506 妖精国家

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経営コラム SOLID AS FAITH 第506号
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 ご愛読ありがとうございます。第506話をお届けします。

 海外では多くの国々で猛威を振るった通称「武漢ウイルス」へのワクチン
接種がとうとう日本でも開始されました。これでこのウイルスに関する空騒
ぎも終わると喜ぶ声をよく耳にします。実際には日本における集団免疫はか
なり進んでいて、一定の条件を満たさないかぎりなかなか発症に至らず、発
症に至っても重篤化しないというのが現実だと思われます。この山場をワク
チンの普及で乗り越えたことにしても、新型ウイルスは過去の経緯を見る限
り数年に一度は訪れることでしょう。今回の空騒ぎは2009年の新型インフル
エンザの場合と全く同じ展開との指摘もあります。今回の経験から何を学ん
でおくべきかが大切であるように思えます。

 今回の『妖精国家』は弊社代表市川の好きなアーティストの『妖精帝国』
とは何らの関係もなく、国内の労働力の量について考えてみた内容です。情
報化が進み、労働の現場では求められるスキル群の質は高くなる一方です。
今回『萬屋のもっと深く愛してい』で奥田が書いているRPAなども、導入す
ればするほどその場に残る人々のハードルを上げることでしょう。国内の失
業率は海外に比べ高くありませんが「無業者」などの潜在的労働力となる人
々は多数存在しますし、文中に登場する「雇用保蔵者」も多数存在すると言
われています。労働力不足が叫ばれていますが、人数だけで見れば、国内の
労働力は未だに潤沢とも考えられるのです。

 EUの多くの国々が労働力不足解消を口実に移民の大量受け入れを始めても、
結果的に相応の職業スキルも乏しく、言語さえ儘ならない多くの人々は、労
働力不足解消にはほとんど貢献しなかったと『西洋の自死』には書かれてい
ます。それほど顕著な状況ではありませんが、日本の「無業者」と「雇用保
蔵者」にも一部同じような構造があると考えることもできなくありません。
人数が足りているのならその労働力の質を上げることが本来必要とされるは
ずです。その取り組みの困難さについて、ひと時、ご一緒にお考え下さい。
ご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目
標納期は5営業日!!

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その506:妖精国家

「そうねぇ。まあ、技術職のキャリアの在り方とかそういうものに幻滅した
というのが、最大の理由かなぁ。北海道の田舎の電話局で電話をつなぐ自動
交換の機械が轟音を立てて動いていて、その回路を分析したり、部品交換し
たりするのは、職人技でまあまあ面白いと感じられたんだけど。そんな機械
の保守作業要員は、機械がガチャガチャ言っている時代には、電話番号10000
当たり5人はいたはずなんだけど、全然故障しなくて小型化された電子交換
機やデジタル交換機の時代になると、1人さえ要らないぐらいになっちゃっ
て。余った技術者はやることがないから、35歳以上はテレホンカード販売係、
若ければ交換機専用のプログラミング言語でソフト開発…、って組合の偉い
さんに説明されてさ。」

 二年間の幹部候補生養成研修まで受けたNTTを辞めた理由を弟子に尋ねら
れて、私は当時を振り返った。無用になった技術で食べていた社員達は、ど
んどん不慣れな仕事に配置換えさせられていった。配置換えをされる側より
も配置換えをする側に回らなければ、ずっと振り回され続ける。22歳でそう
思い立ち、その後二年間かけて退職の準備を進めた。

 先月また新しいスキル・マップ策定プロジェクトの案件を戴いた。現場に
溢れる「ムリ」・「ムダ」・「ムラ」を好い加減に一掃したいとは依頼者の
社長の弁。職場のテクニカル・スキルだけでも、スキル・マップに従ってき
ちんと教えれば、ムリな作業はしなくなり、ムダな時間も過ごさなくなり、
多能化して労働時間と作業内容のムラも減っていく。

