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5月に入ってからの3連休最終日の「こどもの日」の木曜日。バルト9で午後10時15分からの回を観て来ました。
GWの最中相当の混雑を覚悟して、敢えて終電時間に被る回を選択しました。確かにロビーはごった返していましたが、ほとんどの人々は、階下のデパート部分が閉まっている時間のため、エレベータに帰路が絞られ、長蛇の列を成しているだけのことで、これから鑑賞を始める人は、明らかに少数派でした。
外気温は夜に入っても20度はある暖かい晴れた日。明日は平日とは言え金曜日で、もっと混んでいても良いように思えますが、この作品も封切一週間たらずにして、総勢20人もいない観客動員状況でした。おもに若いカップルが多かったように思いますが、私が座る最後列には40過ぎの中年女性二人連れも居ました。この時間帯、この空き様の中では、珍しい観客と言う気がします。
さらに面白いことに、この映画には3Dと2Dがあるはずですが、バルト9では(最初からそうだったのかどうか分かりませんが)3D上映は一切ありません。それに対して、2Dは一日6回だったと思いますが、やたらにやっています。3Dを余程の理由がない限り見る気にならない私としては、「みんな分かってきたね。ウンウン」と言った気分になる状況です。
この映画を観に行くことにした理由は、やはりコンプリートに向けての義務感しかありません。一応、マーベル・コミックの世界観は、基本的には嫌ではないので、全部観ておこうかなと言う気ではいますが、前回の『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』でかなり義務感が褪色しました。キャラ立てもかなり雑になっていますし、ストーリーも雑になればなるほど、ハリウッド映画典型の「単純馬鹿型正義感」が鼻に付くようになっています。
スカヨハのブラック・ウィドーは見所の一つですが、これまた前作『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』で、ダサいメロドラマキャラになってしまい、ウンザリ感が出てきています。さらに言うと、トレーラーを見て、余りに馬鹿々々しそうで、(もし観るのだとしても)DVDで観るので十分と思えた『アントマン』に加え、スパイダーマンまで出てくるという話です。今までの『アメージング・スパイダーマン』とはどんなつながりにする気でいるのか、どれほどゲンナリ来させる作りなのか、一度は見極めなくてはならないだろうという、逆の方向の義務感もあります。
スパイダーマンの一連の作品群としては、サム・ライミの『スパイダーマン』3部作が私は好きです。それに対して『アメージング・スパイダーマン』シリーズは、駄作ではないものと思いますが、私にはそれなりの域の映画しかありません。その延長にある本作のスパイダーマンが、他の常連キャラでさえ大分お粗末な描写の中で、どれだけ期待できるのかは推して知るべしかなと思っていました。
この「どうでもよいかな」的な印象は、取り分け『X-MEN』シリーズと対比すると、際立ちます。『X-MEN』シリーズもかなり『ウルヴァリン』のシリーズで筋が乱れ、テイストが悪化した気がしますが、それでも、本編の世界観は、時空間を何度も越え直しているのに、それなりに持ち堪えているように思えてならないのです。
あまりに期待感が薄いのが言動に現れ、チケット・カウンターで、「えっと、アヴェンジャーズ。じゃなかった。えっと、なんでしたっけ。あ、そうです。それ。『キャプテン・アメリカ』」と言う状態でした。これが既に予約まで済ませた『亜人』などでは、絶対に有り得ない状況です。
10時15分に始まり12時45分に終わる、2時間半もの拘束時間は、私にとってのトイレ行の耐久限界ですが、あまり期待していないが上に「まあ、途中で抜けても何とかなるでしょ」と言ったお気楽感があり、あまり気にせず、上映に臨みました。
観てみると、予想を超える注目ポイントがあって、2時間半に至る拘束時間、148分もの上映時間がまあまあ気にならないほどでした。イメージで言うと、及第点60の所、48点を想定して行ってみたら、72点ぐらいだった感じです。それも、こちらが、「きっとこんなところがダメだろう」と思っていたポイントを、まるで私の期待に極力応えられるよう狙ってマイナーチェンジを重ねたのではないかとさえ感じられる、微妙な調整の積み重ね結果に見えてしまいます。これが世の中のトレンドを反映した結果の設定やストーリーであるならば、私の価値観はかなり王道であることになります(笑)。
