『CUTIE HONEY -TEARS-』

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 封切からたった3日目。月曜日の夜、12時丁度からの回をバルト9で観て来ました。終電時間帯にどっぷりはまって居るとは言え、封切からたった3日目ですから、それなりに観客が居るのであろうと思っていたら、予想は全く裏切られました。

 上映開始20分前の時点で、チケットカウンタでチケットを買おうとしたら、座席表は白一色で、相応に埋まっていることを想定しつつ見たので、一瞬「満席?!」と思いましたが、全く逆でした。人間の思い込みがどれだけ認識に影響を与えるか思い知らされました。シアターに入っても、チケットを買った時のまま、たった一人の観客でしたが、トレーラーが終わりかけた頃、中年と思しき(しかし私よりは若そうな)男性が一人入ってきて、最終的に観客は二名になりました。

 過去の観客数最低記録は、一昨年に観た『ロボットガールズZ』の二人ですから、今回が同率トップです。『ロボットガールズZ』の時も、やはりバルト9の平日終電時間過ぎですが、その感想を読み返してみると、封切から5日ほどの段階で、状況がかなり酷似しています。向こうは雨天でしたが、もう一人の観客は始めからいました。今回のもう一人の観客は遅くに来ているので、何となく総合評価なら、この作品の方が不人気と言うことになるようにも思えます。

『ロボットガールズZ』は、1日4回の上映だったようですが、こちらは1日6回も上映されています。供給過多で1回あたりの観客が激減してしまったと言うことなのかもしれません。その証左か、パンフレットは既に売り切れていました。

 私は『キューティーハニー』のオリジナル・アニメのリアル・タイム世代です。テレビに噛り付いて観ていました。コミックも、あちこちの出版社から色々な長さの同名作品が出ていたように記憶しますが、2、3シリーズは持っています。現在中学生の娘も小学生の頃から愛読しています。その後、アニメで各種の『キューティーハニー』が登場しましたが、少々絵面が子供向け過ぎる『キューティーハニーF』以外は全部観てストーリー展開も記憶しています。

 その後、実写モノでは、私がそのタヌキ顔の大ファンである“愛すべき大根役者”サトエリの作品を待ちに待って観て、さらにテレビシリーズの『キューティーハニー THE LIVE』も、そのきゃぴきゃぴ主人公のキャラに似合わぬシリアスな展開でやたらに愉しめました。『キューティーハニー THE LIVE』に至ってはDVDを全部入手し、PCの壁紙にまで入れているぐらいの気に入りようです。

 リナックスのオープン・ソースほどの自由度ではありませんが、永井豪とその師匠であった石ノ森章太郎(私が作品群を読んでいた当時は石森章太郎)は、自身のメジャー作品群に対する違うコンセプトや設定を導入について、非常にオープンでした。その結果、作品に数々の直接的・間接的な、シリーズ作品・関連作品やリメイクが多数生まれることになりました。

 映画にコミックにテレビにアニメに、そして各種のグッズ類などに派生の範囲を広げたオリジナル作品は、枚挙に暇がありません。『仮面ライダー』シリーズも、リアルタイムで観た『仮面ライダーアマゾン』はとてつもない衝撃的なシリーズ・コンセプトの逸脱を見せていましたが、それが最近の平成ライダー作品に至っては、『仮面ライダードライブ』など、もう、 ride しているのか、 drive しているのか分からないおかしな状態まで許容されています。

 マジンガーシリーズに比べれば、ファン層が狭いはずの、私が好きな『ゲッターロボ』も、本編だけで『ゲッターロボ G』が存在しますが、その後、アニメだけでも質の高い『新ゲッターロボ』や『真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日』などが存在します。そのような中でキューティーハニーも例外ではありませんが、キューティーハニーはコンセプトのオリジナルからの逸脱が結構激しい割に、大ハズレの作品が少ない作品群だと思っています。

 その新作が出たのですから観に行かない訳に行きません。主人公を演じる西内まりあを私は全く知りませんでした。パンフも売っていないので、後にネットで調べてみて、これからDVDで観てみようかなと考えていた『レインツリーの国』の主人公であったことを知りました。向こうの映画の方では途中でショートに髪を切るはずで、切った後の写真を見ると、確かに本作の主人公と同一人物と分かりますが、切る前の画像では、パッと見、同一人物に私には見えません。

 ネット上では、胸のボリューム感が全然ダメだと言う評価が多々出回っており、それを主たる理由に、本作が情けないほどに可哀想な作品と騒ぎになっているようです。胸のサイズだけを言ったら、『キューティーハニー THE LIVE』の通称「フラッシュ三姉妹(ハニー・ミキ・ユキ)」のシスターユキも、いわゆる「チッパイ」系ですが、私は結構好きなキャラでした。単に私がキューティーハニーにムチムチ感を期待していないと言うことですが、西内まりあは変身後のコスチュームデザインも含めて、ネットで言われるほど、ひどい評価を私はしていません。

