542 ダウングレード

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経営コラム SOLID AS FAITH 第542号
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 ご愛読ありがとうございます。第542話をお届けします。

 グローバル経済がかなり綻んだ昨今、インフレが続いています。他の先進
諸国では企業が市場の寡占化や独占化を背景に構造的なコスト・カットの努
力を怠りがちなので、原材料価格や人件費の上昇は容赦なく販売価格に転嫁
され、途方もないインフレ率が報道されています。販売価格への転嫁を極力
回避しようと努力するのが日本企業ですが、一方で政府によって今年も3%程
度の最低賃金引上げが見えてきています。

 販売価格引上げは極力抑制したい。しかし、最低賃金に追い立てられて働
き手の時間単価は上げざるを得ない。そうすると、「何らかの販売量の拡
大」、「原価も含むコスト・カット」、「労働時間・労働力単価構成の調整」
の組み合わせの落し所を模索しつつ、難しい経営の舵取りを迫られる結果に
なります。第541話『三分の理』で書いた通り、日本の中小零細企業が殊更
海外に比べて生産性が低いというのは妄言のようですが、それでも結局、コ
スト・カットや仕組みの改善、そして売上向上の組み合わせによる生産性改
善は避けて通れない道になってしまっています。

 通称武漢ウイルス騒ぎで借りた大金はそろそろ返さねばならず、通称武漢
ウイルス騒ぎで貰った金が利益になってしまえばまとまった税金を支払わね
ばならなくなって、経営が急激に厳しくなる中小零細企業が増えていると言
います。しかし、それをクリアして到達するのが本来の会社経営の常態です。
その常態に至って漸く先述のような面倒な経営環境の変化の中に隘路を見つ
ける立場になるのだと考えられます。
 
 経営に王道はないと言われることがあります。困難な状況だからこそ、経
営の基本や商売の基本に忠実な組織運営が求められています。そんな状況下
の中小零細企業経営者の今すぐの一手、その次の一手を編み出すお仕事が増
えています。
 
 今回の『ダウングレード』は、遥か以前の弊社クライアント企業であった
魚河岸の仲卸業者さんの接客態度から、お客の驚きや喜びにつながるオペレ
ーションの価値について考えてみた内容です。ご意見・ご感想をお待ちして
おります。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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その542:ダウングレード

「市川さんが行っていたのはもう何年前でしたっけ。この前、前を通ったら
呼び止めるんで中に入ったんですよ。そうしたら、他の店にないちょっと珍
しい素材とかは一応あるんですけどね、値段が高いんですよ。珍しい素材を
遠くても配達するとか、そういう対応の価値があるって思ってんでしょうけ
どね。けど、やっぱ、あれは止めてないんですよ」。

 クライアントの社長に連れて行っていただく地元の料亭の大将が、彼が河
岸と呼ぶ魚卸売市場のある仲卸店について、サッカーのトラップのような動
作を脚でしながら言う。その仲卸店は彼の紹介で以前1年間ほど私のクライ
アントだった。その数年前に社長が三代目になり、高付加価値によって選ば
れる店を目指すようになっていたが、売上は伸び悩んでいた。私が行って見
ると、素人目にも違和感があったのは、お客や商品の扱いだった。

 大将が示していたのは、お客が選んだ魚介類を詰めた発泡スチロールの大
箱を社員が脚で蹴り押す動作。お客が水槽から選んだ魚も木枠から取り上げ
たビニール詰めの貝も、店内の通路の途上に置かれた大箱に投げ入れる。2m
ぐらい離れた所からでも投げ入れて、命中を自慢するスタッフまでいる。大
箱にはお客の名前をペンで殴り書いた紙きれを貼る。貼ると言っても、糊が
ある訳でもなく、ただ適当に水槽の水で濡らして発泡スチロールに押し付け
る。その名前は苗字だけで呼び捨てられている。おまけに大箱に蓋をすると、
通路の脇の適当なスペースに足蹴にして押しやる。それがお客の前でも当り
前に実行される。

 私が社内勉強会でスタッフ達に再考を促したそれらの販売オペレーション
は、当時は一応改善されたが、その意義が得心できない古参スタッフは不満
そうだった。そして、何より三代目の若社長が自らそのオペレーションを変
えることができなかった。「まあ、本人達は『河岸なんだから威勢がよく見
えた方がいいんだから大丈夫』と言っていましたけどね」と私が言うと、大
将は「それで客は何が嬉しくなるんですか」と答えた。

 国民健康保険加入者の健康診断で眼底異常が見つかり、眼科で右目の視野
が緑内障で僅かに欠損していると分かった。そのレーザー手術で、10年以上
加入しっぱなしだった保険金の申請を初めてした。保険会社のコールセンタ
ーはなかなかつながらず、記入すべき書類は分かりにくく、書類を郵送して
も保険金はなかなか振り込まれなかった。

