406 可鍛の露見

=================================
経営コラム SOLID AS FAITH 第406号
=================================

 ご愛読ありがとうございます。第406話をお届けします。

 12月に入ってから新千歳空港で悪天候が頻繁に発生するようになり、珍しく
札幌・東京間の移動に支障が出るようになりました。年の瀬の繁忙期に社員教
育や経営改善の時間を捻出しているクライアント企業様に迷惑をかけないよう
努めたいと思っています。

 今年を振り返ると、まずは、特別記念号の連続が一番に記憶から蘇ります。
そのテーマ選定にひどく困ることがないほどに、過去数年単位で予見され続け
てきた各種の経営環境の変化が、とうとうあちこちで現実化して来た実感があ
ります。その対応についてのご相談の比重は間違いなく増えています。色々な
業種の色々な立ち位置の企業の色々な方向性の経営課題の構造を、バイアスな
く捉え、実現可能・実践可能な対策を考え続けるうちに一年が何となく過ぎて
しまったように思えます。

 今回の号は、『可鍛の露見』と題して、社員の能力の伸びしろについて考え
てみたものです。グローバル企業・大手企業の組織軍に比べる時、中小零細企
業組織の最大の強みは何かと尋ねられたら、私は、「衆目に捕らわれにくい経
営の自由度」や「事業活動の機動性」などと並んで、今回のテーマである「組
織の伸びしろの大きさ」だと考えています。

 それを意識させられる具体的な経営の一場面について、今回の号で描いてみ
ました。今年最後の号として、(長年の読者の方はご存じの通り、全く季節感
や時事性がないのは、いつも通りながら)節目の時期に多少なりともふさわし
いテーマになったかと思っています。本文に対するご意見・ご感想をお待ちし
ております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
=================================

その406:可鍛の露見

「あはは。そんなことはないでしょう。全体でも45000字ですよ。小説なんか
よりよっぽど短いし。普通のビジネス書よりもテーマも絞られていて、事例も
中小零細企業の現場レベルの声ばかり。こんな簡単な文章を読んで原理を頭に
入れることなんか簡単でしょ。新卒の育て方に困っている会社の人達は、みん
な有難がって読んでましたよ」。
 私が課した『人材育成のレポート』の精読。この会社では大学からの新卒社
員を雇い入れることとなって、急遽、育成体制の準備をしている。社長から
「育成のノウハウを身につけたいとやる気に溢れているメンバー」として推挙
されてきた彼らの「自慢のやる気」が消失するのに時間は掛からなかった。レ
ポートをよく読んだかと私が尋ねたら、「非常に勉強になった」と口々に答え
るので、テストをしてみた。散々な結果に言い訳が渦巻く。

 そこで章毎にノートに要点をまとめさせ、発表させ、内容の論点を暗唱させ
た。さらに、私が現実に起きそうな育成の場面の例を提示して、レポートの内
容に基づいた行動指針を口頭で一人ひとりに答えさせた。最初は、「そんな時
間はない」、「無理だ」、「できない」と言い訳を言い募っていたメンバー達
も、嫌々やるうちに課題作業に慣れ、どんどん読み解いて理解し、それを自分
の言葉で語ることに微かな楽しみを見出すようになってきた。

「非認知能力って知ってますか。IQとかでスパッと測れない色々な能力のこと
らしいんですけど、年収や労働市場での成果に物凄く影響があるんだそうです
よ。『「学力」の経済学』って本に書いてあります。対して、IQ数値とかの認
知能力の方は、余程とんでもなくできるんでもなければ、8歳ぐらいでほとん
ど差がなくなってくるそうです。じゃあ、非認知能力で大切な要素はどういう
ものかと言うと、「自制心」と「やり抜く力」だそうですよ。
 あなたがたは、これから会社を背負って立つ大切な会社の財産を預けられ
て、それを大きく育てて会社に返す重責に臨む訳ですよ。そんなあなた達が、
「自制心」や「やり抜く力」もない非認知能力の低いノータリンでは、お話に
なりません。だから、メンドいのを逃げ場なく読み解いてもらったんですよ。
別に『資本論』でも良かったんですが、ついでに育成方法も知って欲しいです
し、あんまりハードルを挙げすぎて辞められても困るので」。

『人材育成のレポート』の精読作業には、大きな充実感があったのか、誰一人
怒り出す者はいなかった。全員なるほどと即座にメモっている。さらに、数人
がほとんど同時に挙手して、「その本の名前をもう一回教えてください」と尋
ねて来た。

 タイトルをホワイトボードに書いて、私は一言付け足した。
「そうそう。可鍛性って分かりますか。鍛錬で伸びる可能性とかいう意味で
す。非認知能力は、子供のときだけじゃなく、成人後も可鍛性があるのだそう
です。実感あるでしょ」。

=================================
☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
=================================

【MSIグループからのPR】

恒例、大判サイズ寒中見舞 発送準備中!

変に経費節減を狙った訳ではありませんが、
恒例のA4サイズに対して、来年の寒中見舞いはA5です。
従来のを大判と呼ぶなら、今回は中判です。

中小零細企業の経営を揺さぶりつつあり、
これからも大きく変化するであろう、
経営の環境要因についてまとめた内容にしてみました。

二つの経営環境要因は…
●「斑模様の人口減少」と
●「AIを含むICT技術の爆発的普及」です。

人が雇えなくなる一方で、人が要らなくなる仕事の激増。
ICT技術活用で大幅コスト削減の競合他社が出現する一方で、
人間の緻密で臨機応変な対応に拠る差別化ポイントが明確化。

否応なく、色々な変化が起きて、
中小零細企業の経営に、変化か淘汰かを迫ります。

そんな状況を俯瞰しつつ、
弊社の考えとご提供可能なサービスなどを紹介した内容です。

来年1月中旬配送開始予定!

=================================
【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『イノベーションのアイデアを生み出す七つの法則』 S・ジョンソン 著
■『宗教消滅』 島田裕巳 著
=================================
発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
 bizcom@msi-group.org
このメールマガジンは、
インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発行しています。
(http://www.mag2.com/ ) 

毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まず足掛け18年。

マガジンID:0000019921 (ナント、たった5ケタ)
★全バックナンバーはまぐまぐのサイトで掲示されております。
 http://archive.mag2.com/0000019921/index.html
★弊社代表のコラムが色々満載。
 ソリアズのバックナンバーも各号の全文が読める弊社ブログ。
 http://tales.msi-group.org/?cat=2
★講読の登録・解除はこちらのURLでお願いします。
 http://www.msi-group.org/SAF-index.html
=================================
※ ご注意!!
 サーバのエラーなどで読者登録が解除されてしまった方がいらっしゃる様子
です。当メルマガは毎月10日・25日に休まず発行しております。発行状況のご
確認は上述の弊社ブログにて行なってください。
 また、まぐまぐからの連絡によると、一部フリーメール運営企業でサーバの
受信量規制を行なっているケースがあり、その場合は大幅にメールマガジンの
到着が遅れるとのことです。
「届かない」、「再送希望」などの連絡は、まぐまぐの窓口である
「magpost@mag2.com」に、メルマガID(#0000019921)、タイトル(『経営コ
ラム SOLID AS FAITH』)、購読アドレス、再送希望の旨を記載の上、メール
にてご連絡下さい。
=================================
次号予告:
 第407話 『折れゆく矢』 (1月10日発行) 
 歴史ある地元の書店の倒産。その背後に窺える事業承継時の大きな経営判断
ミスについて考えてみました。ご期待ください。

(完)