「たとえば、何かの最新式の機械を入れたら、人力の作業がなくなってしま
った…なんてことはこれからどんな職場にでも起きる可能性があります。そ
んな時に、スキル・マップで色々な部署の仕事をできるようになっていたら、
大手企業とかでよくあるリストラのようなことを避けることができます。ス
キル・マップは皆さんの仕事を守るのも目的です。」
 プロジェクトの初回に私が説明すると、参加者はなるほどと素直に頷いて
いた。

「雇用保蔵者」とは、本来の能力を活用せずに雇用され続けている人々のこ
と。多分、米国留学時代に経済学で習ったunderemployment の状態の人々の
ことだろう。それが今400万人存在し微増し続けているという。「大企業の
一般事務職に集中的に存在している」と言うコンサルタントもいるらしいが、
中小零細企業にも干されている人々は結構見つかる。

 職場に出て来ても、殆ど働かない中高年サラリーマンを「妖精さん」と呼
ぶらしい。シャーロック・ホームズの生みの親のアーサー・コナン・ドイル
は晩年心霊主義に傾倒して、『妖精の到来』という本で妖精の存在を主張し
た。多くの企業に現在も存在するらしい妖精達は、研修で人に変態するのか、
効率化で楽園を追放されるのか、只々訝しい。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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『萬屋日和』 「会社の萬屋 企画改善請負本舗」からのPR

「会社の萬屋 企画改善請負本舗」の奥田美幸です。
全国の清掃会社の経営者の方が集まる「日本を磨く会」様が
毎月発行している会報誌に小さな会社の採用の秘訣をまとめた記事を
全12回にわたり書かせていただいています。

第2シリーズ『募集~応募受付』編が無事終了し、
まもなく、最終シリーズの『面接』編が始まります!
以下のURLで第1・2シリーズ全話をお読みいただけます。
是非ご高覧ください。

https://kaisha-yorozuya.support/column/

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『萬屋のもっと深く愛してい』第3回「RPA」

社内で、同じ情報を何度も入力する作業や特定の人しかできない作業に心当
たりはありませんか。手作業で同じ作業を繰り返し行なうことは、業務効率
を下げ、ミスの発生にもつながりかねません。特定の人しかできない作業も
その人の欠勤により業務が滞ってしまうなどの問題が発生してしまいます。
人手不足の課題がある中小企業でこそ、RPAを活用することでこれらの課題
解決が期待できます。

RPAとは、Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オート
メーション)の略で、ロボットによって業務を自動化できる仕組みのことで
す。「ロボット」と言っても、「RPA」は機械の組み立てなどを行なう産業
用ロボットのように人間の体の動きを代行するのではなく、PCのキーボード
やマウスによるシステムの操作や処理を代行し自動化する仕組みです。

2019年に横浜市が月次報告書の作成やデータ収集・入力などの定型の事務作
業にRPAを活用し、85%程度の作業時間の削減を実現したことが話題になりま
した。他にも、ある製造業の会社では、基幹システムから実績データを抽出
したものをまとめる報告書作成業務を、RPAの導入により60%もの作業時間
短縮、ミスの削減にも繋がったという事例もあります。

導入には、RPAの適用範囲を見極めるために、業務の全体像の把握が欠かせ
ません。ただ、中小企業では、個々のお客さんの要望に合わせた対応をして
いることが多く、業務の流れを標準化することが困難な場合がよくあります。

そのため、中小企業でRPA導入を行なうためには、一律の流れにまとめられ
る作業を見極め、できるところからRPA化を進めていく必要があります。
RPAを上手く使いこなせば、御社の事務作業時間50%削減も夢ではありませ
ん。

このテーマについてさらに詳しいご説明が可能です。
ご希望の方は萬屋までご一報ください。
contact@kaisha-yorozuya.support

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『答えのない世界に立ち向かう哲学講座…』 岡本裕一朗 著
■『実存主義とは何か』 J-P・サルトル 著
■『「反権力」は正義ですか ラジオニュースの現場から』 飯田浩司 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
 bizcom@msi-group.org
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インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発行しています。
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次号予告:
 第507話 『側面図の世界』 (3月10日発行) 
 他の先進国では類を見ない日本の新卒一括採用制度。その英語での説明を
考える中で感じた国際比較の難しさについて書いてみました。

(完)