11月5日公開から2週間余りが経過。小樽築港駅に直結した商業施設の中の映画館では、1日5回の上映がされています。11月21日日曜日の14時丁度からの回。たった65分の尺ながら、既にその日の4回目の上映になっていることに驚かされます。
この映画館では6月に『地獄の花園』を観ていますが、その際に気づかなかったディスカウントを受ける立場であることに今回気づきました。「ハッピー55(G.G)」という変わった名称の制度で、「55歳以上の方は鑑賞料金1,100円!」とのことでした。今年6月にも私は同年齢でしたから、割引を受けそこなったのか、そもそもその時点でそのようなディスカウント制度がなかったのか、特に確かめもしていません。
ウェブ上には「年齢の確認ができるものをご持参ください。」とあったので、どこの段階で年齢チェックをするのだろうと思っていましたが、チケットは券売機で普通に買える以上、シアター入口でのチェックと言うことになります。入口でチケットを見せ、「年齢確認が必要ですか」と尋ねると、「いえ。結構です。大丈夫です」と若い女性スタッフに言われました。特にやたらに混んでいる訳でもなく、私の前後に人はいない状態で入口に居ましたから、ルールを厳格に守っていないのか、それとも、あからさまに55歳以上に見える老人めいた人間には、チェック作業さえ簡略化して良いということなのか、私には分かりません。
現実によく「年齢不詳ですね」と言われることは多く、初対面の人物に年を当ててもらうと、大抵7、8歳以上は若く言われますので、どう見ても55歳を遥かに上回っているように見える…と言うことはないのではないかと思っています。いずれにせよ、57歳最後の日に、「57歳最後の日ですね。明日はお誕生日おめでとうございます」と言うぐらいのホスピタリティ型接客を期待する方に無理があるのかもしれません。
ウェブによると、122席の比較的小さい方のシアターの中に居たのは大雑把に数えて20人余りの人々でした。すべて小学生ぐらいまでの子供と同伴の大人の組み合わせで、大人が単独で来ているのは私だけでした。そして大人の中でも私は二番手に高齢だと思います。小学生らしき少女がどう見ても祖母と思われる女性に連れられていたので、その祖母が見渡す限りの最高齢です。大人一人に子供が一人から二人と言う感じですが、両親セットに子供一人と言う組み合わせも一組いました。引率係の大人は父親がギリギリ過半数であるように見えます。
私がこの映画を観ることにしたのは、米国で大学生活を送る娘が「すみっコぐらし」好きで、来年DVDやネット上で解禁されたら見るつもりでいるのを知っているので、パンフでも買っておくかと思い立ち、映画を観に来ることにしたものです。パンフだけを買うこともできはしますが、今月の劇場映画鑑賞ノルマの二本目もついでに達成してしまおうという理由で鑑賞に至りました。
この作品のシリーズ第一作も、興業収益では大健闘をしていて、「すみっコぐらし」のファンが非常に多く、市場は非常に大きいことが顕在化した結果となりました。今回は前日土曜日放送の『王様のブランチ』でも一週間の興業収益ランキングで1位になっていました。シリーズ初(と言ってもあるのは前作と今作だけですが)の1位獲得だと番組では言われていました。曰く、大人も泣けると評判であるのだそうで、私がこのシアターで見渡す限り、全くいなかった女子高生や女子大生、その他20代の女性群なども興業収益に貢献しているのだろうと思います。実際、クライアント企業さんに行くと、時々「すみっコぐらし」のグッズをカバンやスマホに付けているスタッフや事務員を見かけることがありますし、「すみっコぐらし」の文具を使っているスタッフも見かけることがあります。
前作は私にとって絵本の世界の中に自分の居場所を見つける決意をしたヒヨコが妙にうら悲しく泣かせる展開となっていたのは秀逸でしたが、物語の展開を一々言葉にして説明する男性の声のナレーションが非常に鬱陶しく感じられたのが難点でした。あまりにその男性の声が印象に残っていたせいか分かりませんが、実はナレーションには女性もいて、なんとそれは本上まなみだったということを今回パンフを読んで初めて知りました。
本上まなみはグラビア・アイドル時代からかなり好きで、写真集さえ(処分していないので)今尚数冊持っています。映画ではかなり古いですが、『幸福のスイッチ』が最高で、それ以外に『夢十夜』の怪演も気に入っています。その本上まなみのナレーションが今回は救いだと思っていてパンフを読んでいたら、「前作に続いて…」と書かれていて、初めて前作にも本上まなみが参加していたことを知ったのです。
登場人物(?)達は大きく分けて二つのグループになっており、レギュラーであるすみっコ達と今回のゲスト出演者(?)である夢を叶える魔法使い5人(/5体?)です。すみっコ達の様子を描く際には男性の声、魔法使い達の話の際には概ね本上まなみと分業がされているようでしたが、私にとってのこのナレーション問題は、前作に比べてそれなりに緩和されているように感じられました。
一つの理由は、本上まなみの声の割合が増えている(ように感じられる)こと。二つ目の理由は、登場人物(?)達の一挙手一投足を細かく表現しないことにナレーションの方針が変わったように感じられること。そして、三つ目の理由として、登場人物(?)達が音声で言葉を発しないのは前作通りなのですが、本作では「ウチ来る?」などの簡単な台詞が文字で空中に描かれているので、それをナレーションで一々補う必要が激減していることがあるように思えます。
さらに、あくまでも私の印象ですが、すみっコ達や魔法使い達の表情の微細な変化による演出が前作より巧妙になっているように感じられることもあります。彼らの小さな点のような目でさえ、視線の向きは常に分かりますし、驚いて白目状態になっていたりするのは特に顕著な演出ですが、俯いた際の下方の何処かに焦点も合わず投げられている視線なども、はっきりと分かるのです。
いずれにせよ、私にとってのナレーション問題はほぼ気にならない程度に緩和・解消されていたように思います。一方で、物語の方は、クオリティが下がっているように思います。前回のヒヨコの自分自身の身の丈の幸せの発見に比べて、今回の話は何か明確な教訓もなければ悟りもありません。出会いと別れがあるのは前作通りですが、前作のように自分のアイデンティティや居場所を探し彷徨する物語ではない分、深みがないのです。
前作は間違いなく泣ける物語でしたが、今回は観客の大人がどこで「泣ける」のか私にはよく分かりませんでした。敢えて言うと、とかげの母との邂逅ぐらいかと思いますが、それもどの程度会うことが難しいのかがよく分からないため、「また会えて良かったね」と言う程度の話のように、周囲の他のすみっコ達も受け止めているように見えます。
物語は前作に比べ薄っぺらくなった印象を拭い切れませんが、すみっコ達のより洗練された表現や、その結果ナレーションへの依存度が減り、すんなり見ていられる日本独自の丸系キャラの愛くるしさが存分に発揮されているように思えたので、DVDは買いです。
追記:
娘にパンフを買って帰ろうと思い、コンセッションに行ってみたら、パンフには通常版と特別版がありました。娘が好きなプリキュアの新作映画も上映されていてパンフが販売されていましたので、「すみっコぐらし」の特別版とプリキュア(『映画トロピカル~ジュ!プリキュア 雪のプリンセスと奇跡の指輪!』)のものを各一冊買いました。
追記2:
この作品の上映前に流れたトレーラーの中に『映画ざんねんないきもの事典』がありました。これも以前この本、ないしは類似書籍を数冊娘に買ったことがあるので、事典をどうやって映画にするのか、多少関心が湧きました。