げられます。

「一卵性双生児の身体的特徴は同じなのではないか」という疑問が挙げられ
ることがありますが、指紋、虹彩、静脈やほくろの位置・数などは、遺伝子
が完全に一致する一卵性双生児でも異なっていますので、違う人として認識
されます。

生体認証は一人ひとり固有の身体的特徴を鍵としているため、なりすましや
偽造が難しく、より確実なセキュリティを必要とする場面での本人確認に適
しています。物理的な鍵を持ち歩く必要がなく、紛失する心配もありません。

指紋を照合するシステムはNECによって、1980年代初頭から提供されてお
り、その技術をコンピュータと組み合わせることで、現在の指紋認証のシス
テムが作られました。この頃は特別な場所への入退室に使う「鍵」の代わり
とするものでしたが、インターネットが普及し始めた1990年代からは、「人
そのもの」を特定する技術に発展しました。2000年代からは汎用的なカメラ
を使って導入できることから、顔認証技術も研究が進み、一気に普及してい
きました。

近年ではマンションやホテル、コンサート会場、店舗決済やオンライン本人
確認など、さまざまな用途で活用され、さらに衛生面の価値観の変化にとも
ない、非接触で衛生的な生体認証の活用が期待されています。

このテーマについてさらに詳しいご説明が可能です。
ご希望の方は萬屋までご一報ください。
contact@kaisha-yorozuya.support

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経営コラム SOLID AS FAITH 23周年記念特別号 予告

恒例の周年記念特別号の発行が今月月末に迫りました。今回のテーマは「読
解力」です。AIに仕事を奪われないためには、人間側に高い読解力が必要と
いわれています。

ここでいう読解力は単純に本の内容を読み取る能力だけではなく…
「コンテキスト(文脈)を読みとる力」のことです。

この中には、文章を読み取ることはもちろん、場の雰囲気を読み取る、相手
の表情を読み取る、相手の感情を読み取る…といった能力も含まれていると
いうことです。この読解力は高校生ぐらいの年齢になると、意識的な努力を
しないかぎり伸びなくなると言われています。つまり、中小零細企業が人の
質で差別化を図ろうとしたら、集中的な読解力教育が必須になる時代はすで
に到来しているのです。

中小零細企業の生き残りのカギとなる大テーマを以下の章立てで、分かりや
すく提示する予定です。ご期待ください。

○第1章:読解力とは?
○第2章:中小企業の人材教育の役割
○第3章:勉強会の事例
○第4章:背景にある世の中の読解力教育の状況
○第5章:AIとの差
○第6章:海外との比較

※全体タイトル、章タイトルは仮のものです。

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『美貌のひと 2 時空を超えて輝く』 中野京子 著
■『日本の教育の危機はどこにあるか』 陰山英男・出口汪 共著
■『女子のキャリア 〈男社会〉のしくみ、教えます』 海老原嗣生 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
 bizcom@msi-group.org
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インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発行しています。
(http://www.mag2.com/ ) 

毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まず足掛け23年。

マガジンID:0000019921 (ナント、たった5ケタ)
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次号予告:
 第546話 『犯罪志向』 (10月25日発行) 
 西欧文化圏における労働観について考えてみると共に、中小零細企業組織
でより意識されるべき動機づけ要因を振り返ってみました。

(完)