「シンガポールでは高級自動車の自販機があるらしいです。高いものの価値
の演出は人によるものでなくても良いらしいので、おたくも無人化したらど
うですか。何百万も払わせる商売をしているお客に、人間が満足に対応でき
ないんだったら、その方がマシでしょ」。
 保険会社のコールセンターの担当者に振込の催促をしたついでに告げてみ
た。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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『萬屋日和』 「会社の萬屋 企画改善請負本舗」からのPR

「会社の萬屋 企画改善請負本舗」の奥田美幸です。
転職を検討している方が、自身のウリが何かわからず、
いざ職務経歴書を書こうとしても
インターネットの検索結果で出てくるサンプルを適当に真似るだけで、
なかなか良い結果が出ないということをよく聞きます。

小さな会社で自社の商品・サービスを売る際に
自社のターゲットを考えることが大前提であると
師匠の市川もよく言います。
職務経歴書においても、自分を商品と見立て
ターゲットにあわせて作成することが重要です。

採用担当者の実務経験も活かしつつ
職務経歴書の作成代行も行なっています。
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『萬屋のもっと深く愛してい』第39回_近距離無線通信規格(赤外線通信)

「近距離無線通信規格」をテーマに取り上げて4回目となる今回は「赤外線
通信」について紹介していきます。

赤外線通信とは、電磁波の一種である赤外線を利用して実現される無線デー
タ通信のことです。近距離でしか通信を行なえませんが、消費電力が少なく
て済み、端末を小型化できる利点があります。ただし、赤外線通信は、同時
に複数の機器との間での通信はできず、また双方向の通信ができません。ま
た、途中に障害物があると途切れてしまうという点も注意が必要です。

赤外線通信は、以前ご紹介した無線LAN・Wi-FiやBluetoothと違い、通信対
象の機器同士を事前に接続する必要がなく、送信側、受信側の機器を近づけ
て、双方の赤外線ポートがまっすぐに向き合うようにすれば、すぐにデータ
通信ができるという簡便さが特長です。第三者に傍受されにくいというセ
キュリティ上の大きな長所もあります。

赤外線によるデータ通信にはIrDA DATAという共通の規格があります。IrDA
(Infrared Data Association)とは、1993年に設立された、赤外線を利用
した近距離データ通信の技術標準を策定する業界団体です。この団体が定め
た赤外線によるデータ通信規格のことをIrDA DATAといいますが、これを略
してIrDAと呼ぶこともあります。

IrDA規格が策定された当初は一部のノートパソコンに搭載されていただけで
したが、大手キャリアの携帯電話に採用され、赤外線通信を活用した多様な
サービスが展開されて以来、一気に広まりました。当時は目の前の人と携帯
電話同士で電話番号を交換するなどに使われるほか、パソコンなどに電話帳、
メール、写真などのデータを保管するための外部通信機能としても利用され
ていました。

ただ、2000年代以降は、スマートフォンの普及とともにBluetoothによるデ
ータ通信に移行していき、現在ではiPhoneを始め、ほとんどのスマートフォ
ンでは赤外線通信が利用できません。

スマートフォンでの利用はほとんどありませんが、テレビやAV機器、エアコ
ンなどの屋内で使われる家電製品のワイヤレスリモコンは赤外線を利用して
いるものがほとんどです。

このテーマについてさらに詳しいご説明が可能です。
ご希望の方は萬屋までご一報ください。
contact@kaisha-yorozuya.support

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『参謀の思考法 …』 荒川詔四 著
■『こんなにおもしろい調査業の仕事』
  金澤秀則 著 / 児玉総合情報事務所 監修
■『無理ゲー社会』 橘玲 著
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報告:『MSIグループの仕入完了報告(抜粋)』で紹介されている書籍三冊
が2022年7月10日発行の第539号と2022年8月10日発行の第541号の間で重複し
ていたことが判明しました。原稿整形作業上のミスによって発生したことで、
再発せぬよう留意いたします。このたびの三冊に関しましては、再掲の価値
があるほど刺激的内容の書籍群とご解釈賜れましたら幸いです。
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
 bizcom@msi-group.org
このメールマガジンは、
インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発行しています。
(http://www.mag2.com/ ) 

毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まず足掛け23年。

マガジンID:0000019921 (ナント、たった5ケタ)
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次号予告:
 第543話 『浅い夢』 (9月10日発行) 
 小説家養成のコースがある専門学校で伺った話から、仕事を通した今どき
の自己実現について考えてみました。

(完)