まずは、女性キャラ陣です。最高なのは、私が好きなタヌキ顔全開(で、比較的幼児体型)のエミリー・ヴァンキャンプが、脇役の中では最大の活躍度合いを誇っていることです。『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』の、SHIELDの「エージェント13」の時より、SHIELDが崩壊した後の本作の方が、彼女自身の意志で行動する場面が多く、見せ場がかなりあります。おまけにキャプテン・アメリカが恋愛対象としていた米軍女性将校の姪(だったと思います)で、劇中、早い段階で年老いて亡くなってしまうキャプテン・アメリカ最愛の人の遺志を継いでいる形なので、孤立したキャプテン・アメリカの重要なサポート役になっています。(結構ディープなキス・シーンもあります。)
『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』の際のキャプテン・アメリカの監視役で、彼の隣室住人の時も、相応に重要な役柄でしたが、今回の方が明らかにキャラが明確です。日本では公開作品がほとんどなく、はっきり言ってメジャーではない彼女の登場割合は高く、さしずめ、「エミリー・ヴァンキャンプ祭り」です。この点だけでも、本作は私にとって価値があります。
そして、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』でいきなり登場し、本作ではアベンジャーズが世界から糾弾される直接的原因となった失態を犯すのがスカーレット・ウィッチです。その立ち位置から、今回はやたらにキャラが立っています。当然、登場頻度も高く、アップのシーンも相当あります。で、よく見てみると、エミリー・ヴァンキャンプほどの強烈な好感は持てませんが、かなりのタヌキ顔でした。なかなか「見た目」で楽しめる映画に仕上がっています。
スカーレット・ウィッチの能力は、何かよく分からない強力なもので、応用範囲がかなり広いようです。パンフに拠ると「分子の極性を操って物理的実在性を変化させることにより、強力なテレキネシスや精神コントロール能力を使える」と言うことになっています。よく分かりません。何ができるのかもよく分かりません。
ただ、劇中で観る限り、テレキネシスはもちろん、(今回は使われていないようですが、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』ではさんざん登場した)人間の精神操作(平たく言うと瞬間洗脳)、さらにパイロキネシスまで含んでいます。特にテレキネシスは、部屋に充満するガスをまとめて屋外に出したり、爆薬の爆破と共に広がる気体を爆圧ごと封じ込めて移動させるなど、対象が固体に留まらないところが珍しい能力です。もちろん、固体に対しても、単に動きを操作しているのではなく、飛んでくる銃弾を空中で融解させているらしい場面も登場します。
さらにウィキを見ると、本来スカーレット・ウィッチは『X-MEN』の方で初出のキャラらしく、そちらでは、設定上、マグニートーの娘だということになっているようです。ジョジョのメタリカのように磁性を操るマグニートーの能力の延長線上に位置づけられる能力として考えると、その応用範囲の広さがとんでもなく大きいことが一応理解できます。
スカーレット・ウィッチ役を演じるのは、エリザベス・オルセンで、エミリー・ヴァンキャンプよりは、『GODZILLA ゴジラ』でゴジラと戦う兵士の妻の役などがあって、一応ほんの僅かに日本国内知名度が高いとは言えますが、五十歩百歩です。その意味では、この二人を堪能できる現時点で多分唯一の作品が本作だと言うのは大発見です。
この二人の見所に対して、スカヨハはキャラが『アイアンマン2』登場時より多少軟弱ですが、戦闘メインのキャラとして存在しています。『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のハルクのお守り役で、ハルクと自分を同質の社会的異端者と見るメンヘラ色が一掃されているのがかなりの救いです。脇役の中に押しやられていますが、それなりに重要なポジションであるのは変わりません。ケンカに忙しいキャプテン・アメリカに対しても、『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』の時のような、ツンデレお姉さんでもなくなり、本来のブラック・ウィドーに戻った感じがします。これはこれで、一応好感度ポイントです。
