379 想像天命

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経営コラム SOLID AS FAITH 第379号
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 ご愛読ありがとうございます。第379話をお届けします。

 無事先月31日土曜日に当コラムの16周年記念特別号を発行することができ
ました。今回のソリアズのタイトルを縦横無尽の切り口で考えてみた内容はお
楽しみ戴けましたでしょうか。最長と最短のタイトルは、さすがにすぐ当てら
れましたが、クイズの中にある「共通点が続編の存在する号」は、著者でもす
ぐには分かりませんでした。

 毎年の繰言になっていますが、まさに時が経つのは速く、中小零細企業の経
営の視点から、色々なネタを扱って来て、まるまる16年も経ってしまいました。
通常号も既に400話に近づいています。ブログ化したおかげで、以前書いたネ
タを何度も使い回してしまわないようきちんとチェックしながら書くことがで
きていますが、タイトルを見ただけでは、何について書いた号か分からないこ
とが時々あります。号数が増えてことと、年をとったことの両方が理由である
ように思います。

 世の中では、ポジティブ・シンキングが持て囃される風潮がありましたが、
漸くそれに対する批判的な考え方も萌芽してきたように感じています。第362
話『大人のサンタクロース』に書いた「引き寄せの法則」もそうですが、明る
く前向きに生きると人生がよくなるという教えに過剰に寄り掛かった経営者を
見かけると、何か違和感が込み上げて来ます。
 
 今号は『想像天命』と題して、「オレは最高のラッキーマンだ」と強調して
いる経営者を見て考えたことをまとめてみました。本文に対するご意見・ご感
想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業
日!!
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■第362話『大人のサンタクロース』 http://tales.msi-group.org/?p=742
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その379:想像天命

「え。ベストを挙げるんですか。いや。かなり難しいですよ。挙げたいものが
ありすぎて。そうですねぇ。振り返ってみると『幸福論』ですかね。椎名林檎
にも同名曲がありますけど、中島みゆきの『幸福論』は、当時20代の私には衝
撃の歌詞でしたね」。
 最近クライアントなった、今の私には珍しい年上の社長が、酒の席で私に尋
ねたのは中島みゆきで好きな曲。零細出版社を営む彼女は商売柄ソリアズを読
み込んで、中島みゆきを私がよく聞いていることに気づいたらしい。「普段は
ヘビメタ系の音楽が好きとか言っているのに、変わった組み合わせだよね。歌
詞が好きなんだよね」と彼女は言った。
 
『幸福論』は「今夜泣いている人は、僕一人ではないはずだ」から始まる。
「笑顔になるなら、見えない所にいてよ。妬ましくて貴方を恨みかけるから」、
「孤独が恐けりゃ誰にも会わないことね。いい人に見えるのは、他人だからよ
ね」と暗い世界観が広がっていく。サビでは「プラスマイナス幸せの在庫はい
くつ。誰が泣いて暮らせば僕は笑うだろう」と、容易に忘れることのできない
“幸福”の構造が語られる。世界に人々が持ち得る幸福の在庫は一定量しかな
い。誰かが幸福を手にすると、別の誰かから幸福は失われる。この曲を知った
とき、歌詞が頭の中で止め処なく反芻された。

「うわっ。それ、すごいね。そういう考え方って言うか、発想がすごいよね」
と60を過ぎた彼女はにこやかに言う。私も全くと頷いた。四方山話は昼間の仕
事の話に行き着いた。
「今日は、後学も兼ねて、ちょっと偉い先生のセミナーの運営を手伝ってきま
したよ。そこにいた参加者の、小さな不動産会社の社長が、妙に自己啓発系で、
『僕は「ついている、ついている」って思っていると、本当にいいことばかり
続くんですよ』とかさんざん繰り返すので、ウンザリきましたね」と私は昼間
に会った経営者の話をした。

「ついているって、思うと、どんどん良いことが重なるんです」と言うだけあ
って、お客様満足の向上など、経営の質的改善については全く意識していない
らしい。経営観が稚拙で、どう聞いても、何かが見落とされているように感じ
られる。

 好事にはマーフィーの法則そのままに、どこかで不調が芽吹き、凋落が忍び
寄ると、私なら疑う。この好況を作った誰かの“お蔭”に留意もすべきだと思
う。望ましい天命が次々訪れるなら人事はどこで尽くされたのか。「『オレは
最高のラッキーマン』と何度も言っていましたよ。自己暗示の類でしょうね」
と私は嘆息した。

 齢を重ねた女性社長は、皺の目立つ手の中のスマホを指差して言った。
「やっぱ、深遠な中島みゆきの歌の通り、他人様の幸福まで独り占めするよう
な話は、ダメでしょ。人に会っちゃったら、そう言うことを言わなければなら
ないぐらい孤独なんじゃない、きっと。この『幸福論』の歌詞の通りにさ」。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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11月5日(木)
公益社団法人荒川法人会青年部会様からのご依頼で
『自社の経営の差別化』の講演をしてまいりました!

「経営の差別化」は弊社の定番のテーマで、
弊社が提供するサービスの根幹に常に位置づけられています。

差別化は…
▲他社がしないことをすることでもなく…
▲経営規模が小さいからこその方法論を知らねばならず…
▲自社の中に見出した強みから作り出すものでもありません…

こんなことをまとめた説明が
弊社サイトにキッチリまとめられています。

或る(次号に登場する)経営コンサルタントから、
「こんなにネタを大盤振る舞いで公開してよいのか!」と驚かれた
充実の内容です。

中小零細企業の経営の差別化について、
3ページわたって続く、納得の解説。
是非ご一読になってみてください。
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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『税金を払う奴はバカ! 』 大村大次郎 著
■『アドラーに学ぶ部下育成の心理学』 小倉広 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第380話 『趣味と実益』 (11月25日発行) 
「趣味を仕事にする話」ではなく、「仕事の都合で制限される趣味」について、
或るコンサルタントとの会話から考えてみました。

(完)