499 地下爆発

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経営コラム SOLID AS FAITH 第499号
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 ご愛読ありがとうございます。第499話をお届けします。

 テレビのニュース番組を弊社代表の市川が見るともなしに見ていたら、国
会で野党の代表が首相に「経済政策の中で、零細企業は潰れてしまえば良い
と言っている」と追及している場面が報じられていました。首相は「合わさ
ってより効率的な会社に…」とか「地方経済における中小企業の重要性は十
分に理解している」などと応じていましたが、「つぶれてしまえば良い」こ
とを否定はしていませんでした。本当にそう考えているからでしょう。

 今号の当コラムの『仕入完了報告』にある『国運の分岐点 …』を読むと
明確にそう書かれています。著者はアナリストを自称する人物ですが、内閣
に経済政策を助言する立場にいます。曰く、「全世界的に見て日本は生産性
が低く、賃金も上がらない。人口も減少傾向で未来がない(=まさに、国運
の分岐点)。よって、生産効率を上げる上で足枷となっている低生産性の零
細企業を潰してしまうべきだ」です。
 
 潰し方は簡単で、最低賃金をじわじわと上げていき、ついて来られない中
小零細企業を見捨てるというだけの非常にお手軽な方策が提言されています。
中小零細企業が潰れても失業者は増えないとのことです。なぜなら、それよ
り規模が大きく効率が良い中堅企業群は常に人手不足で、零細企業から溢れ
出た人々はすぐに中堅企業群以上の規模の会社に職場を見出すから…なのだ
そうです。
 
 全くの妄言に思えます。高い生産性を求める会社はその働き手にも、頭を
やたらに使い、緊張を維持し続けなくてはならない働き方を要求します。賃
金という価格を上げても商品である労働力の質が勝手に上がることはありま
せん。当然、零細企業の職場を失った人々の中堅企業群への転職はかなり困
難になることでしょう。『国運の分岐点 …』によれば、大手企業の研修制
度は完備されているので、優れた人材が育つ…ということなので大丈夫であ
るようです。
 
 現実的ではありません。大手企業にはもともと優秀な人材が集まっている
ので、紋切り型の階層別研修でも人材は育ち、一部に島耕作のような人間を
生み出します。しかし、大手企業でも幾ら研修をしてもついていけない人物
は山ほど生まれます。まして中堅企業ならそれ以上に研修の余裕などないで
しょう。働き方改革で労働時間が削られる中で研修の余裕は大手でさえ減っ
ているからです。
 
 現実に欧米では失業者や十分に稼げない人々が山のようにいます。それら
の人々を切り捨てて、生産性を追求した企業群ばかり少数残る世界が本当に
理想であるのか問われるべきです。『AI vs.教科書が読めない子どもたち』
の現実を知ってから『国運の分岐点 …』を読むと、その現実から遊離した
論理があからさまです。是非お試しください。
 
 弊社でも中小零細企業群が生産性を高めるべきであると勿論考えています。
しかし、実質的な選民思想を推し進めてまで行なうべきことではないとも考
えています。今回の号は『地下爆発』と題して先端技術が日常生活の裏面に
浸透して行っている様子を描いてみました。そのような現実についていけな
い人々はたくさんいますが、零細企業や低生産性企業が消えてしまえば、そ
れらの人々は労働がかなり困難になるでしょう。ご意見・ご感想をお待ちし
ております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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その499:地下爆発

「市川さん。組合せ爆発の技術の市場調査って関心がありますか」。
 ある訳がない。私はどんな仕事にも関心が湧かない。多分ゴルゴ13も殺人
自体に関心がないだろう。私も請けられる仕事は何でも請け、請けた仕事は
何であれ最善を尽くす。

 或る大学で開発された組合せ爆発の解決の技術。その画期性を理解するた
めに、教授のレクチャーを聞き、本を読んで、納期までの限られた時間の3
分の1を費やした。アナログ・コンピュータである量子アニーリングマシン
の原理など、私の新たな発見の多くは、全く調査作業に関係がなかった。ソ
ルバーと呼ばれる組合せ爆発解決のための各種システムの得手不得手を理解
し、どんな業種のどんな問題に適用するべきかを検討した。

 組合せ爆発の問題は多種多様で幾つかの類型にまとめられている。そのど
れもがどんな業種業態の会社にも多く存在しそうな問題。そこで対象となる
業種業態と課題の組み合わせを超大雑把にスコアリングする仕組みを想定し
て漸く対象分野を絞り込めた。

