540 暗夜行路

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経営コラム SOLID AS FAITH 第540号
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 ご愛読ありがとうございます。第540話をお届けします。

 前回の号を発行する直前に元首相が遊説真最中に暗殺されました。ご存じ
の通り当メルマガは時節ネタを扱わず、発行日から最大1週間程度前にタイ
マー設定して発行しておりますので、本文は勿論、前書きにさえその事件が
言及されていませんでした。

 このたびの事件についてネットでは「無敵の人」の犯罪が再び発生したと
言う意見が散見されます。犯人がそのような人物であるのかどうかをよく理
解していませんが、「無敵の人」が以前よりも多く社会に生み出されるよう
になったのは間違いないようには思えます。以前、第317話『死すべき技術』
の中で、増田悦佐の文章を抜粋して以下のように書きました。

「警察の犯罪予防は太古の昔から変化していない。大抵の凶悪で悲惨な犯罪
は警察のノーマークの人間が起こす。本当に豊かで平和な社会になる以外に、
「全くの処置無し」の状況は収まらない。」

 増田悦佐は、このように社会がよくなって行けば不要になる技術のことを
「警察型の技術」と呼び、社会の発展と共にさらに進化していかねばならな
い防火技術・消化技術のような技術を「消防型の技術」と呼んでいます。実
は『死すべき技術』を含む2013年のシリーズ『応急処置』は、経営(、厳密
には組織統制ですが、)の技術も警察型の技術で、組織構成員が凡事をきち
んと徹底できる人間になれば、組織構成員が自律的に組織の目標を達成しよ
うと行動するので、不要になってしまうであろうという考え方に基づいて書
かれています。つまり、組織の経営はいつか不要になる技術であり、また不
要になるべき技術であるということです。

 海外の多くの国々に比べて、総じて読解力が高い国民が多い上に、メンバ
ーシップ型雇用の比率が高いせいで、自律的に仕事をこなせる人間が多い日
本では、大分組織経営の技術の必要性が低く抑えられているように思ってい
ます。しかし、今回の大事件で思い至らせられるのは、いつかなくなる日が
来るのが理想である警察型の防犯技術同様に、経営技術もなかなか全くの不
要とはならないものであることです。まだまだ「想定外の経営危機」に日常
的に対処していかねばならないのが中小零細企業であるようです。
 
 今回の『暗夜行路』は、巨大スマホ業界の圧力があるのか、あまり勢いは
ないものの、最近じわじわと語られるようになったスマホの脳への悪影響に
ついて考えてみたものです。特に所謂「デジタル・ネイティブ」世代の就職
事情について中小零細企業の立場から考えてみました。自社の若手採用の手
法の検証などにも是非今号の内容をご活用ください。ご意見・ご感想をお待
ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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■第317話『死すべき技術』 シリーズ『応急処置』
 http://tales.msi-group.org/?p=593
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その540:暗夜行路

 周囲に眼瞼下垂の手術を受ける同年代の人々が散見される。ハードコンタ
クトレンズの酸素透過性が向上するのと前後してソフトコンタクトレンズも
開発されて、コンタクトレンズが世の中に急激に普及したのは1960年代後半
と言われる。それから半世紀以上過ぎて、コンタクトレンズ、特にハードコ
ンタクトレンズを長期間使用していた人々の上瞼の筋肉が疲労し、瞼が視界
を圧迫するほどに垂れるようになった。
 
 スマホはその爆発的普及から半世紀を待たずに、無闇に使うと瞼ではなく
脳が疲労してバカになると言われ始めた。人間は情報を脳の前頭前野で処理
している。その処理パターンには本来、「浅く考える」、「深く考える」、
「ぼんやり考える」があるが、「浅く考える」を次々とスマホからの刺激に
釣られて行なってばかりで脳は疲労困憊し、深くもぼんやりとも考えなく
なってしまうらしい。
 
 特にデフォルト・モード・ネットワークの機能として知られる「ぼんやり
と考える」は、情報の整理や定着などを通して人間形成にも重大な役割を果
たすと言われる。それがないと、自分を客観視できなくなり、手近な快楽に
耽りがちになるとネット上の記事にある。
 
「うん。端的に言うと、バカでもわかる表現だけにするってことになるね。
中小零細企業には、働く人にとって独自の魅力が多いけど、少なくとも文字
でウェブ上に載せるのは諦めるべきってことになるね。じゃあ、動画なら分
かるのかっていうと、それも尺の問題でないよりはマシぐらいの位置づけだ
し。脳天気なテイストで少なくとも母集団形成だけはしないと、選考したく
ても、対象がいないって話になっちゃうね」。

