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経営コラム SOLID AS FAITH 第478号
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ご愛読ありがとうございます。第478話をお届けします。
とうとう今年最後の発行となりました。本年もご愛読を下さったあなたに
心より御礼申し上げます。今年は当コラムもお陰様で20周年を無事迎えるこ
とができました。企業の経営課題は次々と生まれる…というよりも、次々と
生まれる経営課題を解決することが経営そのものと解釈すべきかもしれませ
ん。経営課題が次々と生まれてくるので、原理的には書くネタも不足すると
いうことなく、ずるずると書き続けてきて今日に至りました。
そのような当メルマガにお付き合いくださり、繰り返しになりますが感謝
申し上げます。今年最後の今号は、例年以上に季節感も年末の締め感もなく、
地方の道路沿いのコンビニとゴルフ場が向き合う場所で感じたことを単純に
書きまとめたものです。ただその背景にあるオレオレ詐欺の舞台裏の話や、
さらにそこに吸い寄せられていく若者の心情を想像すると、人と向き合うこ
とが日々避けられない中小零細企業の経営に参考として戴ける部分がたくさ
ん見つかることと思います。
比較的映画が好きな知り合いから「観ましたか」、「観ましたか」と重ね
て尋ねられるので、先日『ジョーカー』を観てきました。米国の荒んだ社会
は以前から知っていましたが、この作品の上映を控えなくては社会的不安が
危惧されるという判断まであったという話で、どれほど観客の共感を呼ぶの
かと関心を抱いていました。しかし、劇中にあったものは、「教育」の欠落
であったように思えますし、欧米・中国に比べて、圧倒的に格差の少ない日
本において、この映画を観て暴動を起こす人間が多数出るなどは、ほぼ有り
得ないだろうなと思えました。
意味なく街を破壊する『ジョーカー』の暴徒達は「教育」の欠落の結果発
生していますが、今号で描かれる詐欺犯罪者達は、“質の高い教育”の結果
生まれています。高校図書館の司書教諭と本文中の『老人喰い』について話
した際に、彼女が「その本がウチの館になくて良かった。あったら、正直私
も気づかないうちに、感化される学生がウチにもいそうな気がする」と言う
ほどに、人を飲み込むうねりのような力をもった本です。そんな社会の一面
から、先述の通り、中小零細企業経営の在り方を年の瀬に少々考えるきっか
けになれば幸いです。ご意見・ご感想お待ちしております。頂戴したご感想
などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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■弊社代表市川の映画感想ブログ 『脱兎見! 東京キネマ』
『ジョーカー』 http://tales.msi-group.org/?p=1741
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その478:コンビニの乾いた駐車場
「あの。さっき仰っていた軽食ですが、ナビで見ると旅館に着くまでの途中
にゴルフコースとコンビニが道路を挟んであるところがありますよね。おに
ぎりか何かをコンビニで買ってそこの駐車場で食べてみたいんですけど。そ
れでいいですか」。
初めて訪れた地方の山道を走る車の中で、経営者研修を行なう山奥の温泉
宿に着くまでの余裕時間の潰し方を考えていた商工会議所の担当者は、私の
唐突な申し出に困惑していた。ゴルフができない私はゴルフ場に入ったこと
がない。それどころか、それがどこのゴルフ場であっても、近づく機会さえ
ほぼない。ゴルフ場が見渡せるコンビニの駐車場。その組み合わせがある所
にどうしても行ってみたかった私は、人里離れた温泉宿の研修仕事をお引き
受けした際に、地図を見て千載一遇のチャンスの到来に興奮した。
その類のルポで有名な鈴木大介の『老人喰い』には、オレオレ詐欺集団の
“事業”運営の仕組みと組織運営方法が事細かに描かれている。検挙回避目
的の徹底したリスク管理も非常に高次元だが、それ以上に新人達の採用から
動機付けの流れも計算され尽くしている。地方都市で熱い何かを持て余し、
燻っている若者を選抜するリクルーティング・システム。理不尽なノルマを
課せられて、怒号飛び交う中で進められる電話研修。
中でも最も印象に残ったシーンがある。辛く苦しい初期選抜で生き残った
新人達をゴルフ場が見渡せるコンビニの駐車場に連れて行き、軽食をその場
で取らせるのだ。そして、高級車を並べて優雅に遊ぶ富裕層と道路越しに安
い軽食を駐車場で頬張る自分達を対比させる。「老人が貯め込んでいるから、
自分たち若者にカネが回ってこない」。「老人のカネを社会に還元し直すの
は正義の行為である」。「一件、最大でも500万。彼らにとってはほんのわ
ずかな金でしかない」。そんな価値観を受け容れ、信奉するように新人達を
導く。
私の話を聞いて、「へえぇ。けど、この国道沿いのゴルフ場は、その本に
載っているのではないんですよね。こう、何て言うかイメージを体験したい
みたいな感じなんですね」と、担当者は要望を快諾してくれた。青く広がる
空。車はナビ通りコンビニの駐車場に着いた。
ドアを開けて駐車場に降り立つと、十台以上も入れる駐車場には、私が乗
って来た車しかなく、球技でもできそうなぐらいに思われた。そんな清々し
いまでのドライブコースの一部にもなり得る場所。手に持った調理パンと
PETボトルを掲げると、その背景に高級車の列と何不自由なさげな人々の興
じる姿が遠近法で同一フレームに収まる。うまく構図を作れば、見る者の心
に刺さって消えない印象を残す画像になるように思われた。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】
今年発行の当コラムの20周年記念特別号!
そのプレゼント企画
「生き残る中小零細組織の鉄則」は
来年1月中旬から後半にかけての送信です。
今まで弊社が発信した内容などを振り返りつつ、
大雑把に揃っていたネタを、
MECE的にチェックしたり、
表現をチェックしたり…
などなどしつつ、編集しております。
もう少々お待ちください。
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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】
■『したたかな寄生 …』 成田聡子 著
■『どうせ死ぬのになぜ生きるのか …』 名越康文 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発行しています。
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次号予告:
第479話 『やっさもっさの着地点』 (1月10日発行)
今号に続いて社会の格差について少々考えてみた号です。「上級国民」と
言う言葉がネットなどでも見られますが、彼らの支配する社会の行き詰まり
について考えてみます。
(完)