509 人材フリーライダー

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経営コラム SOLID AS FAITH 第509号
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 ご愛読ありがとうございます。第509話をお届けします。

 第499話『地下爆発』に登場する組合せ爆発問題を解決するソフトウェア
の市場性調査のお仕事を昨年に続き再受注することができ、約1ヶ月を費や
して報告書を書き上げました。その際に小売業界の中の或るセクターについ
て調べることになりました。驚かされたのは、そのセクター全般の営業利益
率の低さです。売上の1%にも満たないほどに収益性が悪化して追い詰められ
た経営が業界全体に広がっている様子でした。BEP比率でさえギリギリ100
手前に踏みとどまっているだけで、全く余裕が残されていませんでした。
 
 そのセクターの店舗ではありませんが、現在小売業の新規店舗展開の案件
もある中で、非常に考えさせられる数字でした。過去20年程度を振り返って
見て、消費者の生活は大きく変わり、通称武漢ウイルスの影響もあって、さ
らに店舗から足が遠のく傾向が強まったと言われています。それに対して過
去20年程度で、目新しいビジネス・コンセプトが小売業の中に生まれたとは
あまり聞いたことがないように思います。つまり、消費者が大きく変化した
のに、店舗はせいぜいマイナー・チェンジをしたかどうかぐらいにしか変化
していないのです。「お客がどうしても行きたくなる店」とは何であるのか。
そして、自店はそのような店か否かを真剣に問わなければならない時代にな
りました。
 
 今回の『人材フリーライダー』は、所謂“社会的弱者”と中小零細企業の
社会貢献について少々考えてみた内容です。“社会的弱者”の具体的な定義
や本質については小浜逸郎の名著『「弱者」とはだれか』に譲りますが、端
的に言って、社会に馴染み難い人々は間違いなく存在します。そして、その
ような人々を社会の一部として包摂し、自立を助ける働きの多くは、中小零
細企業が担わざるを得ないものと弊社代表の市川は考えています。

 ワーク・ライフ・バランスやダイバーシティを謳う一方で、新しい働き方
はどんどん生産性改善を進め、競争力を高めることを目指して、中小零細企
業の組織さえも変質させて行っています。その情勢の中で、本質的な意味で
の“社会的弱者”の生きる場所は増えているのか減っているのかを、今号を
お読みいただいて、ご一緒にお考えいただければと思います。ご意見・ご感
想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営
業日!!

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■第499話『地下爆発』 http://tales.msi-group.org/?p=2007
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その509:人材フリーライダー

「図書館でもLGBTQへの対応は模索が続いています。そういった分野の書籍
を新たに入れても、『その本を見つめている自分を他人に見られたくない』
という声を戴くこともあるので、トイレの個室に案内チラシを置いておいた
りしている館もあるようです。以前は“利用者対応”の問題と言えば、精神
や身体にハンディキャップがある方々に対することと思われていましたが、
今は対応する問題がよりセンシティブで複雑になっています。」
 夕暮れの新宿二丁目の街路。厚いドアを開け放ち中の様子を開放する店舗
がぽつぽつと増え始める時分だった。先日お会いした長年図書館司書を務め
た方のお話をふと思い出す。
 
 図書館に迫る多様性の問題はもっと根深いと話は広がった。外国人労働者
は多数存在し、社会に日本語が不確かな人々が相応に存在するようになった。
それ以前に、話題の読解力は単に文字を読み取る話ではなく、認知と思考の
総合的な能力で、重要な国力の一つだとも言われ始めている。読解力は今急
激に下がった訳ではない。職業や学歴や読書量によらず、低い人は低く、昔
も今も変わらず存在する。しかし、社会が高度化して、読解力が低いほど生
きづらい世の中が現出して、読解力対策は社会全体の課題になりつつある。
既に学校を卒業してしまった社会人への読解力対策は、図書館がその最前線
になる可能性がそれなりにある。多様な人々が社会を形成していることを意
識せざるを得ない。

