447 続・動機の圧搾

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経営コラム SOLID AS FAITH 第447号
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 ご愛読ありがとうございます。第447話をお届けします。

 数々の台風が日本各地に甚大な被害を齎しながら去って行って、じわじわ
と夏の暑さも収まってきました。毎夏必ず一度食べることにしている新宿三
丁目の甘味処のかき氷をまだ食べていないことに気づき、今年のサービス終
了前に慌てて行くことにしました。

 前号の挨拶文に入れた歯茎の掻把手術については、その後、何人かの方か
ら「口は大丈夫ですか」とお声掛けいただきました。ご配慮に感謝いたしま
す。前号に書きました通り、最終的な様子見段階にあり、骨の再生と共に時
折瞬間的な重い痛みがありますが、三ヶ月程度で完治の診断が出る予定です。
20年近くの宿痾の解消を喜んでいます。

 今号のタイトルは『続・動機の圧搾』です。2006年に書いた第152話『動
機の圧搾』に登場する「頭の中のタンス」の仕組みが、最近の脳科学の発達
によって無意識の働きの一部として解明されてきたらしいことを知りました
ので、それについて書いてみました。意識的に考えるよりも、より正確で統
合的な“可能な限りの最適解”を見つけ出すのが無意識の一つの機能である
ようです。誰しも当たり前に何となく知っているようなことである反面、ど
うしても論理的な思考が常に正しいように錯覚しているものと思います。興
味深い発見をご一緒にお楽しみください。ご意見・ご感想お待ちしておりま
す。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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その447:続・動機の圧搾

 やっぱり練りが足りない。1枚のプリントアウトを手にした私は、弟子が
ブログに書くという文章の第一段落を読んですぐに思った。どこがどうおか
しいのかと意見を求める彼女に対して、私はゆっくりと告げた。
「深みと言うか、練りと言うか、洞察と言うか。なんかそんなのが決定的に
欠けている。どっかの受け売りのような、有り触れた考え方で仕入れたネタ
を並べるからこういうことになる。全面的に書き直し。骨組み以前からやり
直しになると思った方がいい」。

 多少でも創造性が活かされる仕事には熟成が必要だと私は思っている。そ
の仕事のお題が与えられる遥か以前から、多種多様なインプットが思考とい
う前加工を経ながら脳内に蓄積されている前提がまずなくてはならない。そ
こへお題と共に表現の枠組みが文字数などで提示される。そこから時間をか
けて構成や表現スタイルを漠然とイメージしつつ時間を過ごす。この熟成の
プロセスがなければ、後に繕い難い凡庸さが生まれると思う。

 それから構成の骨組みを描き、後は一顧だにせず、ただただ骨組みに従っ
て完成させる。無為に行なう最後のアウトプットのプロセスを私は「腕力的
表現」と呼んだりする。
 
 オランダのアムステルダム大学のアプ・ダイクステルホイス博士らは、被
験者達を3グループに分けた上で、一人ずつ、5枚のポスターから好きなも
のを選んで持ち帰らせる実験をした。3つのグループのうち、第一グループ
はポスターを1分半眺め、選択の理由を書き出してじっくり考えてから選び、
第二グループはポスターを眺めて直感で選んだ。第三グループの選択方法は
複雑で、まずポスターを眺め、その直後に5分間の難しい言葉遊びをして、
それからまたしばし眺めてから選んだ。

「ポスター実験」として知られる奇妙な実験で、一ヶ月後、「ポスターをい
くらなら売るか」と尋ねて、ポスターの選択に対する満足度を測定すると、
第三グループの満足度が最も高かったと言う。意識の力には限界があり、一
度に僅かな情報しか処理できない。それに対して、無意識の背景的思考は幾
つかの特徴的な相違点に捉われることなく、全体的な判断、言わば、複雑系
の思考をしているという風に、この実験結果は解釈されている。

「常に十分な情報を下拵えしつつ蓄積しておき、テーマに合わせた無意識的
な判断結果を改めて分析しないこと」。19世紀の化学者ケクレは、尻尾を噛
み輪になった蛇の夢をヒントにベンゼン環の構造を見抜いたと言われている。
個々の人間にとって最高の判断結果を生み出すルールは、そんな時代から、
既に知られていたはずなのだと思い起こす。

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◆第152話『動機の圧搾』 http://tales.msi-group.org/?p=205
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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■『AIが人間を殺す日…』 小林 雅一 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第448話 『進歩の原理』 (9月25日発行) 
 社員の評価制度を考えるとき、「成果による評価」と「努力(する姿勢)
による評価」のいずれを採用するかで判断が揺れることがあります。新たな
脳科学の知見からこの二つを考えてみることにしました。

(完)