 AIなどの最新技術の展示会は通称「武漢ウイルス」騒ぎまでは大盛況で来
場者も増えていると報じられていた。機械学習を前提とした各種のシステム
は市場に出始め、その性能や課題について関係者がよく話している。各種の
予測技術などもあちこちで使われていることに日常生活で気づかされる。け
れども、残り時間が大分少なくなって本気の対策が必要になりつつあるはず
のシンギュラリティの言葉さえ、ほとんど目にしなくなってきた。

 黒人の人権を巡る騒ぎの最中に、先進企業が顔認証システムの開発や警察
への提供を見合わせたとニュースが報じている。デトロイトの黒人の顔認証
結果による誤認逮捕がきっかけらしい。顔認証システムも米国では白人が多
く関与して作られているのだろう。黒人の顔を区別できない。その構造は多
分すべての有色人種に対して同じだろう。

 卑金属から金を取り出せると皆が信じていた無邪気な時代を経て、高校の
物理や化学や生物で原理を習い誰もが知る科学は、誰もが分かる害悪も福利
ももたらした。ところが、量子だの遺伝子だのがさらに細かく解かれる頃か
ら、科学は多くの人々を置いてけ堀にして魔術的になっていった。どこかの
誰かが作った上手い仕組みが生活の中に溢れ返っていても、それがどういう
原理で動くものなのか、殆どの人は最早気にしない。

 どんな業界にも世間には知られることのない裏話やインサイダー情報が存
在する。先進テクノロジーは知らぬ間に中小零細の組織まで絡めとって、そ
こに存在する。お金を戴いてソルバーの勉強をさせてもらったが故に、今の
所その存在が僅かに見え続けている。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

先月10月末日。
『経営コラム SOLID AS FAITH 21周年記念特別号』の
前篇が無事発行されました。
題して『自然派宣言』。如何でしたでしょうか。

「序文の“トラクターに乗った消防団員”の姿を
 想像するだけでゲンナリ来る…」など、
その一見「非常識」な内容にぽつぽつと感想をいただきます。

今月末日発行の後篇はさらに世間の常識に挑戦します。
テーマは『企業組織と女性のキャリア観』。
前篇で第一章から第四章をお届けしましたが、
後篇は以下のタイトルの三章をお届けします。

後篇 『企業組織と女性のキャリア観』
 第五章:寄ってはいけない大樹の陰
 第六章:女性の非活用(1) 女性の社会進出編
 第七章:女性の非活用(2) 女性のキャリア形成編
後篇 あとがき

そして、11月25日には、
なんと当コラムが500話に到達します。
『経営コラム SOLID AS FAITH 500話発行記念特別号』は
『回路明察』と題した4話シリーズで、
ビジネスにおける“人間の無意識”の活用に迫ってみます。

第500話から第503話まで続く
『経営コラム SOLID AS FAITH 500話発行記念特別号』。
その各々の号には特別原稿として、
「会社の萬屋 企画改善請負本舗」の奥田美幸による
『日日是考日~師匠が教えてくれた 4 つのこと~』の
全四話の各一話が漏れなくついてきます。

ご期待ください。

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『萬屋日和』 「会社の萬屋 企画改善請負本舗」からのPR

「会社の萬屋 企画改善請負本舗」の奥田美幸です。
清掃会社の全国団体様が毎月発行している会報誌に
小さな会社の採用の秘訣をまとめた記事を
全12回にわたり書かせていただいています。

最初の4回が第1シリーズ『計画立案編』で、無事終了しました。
そして第2シリーズ『募集~応募受付編』がいよいよ始まります!
以下のURLで第1シリーズ全話が読めます。是非ご笑覧ください。

https://kaisha-yorozuya.support/column/

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『事実と本能 …』 橘玲 著
■『「空気」で人を動かす』 横山信弘 著
■『国運の分岐点 …』 デービッド・アトキンソン 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
 bizcom@msi-group.org
このメールマガジンは、
インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発行しています。
(http://www.mag2.com/ ) 

毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まず足掛け22年。

マガジンID:0000019921 (ナント、たった5ケタ)
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 ソリアズのバックナンバーも各号の全文が読める弊社ブログ。
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次号予告:
 第500話 『続・無知の商品化』 シリーズ『回路明察』(11月25日発行) 
 とうとう到達した500話からは、4回シリーズで流行が少々褪色しかかっ
ているインサイトについて考えてみます。第1話から常識を揺さぶる内容で
す。ご期待ください。

(完)