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経営コラム SOLID AS FAITH 第468号
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ご愛読ありがとうございます。第468話をお届けします。
タクシーに乗ると、ビジネス関係者を意識したものなのか、後部座席前に
つけられたモニタで最新のICT技術を用いた経営システムの広告動画を見せ
られることが増えたように思います。HRテック系もMA系もどんどん増えてい
ます。経営においてそれらの「商材」が秘める大きなインパクトをこの広告
を見ている人々のうちどれほどが認識しているのだろうかと、つい考えてし
まいます。
たとえば、接客において、人間がやる前提の「ホスピタリティ溢れる個別
対応」は素晴らしいとされていますが、本当に高付加価値の高級ホテルや高
級レストランのスタッフでも、ほんの一握りの常連さんしか提供すべきもの
を的確に判断することは困難でしょう。まして、スタッフが数多いて、入れ
替わりもそこそこ激しい中では、ホスピタリティ型の個別対応はどうしても、
お客様のタイプ別などに収斂されて行くことにならざるを得ないでしょう。
けれども、仮に人工知能が個々のお客様の過去の購買行動などを瞬時に読み
だし判断するという前提なら、話は全く違ってきます。
中国の警察官のような(『ドラゴンボール』のスカウタ状の)スマートグ
ラスを装着して、目の前のお客様の顔認証データからお客様のカルテ内容を
その場で確認して対応するようなことができれば、原理的には個別の理想的
な対応が、スタッフの経験や知識に左右されず提供できることになります。
誰がいつ来るか分からない中で、常連さんのカルテ内容を記憶する必要さえ
なくなるのです。
中小零細企業でも手が届くICT技術活用。それはただ導入すれば効果が出
るものではなく、今までの理想的なビジネス・モデルから離れ、人間の役割
も大きく変わってしまった後の理想形を創り出すところから始まらなければ
ならないように思えてなりません。そんなことを漠然と考えながらまとめて
みたのが、今回の『差分情報』です。
前号に続き、最近当コラムにはあまり登場しなくなっていたマーケティン
グ的な観点を描く号となりましたが、前号とは異なり、マーケティングの未
来について思いを巡らせる内容になっています。お楽しみ戴けたら幸いです。
ご意見・ご感想お待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標
納期は5営業日!!
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その468:差分情報
「やっぱり、ターゲットのモデルを決めるのって、やってみるとその切れ味
が分かりますよね。サイトに載せる文章も写真のモチーフとか構図とかも、
全然悩まなくなるし。当たり前ですけど、ビューアーからのレスポンスも質
・量共に向上するし」。
自社サイトのリニューアルに当たって、マーケティングの基本に則り、初
めてターゲット・カスタマーのモデルを綿密に設定し、ウェブページ上での
表現を細かく検討したプロジェクトのミーティングを終えると、メンバーの
一人が駆け寄ってきて言った。
具体的なターゲット・モデル像を細かく決め込むやり方は、アパレル業界
では昔から常識だったらしい。2000年頃に診断士の師匠から、「アパレルで
は、モデルを決め込むから『モデリング』と呼んでる」と教えられたので、
私は今でもそう呼んでいる。特定のモデル像に名前までつけて、ガッツリ決
め込み社内で共有すると、社内コミュニケーションが格段に楽になる。
「ターゲットの『裕子さん』が嬉しくなる声掛けは、やっぱりこうでしょ
う」と誰かが言い出しても、皆が「まあそうだな」と納得するので、議論の
余地もない。
渋谷の最先端の繁盛アパレル店でも、来店客の年齢やライフスタイルには
かなり幅がある。それでも、その店のコンセプトはウェブや内装、品揃えな
ど、どこを切っても、素人にさえ認識できる。本来、マーケティングで自社
の商品・サービスをマッチングするのは、モデル像ではなく、そのモデル像
が持つニーズである。ニーズをより具体的に意識し、組織運営の議論の俎上
に載せるために、仕方なくモデル像を設定している。実際の営業や販売の場
で、相手がモデル像と異なる点があっても問題が生じることは殆どない。
「けど。モデルづくりという発想がだんだん古くなるかもしれないよねぇ」
と私がぼそりと呟くと、件のメンバーは「え。どういうことですか」と詰め
寄って来る。
ウェブなどの情報発信なら、ニーズの合うお客はモデル像と自身のズレを
勝手に調整する。接客の際には、モデル像と目の前の相手とのズレを店員が
調整しなくてはならない。それが人間の接客の価値でもあるが、標準化が困
難な技術対応の余地が残ってしまう。
「いろんなデータがある時、個々のデータをバラバラに覚えるのは大変だか
ら、平均値とか基準を決めておいて、『平均より3センチ大きめ』とかの方
が認識しやすいでしょ。モデル像の設定も原理はそれだよね。モデル像をき
ちんと覚えておくのは誰でもできるけど、その差分にどう対処するかは、接
客や営業の場面では個人技になっちゃうからなぁ。経済学でさえ経済人モデ
ルを捨てたけど、結局、経済予測の精度が上がったようには見えないし。ま
あ、モデル像なんか関係なく諸々の個人情報をベースにpepper君が接客した
方がうまく行く時代になるのかなぁ」と、私は苦笑しながら彼女に言った。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】
弊社ウェブに掲載中の
中小零細企業の現場に即した
オリジナル社員研修の企画サービスの事例を紹介しています。
研修と言えば…
まずは会社の階層ごとの研修の種類があって、
新入社員にはマナーや会社で働くルール、
管理者に近づいてくるとリーダーシップ…
と定番の研修プログラムが用意されているような気がします。
実際に、一般の研修会社に研修を依頼すると、
定番のメニューの中のコースを選ばされて、
あとは予算見合いで、値段が決まるような
決まりきった研修ばかりが提示されます。
弊社のサイトには、『研修柔軟企画』というページがあります。
http://msi-group.org/msi-4employees/
オリジナルの研修を現場の課題に合わせて企画します。
値段が上がりがちな「講師料」をカットするために、
社員だけで完結する研修の台本と教材だけを提供することもあります。
世の中のメニュー制の研修サービスが余りに定番なので、
柔軟なオリジナル研修企画は想像しにくいと言われます。
そこで、柔軟な研修企画の事例を合計6本も
弊社サイトで紹介することと致しました。
その第三弾は…
『パチンコ店個別研修企画物語 vol.3
「接客がイマイチな副主任対策」』
http://msi-group.org/msi-customized-training-plan-case-c/
お客様を観察する習慣づけと、
その結果を活かした接客行動の形成。
こういうことも個別研修で実現することができます。
是非、ご一読ください。
御社のヒトがらみの課題も、
解消はムリでも緩和ぐらいはできる可能性大です。
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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】
■『攻殻機動隊 名言集』 講談社 編
■『捨てられる銀行 2 …』 橋本卓典 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
bizcom@msi-group.org
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インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発行しています。
(http://www.mag2.com/ )
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マガジンID:0000019921 (ナント、たった5ケタ)
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次号予告:
第469話 『ひゃっはぁな生活』 (8月10日発行)
本を読んでいて「労働不適格者」という不穏な言葉を見つけました。夏休
みにじっくりと考えることができる重いテーマを一つご提供いたします。
(完)