 或る新卒採用プロジェクトの場で私はウェブページ作成担当者に告げた。
大手企業に魅力を感じない学生も増えたが、それは必ずしも中小零細企業へ
の関心の高まりを意味しない。元々優秀な人材が寄り付きにくい中小零細企
業。少しでも良い人材を取るためには、大手に比べ標準化されていず分かり
にくい魅力を大量の情報で学生に伝える必要がある。

 学生がスマホを見ながら就活をするようになって、状況は暗転した。自分
を客観視できず、難しいことや辛いことを厭う学生が、雇用条件などの分か
りやすい情報だけで中小零細企業を値踏みするようになった。最早合説も面
倒で足を運ばない。私が「スマホ就活バカ現象」と状況を呼称すると、プロ
ジェクト・メンバーは「それは酷い」と私を詰る。

 私は情報を浅くしか読み取れない低学力をバカと呼んでいない。巷間言わ
れるスマホの弊害が自分人生の重要な判断を蝕んでいると思い至れない暗愚
をバカと呼んでいる。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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『萬屋日和』 「会社の萬屋 企画改善請負本舗」からのPR

「会社の萬屋 企画改善請負本舗」の奥田美幸です。
日常業務に追われ、トラブルが発生してから
自社の就業規則や労務管理のルールが適切ではないと気づく…。
そのような会社は残念ながら少なくありません。

「働き方改革」による働き方の多様化に伴い改正された法律も含め、
中小企業が知っておくべき労務管理のルールについて
ある清掃業界団体の会報誌にて執筆する機会を得ました。

ヨロズヤの「コラム」のページに掲載いたしますので、
以下URLよりご覧いただけます。ぜひご笑覧ください。
https://kaisha-yorozuya.support/column/

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『萬屋のもっと深く愛してい』
 第37回_近距離無線通信規格(無線LAN・Wi-Fi)

前回から私たちの生活に大きな変化をもたらした「近距離無線通信規格」を
テーマにしています。「近距離無線通信規格」は明確に定義されていません
が、ここでは通信距離100メートル以内のものを取り上げていきます。今回
は、「無線LAN・Wi-Fi」について紹介します。

会社内や敷地内などの限られた範囲で通信回線を通じてデータのやり取りを
するネットワークをLAN(Local Area Network)と言います。かつては、有
線LANが一般的でしたが、1990年代前半に無線LANが登場して以来、今では無
線LANの方が普及しています。

無線LANが登場した当時、機器の相性によって上手く通信できないトラブル
が多発していました。そこで、各国のメーカーが無線LANを普及するために
1999年に業界団体WECA(2002年に“Wi-Fi Alliance”に改名)を発足し、無
線LANに接続する国際標準規格を定めました。その国際標準規格で問題なく
無線LAN通信できる機器にのみ“Wi-Fi”のロゴの使用が許可されることにな
りました。これにより、Wi-Fi認証のついた製品同士は問題なく接続できま
す。現在では、無線通信対応の機器のほとんどがWi-Fi認証を受けているた
め、「無線LAN=Wi-Fi」と認識する方も多いです。

Wi-Fiは障害物がない屋内であれば、50メートルから最大100メートルまで通
信が可能です。最近では、駅や空港、カフェなど公衆無線LANのアクセスポ
イントがある場所なら外出先でも簡単にインターネットに接続できるように
なりました。さらに、通信事業者が提供している「モバイルルーター」を使
えば、どこでも接続が可能となります。

場所に制限なくインターネットに接続できるのは便利ですが、特に公衆無線
LANを利用する際は注意が必要です。公衆無線LANは誰でも利用することがで
きるため、通信内容がのぞき見される可能性があります。そのため、公衆無
線LANに接続している際は、クレジットカードを使用するオンラインショッ
ピングでの買い物や機密情報などの重要なデータのアップロードは避けるこ
とをお勧めします。ウイルス対策ソフトをきちんとインストールしておくこ
とも大切です。

このテーマについてさらに詳しいご説明が可能です。
ご希望の方は萬屋までご一報ください。
contact@kaisha-yorozuya.support

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『サクッとわかるビジネス教養 地政学』 奥山真司 著
■『黄禍論 百年の系譜』 廣部泉 著
■『どうしても頑張れない人たち …』 宮口幸治 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
 bizcom@msi-group.org
このメールマガジンは、
インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発行しています。
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毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まず足掛け23年。

マガジンID:0000019921 (ナント、たった5ケタ)
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次号予告:
 第541話 『三分の理』 (8月10日発行) 
 日本企業の生産性が低いとされる当たり前の理由が分かったので、それに
ついて考えたことをまとめてみました。

(完)