472 若人の濾過

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経営コラム SOLID AS FAITH 第472号
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 ご愛読ありがとうございます。第472話をお届けします。

 今年も例年通り発行予定の周年記念特別号。10月末日で1999年の創刊から
まる20年が経ちます。全編の文章のドラフトはほぼ完成し、推敲を重ねてか
ら、来月の発行に向けてメルマガの形に整形していく予定です。PR欄に章立
てなどを紹介しておりますので、是非ご覧ください。

 先日、某大手人材会社の新規事業担当者の方から、「人材紹介業の将来に
ついて意見を伺いたい」とウェブ経由でご連絡をいただきました。全く見知
らぬ大手企業の方から、弊社のような中小零細企業専門の超零細事業者に問
い合わせが直接来ること自体がなかなか珍しいことです。優秀な社員の方々
が揃っているそのような会社でさえ、時代のトレンドに翻弄され、明確で有
効な一手を打ちかねていることがよく分かりました。むしろ、組織規模が大
きいが故のデメリットが感じられ、今回の20周年記念特別号でも1章を充て
る予定の「中堅サイズ以上の組織の困難」に思い至らずにはいられません。
 
 だからと言って中小零細企業にとって桃源郷のような社会が到来する訳で
はありません。数々の厳しい経営環境要因によって淘汰は物凄い勢いで進む
ものと思います。これから数年で、単に「後継者難」だけの理由によってさ
え、中小零細企業の2割程度が消滅するという言説もあるぐらいです。そん
な5年から10年単位で激変するであろう中小零細企業の経営環境を今回の周
年記念特別号でシンプルにまとめられたら良いものと思います。
 
 今回の号は、『若人の濾過』と題して、中堅企業が行なっている四年制大
学卒業者の社員研修で垣間見た事柄についてまとめてみました。数十人の新
入社員の採用規模ですが、弊社の多くのクライアント企業の1年に1~2人の
採用の場合と違い、入口時点の質の管理がかなり大雑把で驚かされます。採
用までに膨大なコストがかかっているはずですが、採用してからの研修が実
際にはアセスメントの場となっていて、入れてから篩い落とす仕組みになっ
ていました。

 一方で新入社員達の「分かっている感」も甚だしく、比較的高偏差値大学
の卒業生でも、様々な能力が劣っていることが分かります。弊社が普段お引
き受けしている案件と比べて、組織規模も新入社員のタイプも大きく異なる
研修の部分代行の仕事でしたが、そのような組織と人々を見ることができて、
学びが大きかったと思います。ご意見・ご感想お待ちしております。頂戴し
たご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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その472:若人の濾過

「別に研修の中で体力を競う場面があるのでもないですから、女性と男性を
均等な比率で混ぜた形の班分けにしなくても良いと思います。男女関係なく
好きな者同士でまとまった方が成果も出やすいのは当たり前です」とメガネ
の新卒女性社員が言う。

 窓から埋め立て地を見晴らす或る中堅企業の会議室。数ヶ月に渡る新人研
修の最後数日の部分の運営を請け負うことになって、総勢20名余の班分けを
発表したところ、自分達で好きに班を組みたいと数人の女性社員が言いだし
た。特に希望を聞く必要もない。「いや。男女は同じではないので」と答え
て班組みを指定したら、余程自分達の意見が通らなかったのが悔しかったの
だろう。その日からずっと「女性差別だ。女性を差別するのは講師として許
されない」などと不平を言い、講習後のアンケートにもそのことばかりを書
き連ねている参加者が数人いた。
 
 今時、カチカチのフェミニズムの運動家でさえ、男女が同能力だとは思っ
ていない。優劣ではなく相違があると広く知られている。「後天的に『男ら
しく/女らしく』と育てるから、そういった社会的性別役割に洗脳されるの
だ」という馬鹿げた主張も、『ブレンダと呼ばれた少年』に描かれた新生児
の頃の性転換手術以来14年間も女子として育てられた男性が、自殺を遂げた
ことでほぼ否定された。彼の双子の弟まで抗鬱剤の過剰摂取で先立っている。
私がこのテーマを初めて意識したのは、爆発的ヒットとなった『オニババ化
する女たち』を読んだとき。その後、黒川伊保子氏の数ある書籍群を読むま
でもなく、遺伝子や脳や人工知能の研究から、男性脳と女性脳の違いも明ら
かになって来ている。

 性差を考慮することをただただ差別だと騒ぎ立てる四大新卒者の知能レベ
ルはなかなか怪しい。「好きな者同士のチーム」の成果が向上するのは嘘で
はないが、悪条件を乗り越えて貰うのが、本質的な研修目的だ。怪しい知能
レベルなりに、悪条件による悪い結果を回避して恥をかかないようにしよう
としたのなら、その意味で卓見ではあるが、幼過ぎる。

 数日後、参加した研修講師から参加者の観察結果について人事幹部が聞き
取る時間が設けられた。6名の研修講師が口々に参加者一人ひとりの様子を
報告する。ヒアリングの緻密さを見る限り、研修は育成よりもアセスメント
を目的としていたことがよく分かる。私が班分けの際の反応を説明したら、
幹部は「そうでしたね」と頷いてから口を開いた。

「ジェンダー論ですか。まあねぇ。その前に労働法系の知識も仕入れて貰っ
て、企業側が持つ“配置権”について学んでもらった方が良いかもしれませ
んね。適性テストで読解力が低いとも出ている社員達とこの社員達は重なっ
ていますね。勉強がかなり必要かもしれません。企業は個々人の好き嫌いで
配置をすることは、あまりないので」。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

今年も例年通り10月末日に発行する周年記念特別号。
今年はとうとう20周年です。

20周年とは言っても、特に過去の歩みを振り返るのでもなく、
急激に変わり始めた経営環境について考えてみることにしました。
テーマは…
『小さくなっていく会社/消えて行く社員』。

■第一章:中規模企業の受難
■第二章:組織マネジメントの消失
■第三章:小規模化するサブ・マーケット
■第四章:会社組織規模拡大欲求の喪失
■第五章:雇用の負担増
■第六章:現場の機械化の進展

既に過去の号でシリーズなどにして紹介したテーマを
再録したり、まとめなおしたりする部分も含まれていますが、
昨今の経営環境・労働環境の変化と中小零細企業の経営を
うまくつなぎ合わせて描ければ良いと思っています。

全体テーマや各章タイトルの表現に、
まだ変更の余地がありますし、
章の順番にも入替の余地がありますが、
ラフドラフト段階までは原稿作成も進みました。
第二章・第三章は、合資会社MSIグループとほぼ同じドメインで
近く独立して事業を開始する予定のおくだみゆきが担当します。

会社の現場を見ていたら、
毎日が同じように過ぎていくかのようです。
しかし、そうしている間にも、
大きな変化の動きは徐々に速度を上げています。

何がどんな風に変わるのかがまあまあ分かる20周年記念特別号。
是非、ご期待ください。

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『日日是好日 …』 森下典子 著
■『新版 動的平衡 2』 福岡伸一 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発行しています。
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次号予告:
 第473話 『約束の融解』 (10月10日発行) 
 ICT技術の発展と共に、組織のあり方やそこでの人の働き方が大きく見直
されつつあります。耳にしたブロックチェーンの使い道から漠然と考えた雇
用の未来について書いてみました。

(完)