 ただ、西内まりあの私にとっての難点は鼻です。顔全体における鼻の構成比が大きく、常時目立つのです。キューティーハニーがユダヤ系になっているように常時見えます。劇中でファッションショーのような場にハニーが潜入して、コスチュームを変えながら、モデル然としてふるまい続けるシーンがありますが、さすがは元々モデルだけあって、その時だけは、一応バッチリ様になっているのですが、ボロを纏って『ブレードランナー』のような未来世界の猥雑な最下層で暮らしている時や、黒を基調にした戦闘タイプのハニーになった時も、「ユダヤ人ハニー」なのです。

 ネット言われる貧乳も気にならず、雑魚戦闘員のようだと言われるコスチュームも、それなりに評価できるスタイリッシュさだと私は思っています。今回のハニーはナノマシンの集合体として人間スタイルのボディを形成していますが、そのナノマシンの粒子は輝くピンク色をしています。このピンクの粒子は、黒の戦闘スーツに映えるのです。

 サトエリよりは大根役者ではありませんし、特撮技術もサトエリ・ハニーの頃に比べたら、格段によくなっています。92分の短い作品ですが、劇中の世界観もそれなりにきちんと設定されています。ハニーが夢に描いていた父との再会が残酷な形で訪れ、さらに、人類が蓄積していた汚染物質の飽和は限界で、街の壊滅は必然と最愛の父が告げる中、ハニーは自身の空中元素固定装置をフル稼働させて汚染物質の還元に身を投げ出し、空中分解してしまうストーリー展開は、よく構成されていると思いました。

 自身を構成するナノマシンレベルでの空中元素固定装置を、太気を覆い尽くした汚染物質の還元のために、空中にばらまく結果になってハニーは消えるので、『SPEC』シリーズの当麻のように、最後は空中で漂いながら街の皆のそばに存在する形になるのかと思ったのですが、一旦雲散したナノマシンは徐々に再集積をし始める場面で終わるので、ハニーはどうもきっちり蘇ってきてくれそうです。この展開の妙も、ありきたりと言えばありきたりですが、サブタイトルにもある涙するハニーの悲壮が、(まるで、人類の犠牲になって太陽に突っ込む鉄腕アトムのように)直前で念入りに描写されるが故に、上手い展開に思えます。

 西内まりあのユダヤ人ハニーは少々残念でしたが、敵役のシスタージルの方は、石田ニコルと言うモデルが本業であるらしいロシア系アメリカ人とのハーフの女優がやっていますが、かなりスタイリッシュで、外見がそのまま冷酷な性格を表現している設定の妙があります。目が妙に印象的な猫顔で、ネコ科の動物に変化する原作のシスタージルを強力なアンドロイドとして描けばこんな風になると言う納得感があります。『キューティーハニー THE LIVE』の小田絵梨香演じる烏川真由美に通じるものが多いスタイリッシュな見るべきものが多いキャラです。

 先述のような色気皆無の西内まりあが主演なのでお色気路線は苦しいものと思いますが、烏川真由美の同性愛設定のようなものが書き込めるぐらいに尺が長く、細かなキャラ設定ができれば、全体をもっと魅力的な作品に石田ニコルを起点に変えることができたように思えます。

 なぜハニーは、汚染物質を半分ぐらい還元した後、酷使したナノマシンを回復させ、再度残りの半分を還元することにしなかったのか(地上に広がる分だけを還元して、人々を取り敢えず救っておくことはできたように見えます。)…とか、大体にして、開発した如月博士の娘は、ヒトミちゃんであって、劇中の誰しもが主人公をヒトミと呼んでいるのに、「キューティーハニー」と言うのはどこから湧いて出てきた呼称なのか…とか、腑に落ちない点は幾つかあります。

 しかし、先述のように、私には好ましい要素がそれなりに存在し、DVDは買いです。この短さとスピード感と見せ場のある特撮…などを見渡していくと、ぴったり同じような要素やイメージがある訳ではないのですが、『ゼイラム』を何となく思い出してしまいます。まあまあ好きな作品である『ゼイラム』は、メジャーとは言えない知名度ながら、続編が制作されるほどの固定ファンができた作品です。この作品も世界観や設定その他だけを見たら、十分、続編があってよい作品だと思います。

 ただ、ナノマシンを再集積して作り上げたハニーのボディは、完全には元に戻らず、違う顔や体つきになってしまうと言う設定にして欲しいです。ネット評価とは違い、ムチムチである必要性を私はあまり感じませんが、ユダヤ人顔のハニーはかなり辛かったので。

追記:
 パンフがないので正確には分かりませんが、サトエリ・ハニーには、カメオ出演していた原作者が今回は見当たらないように思いました。DVDを買ったら、この点はチェックしなくてはなりません。