153 ハンカチの頂点

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経営コラム SOLID AS FAITH 第153号
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ご愛読ありがとうございます。第153話をお届けします。

本日は、恒例のヨサコイ・ソーラン祭りの当日です。札幌で知人を増やすた
めの弊社最大のマーケティング活動として、今年も私は、『さぁさ、みんなで
どっこいしょ』と言うチームに参加しており、(この原稿をまぐまぐにセット
しているのは、前の週末ですが)札幌市の大通公園などで踊りまわっているこ
とと思います。ご覧になる機会のある方は、是非、私の参加するチームにも、
ご声援のほどお願い申し上げます。

さて、今回の号は、弊社の主力サービス「社員勉強会」の効果の現れ方につ
いてまとめたものです。社内勉強会は目先の課題を解決すると同時に、参加し
ている社員の方の動機付けを行なうと言う、主にファシリテーションを主体と
した手法です。最近、この勉強会の参加者以外の社員の方にも効果が現れるケ
ースが幾つか確認されました。企業の風土改善、企業組織の活性化などと括ら
れる分野の問題ながら、特に中小零細企業に対するこの分野の方策の構築のノ
ウハウは、十分に確立されているようには見えません。勉強会という手法の奥
深さをご堪能戴ければ幸いです。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしてお
ります。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

また、PR欄には、最近、私が仕事に直接関係する分野で読んだ書籍を紹介
しております。ご笑覧下さい。
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その153:ハンカチの頂点

今年は就労観を教える大学のクラス数を増やしてみた。大学二校で一年間に
千人を越える学生に教えている。朧気に見覚えのある学生が過半数を占める程
度が精一杯。顔・名前は全く一致しないままに学期が終わる。二校の内の一方
では、廊下で頻繁に学生が挨拶してくる。「自分のクラスなのに、数が多くて
顔を覚えていなくて申し訳ないんだけど、私の講義を取っている人かな」と尋
ねてみた。そうではなかった。

この大学には幾つかの路線バスで行く。降車時に運転手に運賃を払いながら、
「ありがとうございました」と言う大学生。さらに、高校生、主婦、若いサラ
リーマンと、皆挨拶する。中学生から幼児まで挨拶する者が目立つ。他の路線
ではこうはならない。車内で学生達は、夜でも「おはよう」と言う。何かの業
界気取りか、私の教える大学生も、ほぼ例外なく、そう挨拶する。以前大学に
在籍した教員が指導した結果と噂に聞いた。

クライアント企業の事務室脇のスペースでの勉強会を終えて、帰り支度をし
ていると、パーティション蔭から、ぬっと顔を出し、本を差し出す者がいる。
「僕は今、こんな本を読み始めたんですが、これって、前々回の勉強会で説明
があった、動機付けの話そのものですよね」と言う彼は勉強会参加者ではない。
彼の席が偶然勉強会会場となっているスペースに近かっただけの人物である。

或る会社では、「勉強会をやり始めてから、参加者でもない幹部の会議での
言葉遣いが目に見えて変わってきたのさ。本人も意識していないようだけど、
多分、勉強会の議事録を丹念に読んでることが原因みたいなんだな」と社長が
言う。人材育成の書籍を捲っても、対象者の能力向上は論じられても、その周
囲に滲み出る効果についての議論は見つからない。マーケティングで言う口コ
ミほどに意識的なメカニズムにも思えない。こんな場面は頻出するのにうまく
表現する言葉すら見つからない。

組織風土の変化を論じるチェンジ・マネジメントは、組織をマクロに見て、
「このように変化することが多い」と言うだけである。組織のどこにどう働き
かけると、誰がどのように変化・成長するのか。構成員の顔が見える零細企業
がお客の私も、まだまだ、読み切れないでいる。

ハンカチを広げ、その一点を摘んで持ち上げる。すると摘んでいる所以外の
周辺の部分も緩やかに引き上げられる。こんなイメージで、私は勝手に研修効
果の参加者以外への波及を『ハンカチ効果』と呼ぶことにしてみたら、すぐに
再考を迫られた。研修の参加者よりも効果が激しく出る者まで現れたと、また
別の社長が言う。摘んだ所とは別の場所が大きく持ちあがるハンカチなぞ、手
品でもそうそうお目に掛からない。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。
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最近、読んだ書籍のご紹介。どれもかなり役に立ちました。

◎大学の就労観教育の資料として読んだ書籍。

『就職がこわい』 講談社  香山リカ 著
非常に面白い本です。自分探し、適職探しの馬鹿らしさがよく分かります。

『ニート世代の人事マネジメント』 中央経済社  寺崎文勝 著
単なる人事の本ではなく、若者対象の人事管理の本です。普通の人事本とど
こが違うかを探しながら読むとためになります。

『「ニート」って言うな!』 光文社新書
本田由紀/内藤朝雄/後藤和智 共著
一般に広がりつくした観のある「ニート論」の事実性を執拗なまでに検証し
た本です。「社会の憎悪のメカニズム」などの内容は、色々と応用の利く考え
方と思われました。無論、本文主旨のニート論への懐疑も頷けます。

◎工場移転のプロジェクト準備関連で読んだ書籍。

『強い工場』 日経ビジネス人文庫  後藤康浩 著
トヨタがたの生産方式に従っている所、そうではない所、ごっちゃまぜの、
タイトル通りの「強い工場」を黙々と列記してゆく構成が好ましいです。製造
業の面白みが非常によく分かります。

『多層階工場 レイアウト入門』 工業調査会  藤川裕晃 著
工場内の装置類の配置やエレベーターの配置まで、如何に科学的に決定する
ことができるかと言うとんでもない命題に迫った「目から鱗」の本です。行列
・数列・微分積分から、遺伝的アルゴリズム・免疫アルゴリズムまで登場しま
す。「あ?、なるほどぉ」とは言うものの、その原理に着いて行くのが精一杯
の内容です。

『絵でみる 工場と生産管理』 日本能率協会マネジメントセンター
山口文紀 著
SLP式による工場設計の基礎から、工程管理・品質管理・原価管理の基礎
まで、素人にも学べる便利本です。
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次号予告: 第154号 『雨滴の気配』 (6月25日発行)
別にシリーズ設定はしていないのですが、今回の号が勉強会の効果の現れ方
に関するものであったのに対して、次回は、勉強会の結果に対する経営者の評
価の仕方に関してまとめてみました。企画請負と言って、「どうやって請負業
務の結果を評価してもらい、どうやって報酬をもらうのか」と言う疑問を投げ
かけられることがよくあります。その問いに対する弊社の答えを示した号でも
あります。ご期待下さい。(完)