410 避役の理由

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経営コラム SOLID AS FAITH 第410号
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 ご愛読ありがとうございます。第410話をお届けします。

 漸く春の気配がしてきました。2月から4月にかけては、展示会のシーズン
で、複数のクライアント企業様の関係で、花粉の吹き荒ぶ中、ビッグサイトや
幕張メッセに頻繁に通う日々が始まりました。展示会出展の効果を大きく伸ば
す方法は、端的に言うと仕込みの妙に尽きます。弊社では、(当時は最新技術
だったバーコードを用いて)展示会来場者の情報管理を行なう“ビジネス・モ
デル特許”を取得しており、その際から、イベント出展の構造的改善の案件を
年に数度頂戴するようになりました。今春もその類の案件が数件入っています。

 PR欄では、今月末を目処に作成が進んでいる『ウェブ活用のレポート』につ
いて紹介しています。ウェブ活用は多くの経営者が思い込みや思い入れから、
掛けたコストが回収できず、構築前の期待が裏切られてしまっている状態が散
見されます。ウェブを外部との情報のやり取りの窓口として、そこに情報を蓄
積していくことができなければ、自社事業の付加価値を表現していくことは今
時非常に困難と言わざるを得ません。

 そのようなことを、ウェブ活用の切り口を含む案件が始まるたびに、口頭で
説明して、一般に思い込みが強い(どころか、思い込みが総てのような)オー
ナー経営者とウェブ活用の方針をすり合わせるのが非常に大変なので、『ウェ
ブ活用のレポート』を作成することと致しました。安易に考えられることの多
い人材育成や人材採用について、『人材育成のレポート』や『人材採用のレ
ポート』を作成したのと、全く同じ構造の制作動機です。

 今回の号は、今時の社長の様子のアルアル話です。大枚を払って人間を雇っ
ておいて、その活用や運用を疎かにし、結局自分が苦労を重ねる。馬鹿らしい
ことに「これが社長業だ」とばかりに、悲劇の主人公のように振舞う若手社長
を見ることが、最近何度かありました。零細事業者の弊社から見ると、何のた
めに人を雇っているのか全く理解に苦しみます。そのような数社の状況を描写
してみました。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴した
ご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その410:避役の理由

 運送会社の事務所の席を一つ占拠して、社屋の外にポツポツと戻ってくるト
ラックを私は見つめていた。運転手達は事務所のカウンタ越しに隣接する休憩
室に入って来ては、運行状況を用紙に書きつけて「おつかれです」とぼそりと
言って帰宅していく。新社長はPC仕事や電話を離れた席でしていて、帰宅し
ていく社員と言葉を交わすこともない。
 
 卸問屋と小売の間のトラック定期便を請負うこの会社では、価格引下げ要求
と運転手の採用難が大きな課題。ただ運ぶだけではなく、付加価値のある作業
を運転手がすることで単価を引き上げ、それを報酬に還元して離職を防ぐのが、
社長が思い描く改善の方向性。「採用が難しいのか、定着させるのが難しいの
か。厳密にはどっちですか」と尋ねてみると、長考の末、定着が課題と言う。
離職の想定要因については「そりゃカネでしょう。今時、ウチよりも稼ぎの良
い仕事は、探せば直ぐ見つかるだろうし」と言っていた。
 
「ウチの社労士さんは、労基の話とかを分かりやすくできるって言うんで、今
度社員に仕事とは何かについて話をしてもらうんですよ。もっと稼ぐために何
をするべきかが分からないと、付加価値のある仕事を教える段階にも入れない」
と社長が今後のプランを説明する。しかし、社長は「当たり前のことを俺は分
かっている」ので、社労士の評判のレクチャーを自分で聞く気はなく、社員の
目が近く覚めるだろうことを期待している。
 
 夜、広告代理店のデザイン業務を請負う小さな会社の社長と飲んだ。女性ス
タッフが増えて半数を超えた頃から、事務所の清掃や片づけが男女公平でない
と揉めるようになって、「どうしようか」と考えているらしい。「はあ」と聞
いていると、40前の彼は、週に三日日二時間程度の契約で清掃業者を入れるこ
とを検討していると語りだした。「プロに頼むと間違いない」と彼が言うその
業者には、小さな給湯室のゴミ出しまで依頼するらしい。

 二人の若い社長達はプロへの委託を、面倒なことが減り、仕事に集中できる
効率的な選択肢と考えている。ここ最近、他にも「仕事に集中できるようにし
たい」と言う若い社長に会うことが時々ある。組織でやる仕事は、組織がする
ことであって、社長がすることではない。仕事の実務に集中したいなら、元々
組織を持つべきではなかった。

 社員と話し合うことも満足にできず、やるべきことを社員にきちんと指示も
指導もできない社長達が、自分が仕事に集中することで稼いで社員を食わせて
いこうとする。私は彼らが、桁外れの慈善家なのか、破滅的ヒーローマニアな
のか、コミュ障の成れの果てなのか、未だ判別がつかずにいる。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

中小零細企業組織の育成・定着の基本的な考え方を説明する
『人材育成のレポート』。

さらに、その後、会社の現場監督合同会社様のご協力を得て、
中小零細組織の採用について、その環境構造・市場構造を説明する
『人材採用のレポート』が作成されました。

そして、このたび、どうも基本的な考え方からずれていて、
全く効果・効率を無視して、見栄えだけを追求したり、
徒にコストを掛けて膨大なサイトにしたのに、更新も覚束なかったり、
そんな酷い勘違い状況が散見される中小零細企業のウェブ活用についても、
基本的な考え方を説明するレポートを用意することとしました。

弊社から、よくある勘違い状況と
理解されるべき基本的な考え方のポイントを伝え、
合資会社アイソリューション様に、
文章作成をしてもらうこととなりました。

題して、(ベタですが…)『ウェブ活用のレポート』

今月末には完成の予定です。
完成後には、現在弊社にて関わっているクライアント企業様に、
(従来の『人材育成のレポート』・『人材採用のレポート』のように)
必要に応じ無償提供する予定でいます。

ご希望の方は、メールにてご一報ください。
 bizcom@msi-group.org

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『遺伝子の不都合な真実…』 安藤寿康 著
■『反・幸福論』 佐伯啓思 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
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次号予告:
 第411話 『500回の笑顔』 (3月10日発行) 
 言うも今更感がありますが、お客様はもとより、社員でさえも、そのマイン
ド・セットを変えることは難しいと多くの経営者が思っていることと思います。
その困難の程度を描いてみました。

(完)