見所で言うと、機関車トーマスと衝突している場面などをトレーラーで見ていて、馬鹿っちいとしか思えなかったアントマンも、アイアンマンの装甲の内側で配線を狂わせまくったりして戦うなどの具体的な戦法が目新しく発見でした。私は、変身中(?)はただずっと小さいままでいる能力なのかと思っていたのですが、好きなタイミングで、小さくも大きくもなれるという能力だと分かり、これなら確かに色々できるものと思いました。現実に飛行場での戦いでは、突如、プライベート・ジェットを見下ろすほどの巨大化をして、多くのアベンジャーズ・メンバーを翻弄しています。これほどの痛快さでやりまくってくれるなら『アントマン』も一応期待できそうに思えます。
週刊少年ジャンプの(古くは『To LOVEる』、最近だと『ゆらぎ荘の幽奈さん』などの魔法系(・SF系・超自然系))エロ系マンガで見る限り、主人公の少年が、女子キャラの服に変わったり、風呂場のスポンジに変わったり、はたまた、やたら小さくなったりして、女子キャラの体を這いずり回るような場面が、必ず登場します。アイアンマンに対する今回の攻撃をアントマンが、スカーレット・ウッチやブラック・ウィドー相手に行なったら、完全にその世界だなと妄想が膨らみます。
ストーリー設定も、アヴェンジャーズが市街戦で一般人に多数の負傷者を出したことから、世界的に糾弾され始め、国連の監視下に置くべしと言う話が持ち上がる所から、展開し始めます。大きな力を持っていることから、他国に好き勝手に介入し、自分たちの正義を傲慢に押し付けていく姿勢が非難されているのです。その結論も出ないうちに、今度は、前作『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』で故郷の街を滅茶苦茶にされ、家族を皆殺しにされた軍事将校が、アヴェンジャーズに復讐に来ます。
この復讐方法が見事で、「彼ら(アヴェンジャーズ)に力で勝つことは無理なので…」と言うことで、彼ができる最大限のダメージを与える作戦を、たった一人で用意周到に準備の上で展開するのです。それが今回の仲間割れの大ダメージにつながりますし、世界的世論を大きく反アヴェンジャーズに偏らせることに成功するのです。超能力者の投げ売り状態になっているアヴェンジャーズを、(特殊軍事作戦にやたらに関与していた人物なので、到底一般人とは言えませんが、『96時間』のおっさん並みの)普通の人間が徹底的に引っ掻き回す、なかなかやってくれる設定です。
見ようによっては、正義感だの権力だの軍事力だのを振り回す特定の組織や集団に対する、一個人の戦い方の見本とも言えます。最終目的の方向性が大きく異なりますが、心情的構図からすると『予告犯』を彷彿とさせるものがちょびっとありました。いずれにせよ、危惧されたハリウッド映画典型の「単純馬鹿型正義感」がほぼ全面否定されていて、それなりに胸の空く思いはします。
ここまでの話なら、及第点60の所、48点を想定して行ってみたら、なんと80点越えぐらいの(私にとっての)名作です。ただ、折角の「胸の空く物語構図を持つタヌキ顔祭りSF超大作」の評価も、ただべらべらしゃべりまくってはキョドっているだけの、アホ高校生っぽいスパイダーマンの配置で、ガクンと点を落としてしまいました。『アメージング・スパイダーマン』のキャラまで無視して、身内や友人・知人が自分に関わることで悲劇に巻き込まれていくような悲哀も何もなく、間抜けなガキキャラに堕してしまっています。あまり重要度のあるキャラではないので、物語構成上、無視できる範囲ではありますが、大きな減点ポイントです。
おまけに、この状態なのに、余程製作者側はウリだと思っているのか、わざわざエンドロールの後に、“Spiderman will return to Avengers”だったか、そのような主旨のメッセージがスクリーンに登場するのです。それだったら、エミリー・ヴァンキャンプとエリザベス・オルセンとスカヨハだけのスピンオフを作ってくれよと、瞬時に怒りが湧きました。
72点ぐらいで、及第点は越えて見所は多々あるので、DVDは買いです。ただ、(『X-MEN』オリジナルシリーズを除く)マーベルモノのコンプリート活動に、少々倦怠感が湧いているのは変わらないので、私にとってのマーベル・シネマティック・ユニバースを見続けるかどうかの判断が、今回で一旦保留になったぐらいの意味づけでしかありません。