「グローバルな競争の中で、日本は勝っていかないといけないわけです。昔
は『勝つか負けるか』だったんですが、今は『勝つか死ぬか』なんですよ。
かつては日本人だけで護送船団方式で、勝ち負けはあってもみんな残れたわ
けでしょう。今は残れないんです。負けたら死ぬしかない。そうなると使え
るリソースはすべて使わないと」。
 白河桃子の『御社の働き方改革、ここが間違ってます!…』に登場する働
き方改革と女性活用で話題となった企業経営者の弁。使わないといけないリ
ソースの代表格が女性だったという話が続き、素晴らしい取り組みと事例記
事がまるまる褒めちぎる。

「集団内では、社会の成員みんなが少しずつコスト(犠牲)を払います。そ
してコストを払ったおかげで集まったリソースを使って何かをなし、得たリ
ターンをみんなで享受する。結果として、構成員全員が得をする。これが集
団の協力行動です」。

 中野信子の『サイコパス』で描かれる集団原理。この後、社会のコストを
払わずに利益だけを享受するタイプとしてサイコパスを描き、集団からバッ
シングや制裁を受けるフリーライダーであると説明は続く。トイレの個室で
資料を見なくてはいけない繊細な人々。「勝つか死ぬかだ」とそれらの人々
にも迫って、その包摂のコストを厭う会社。社会の一部の「負けない人々」
だけを選ぶ組織が、他社のお手本と称賛されているように見える。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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『萬屋日和』 「会社の萬屋 企画改善請負本舗」からのPR

「会社の萬屋 企画改善請負本舗」の奥田美幸です。
クライアント様から、小さな会社のアウトソースのあり方についての
レポートを書く機会をいただきました。

レポート作成のために研究するなかで、
イノベーションとアウトソースの関係性も理解しました。
まとめたレポートは以下からご覧いただけます。
ぜひ読んでみてくださいね。

●『小さな会社のイノベーション戦略』
https://kaisha-yorozuya.support/stockpile/

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『萬屋のもっと深く愛してい』第6回「AI」

各工程にかかった時間を日報にまとめてはいるものの、データを溜めている
だけで特に活用していない。取引先からの発注記録はつけているものの、毎
回突発的に来る発注に慌てて対応しているなど、せっかく溜めているデータ
を活用しきれていない企業も多いかと思います。今までの溜めてきたデータ
を元に、「工数予測」や「需要予測」を実現し、年単位の売上予測を立てる
ことができます。

AIとは「Artificial Intelligence」の略で、日本語で「人工知能」と訳さ
れることが多く、いずれの言葉も、当たり前のように使われるようになって
きました。その定義はさまざまあるようですが、一般的には「コンピュータ
上に、学習・推論・判断といった人間しかできなかった知的な行為を再現す
る技術」と表現されるようです。

AIが得意とするのは、大量のデータからパターンや判定基準を弾き出し、新
しいデータを分類することです。最近タクシーにあるモニタのCMに流れてい
る、社員の業務パフォーマンスを評価し「人事評価」や「人員配置」を行な
うサービスの仕組みに使われているのが、まさにAIです。

ある製造業の会社では、過去の業務実績のデータをAIの仕組みにインプット
し、機械ごとの作業工数時間を予測することで、今まで発生していた予測時
間の誤差を改善し、作業工数予測の効率化を実現しました。1作業あたり10
分程度の誤差も、作業件数が1000件近くあったため、導入後180時間の誤差
をなくし、予測精度の向上にも貢献しました。

導入のためには、精度を向上させたいデータを大量に溜めておく必要があり
ます。まずは、効率化を図りたい作業とそれに必要なデータを事前に確認し
ておくことで、実現に近づけます。既にデータを溜めているのであれば問題
ないですが、データがないようであれば、溜めておく必要があるため、導入
までに時間がかかる可能性もあるため注意が必要です。

このテーマについてさらに詳しいご説明が可能です。
ご希望の方は萬屋までご一報ください。
contact@kaisha-yorozuya.support

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『本屋を守れ 読書とは国力』 藤原正彦 著
■『呼吸入門』 斎藤孝 著
■『東京圏これから伸びる街 …』 増田悦佐 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第510話 『不良視界』 (4月25日発行) 
 上達のために達人がしているという「意図的な練習」について考えてみま
した。お付き合いください。

(完)