封切からまる1ヶ月以上経った木曜日の夜、仕事を終えて、19時50分の回を明治通り沿いのミニシアターで観て来ました。前回の『カフェ・ソサエティ』からたった数日以内の再びの来館です。『カフェ・ソサエティ』を観た際にポスターを館内で見て、この映画館で上映していることを知りました。つい先日まではバルト9で上映しており、そろそろ限界かと思い観に行こうと考えていたところでしたが、いつの間にやら、バルト9では上映が終わり、こちらの館に映っていたようです。映画情報サイトでも、関東でこの1館だけの上映となっていました。おまけに、1日1回の上映です。
元々、この映画を観ようか観まいか、かなり逡巡していました。原作アニメは、タツノコ・プロのものの中では、私が好きなもののトップではないかと思います。『ガッチャマン』三部作の第三作『ガッチャマン F』と双璧を成しているかもしれません。けれども、DVDは、『ガッチャマン F』同様入手できないままになっており、OVAの『新 破裏拳ポリマー』を持っているだけです。リアルタイムで見た1回と、その後の再放送をテレビで見ただけの記憶しかなく、その大まかなストーリー設定と、戦闘スタイルなど、断片的に記憶に残っていますし、家には今尚、当時買い求めた『破裏拳ポリマー』フォトブック(と言っても、実写ではないので、実質イラスト名鑑と言う感じです)がありますが、その後、この作品が大きく再評価されて話題になったと言う話も聞いたことはなく、私の中の『破裏拳ポリマー』も、そのままになっていました。
逡巡の理由は、トレーラーを観た段階で、既にこの作品が原作から大きく乖離した内容であることを知っていたからです。ポリマーのプロト・タイプやテスト・タイプが幾つか登場すると言う点だけを見れば、辛うじて、OVAの方に話が近いかもしれません。いずれにせよ、原作に比べて、主な登場人物の名前、主人公は警察幹部の勘当息子で特殊な拳法の使い手であること、ポリマーそのものの外観と機能などは、或る程度、踏襲されているぐらいしか、類似点が見つかりません。それが、トレーラー段階で、概ねわかる状況でした。それでも、最終的に決断できたのは、映画館のポスターを間近に見て、主人公ポリマーの外観の精緻な構造に少々感動し、原作ファンとしては、仮にこの映画が駄作であったとしても、「観ること」に一定の意義があるのではないかと思えたことです。
シアターに入ると、観客は15、6人いて、3人ほどを除いて全員男性でした。男性は私以上の年齢が多く、不思議と背広姿の人物は私だけでした。見渡す中で、何かバクマンに出てくるヒットを出せないままに作画担当に残ったマンガ家兼アシスタントと言った風情に見えるTシャツジャージ姿のデブ系男性やらが数人見つかり、その亜種のような男性も何人か見当たりました。何の業界か分かりませんが、業界関係者なのか、作品関係者なのか、そのような人々であるのかもしれません。そのうち数人は、エレベータ内の段階で私をかなりジロジロと見ていましたので、その日は彼らの中の「内輪鑑賞会」の日だったのではないかと、私は疑っています。
端的な結論を言うと、ポリマーの外観は実写にしてもここまでオリジナルイメージを維持できるのが凄いと思いましたが、物語的には別作品として見てもギリギリ許せる程度の完成度で、オリジナル・ビデオ作品かVシネでも丁度良い感じに見えなくもありません。
ポリマーのスーツは、空を高速で飛行できるポリマー・ホークや海中を潜航できるポリマー・グランパスに変形することができる優れものなのですが、このうち、エンディングに近いシーンでポリマー・ホークも特撮を駆使して実現していることにも好感が持てました。あとは、この作品のセクシー部門を担当する女性二人の評価と言う感じかと思います。
二人のうち一人は、私は『キューティーハニー THE LIVE』で、その存在に気付いた原幹恵です。胸のボリューム感は以前の通りでしたが、アラサーになった現在、何故か頬がこけていて、流石に10年の年月には勝てない感じがありありと浮かんでいました。ファンもいるのでしょうが、元々『キューティーハニー THE LIVE』でも、私は3人いるハニーのうち、残りの二人、シスター・ミキ、シスター・ユキの方のファンでしたので、まあ、どうでも良いかなぁと言う感じにしか見えません。
もう一人のこの映画のヒロインは、原作のイメージを最も踏襲している感じがする、主人公が探偵事務所を構えるビルのキュートなオーナー、南波テルです。この役は、柳ゆり菜と言うアイドル兼(主に)テレビ女優が演じています。ややタヌキ顔系でずっと見続けていたら、何か見覚えが湧いてきました。パンフで調べてみると、比較的最近観た『チア☆ダン…』に出演していることが判明しました。さらに、ネットで調べてみると、最初はチア・リーディング部に入るものの、自分がバレエで相応の評価を得ていることを鼻にかけて、他の部員を蔑み嘲り、退部するいけ好かない女子高生の役でした。今回は、アクションもそれなりにこなし見所はありますが、それでも、Vシネを盛り上げた功労賞ぐらいの位置付けのように感じられます。
言えば恥ずかしい「この世に悪のある限り、正義の怒りが俺を呼ぶ!!」の台詞を、ポリマーの戦闘モード起動のキーワードと位置付けていて、主人公に不自然感なく言わせるなどの辻褄合わせなども、設定として見事だとは思います。しかし、そのような努力を経ても、どうも、よくできたVシネにしか見えない安っぽさが否めません。
特撮をギンギンに張り込むことができなかった低予算のせいであるのかもしれませんが、それであれば、低予算なのに名作として有名な『ゼイラム』のようなオリジナリティのもっと高い、全くの別作品として世界観を構成した方が良かったのではないかとも思えます。タツノコで言うと、『ヤッターマン』は監督の手腕か、やたらに楽しめ、『ガッチャマン』は全く別世界の物語に仕立て上げ直した結果、ギリギリみられる及第点越え作品に私には感じられましたが、残念ながら、この作品は、色々な面での中途半端さ故に、DVDは不要かなと思います。