378 互恵の形

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経営コラム SOLID AS FAITH 第378号
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 ご愛読ありがとうございます。第378話をお届けします。

 10月も終わりに近づきました。そして、当コラム読者の方々には恒例の周年
記念特別号の発行日が近づいてきています。今年はソリアズのタイトルだけに
フォーカスし、昨年とは打って変わって軽妙な読み物となった16周年記念特別
号を、予定通り10月31日に発行致します。ご期待下さい。

 11月の第一週に、弊社では珍しい講演のお仕事を頂戴しました。東京荒川区
の荒川法人会の青年部会様からのご依頼で、一時間ぐらいの時間枠で差別化に
ついてお話しすることとなりました。今年は1月に三重県の商工会からもご講
演依頼を賜りました。年に二回でも講演のお仕事のご依頼は、弊社にとっては
異例のハイペースです。詳細をPR欄に記載しました。ご覧下さい。
 
 今回の第378話は『互恵の形』と題して、中小企業の地域貢献について考え
てみました。大卒者の就活マニュアルには、“馬鹿に見られないための質問
集”のような形で乗っているのかもしれませんが、「御社では社会貢献はどの
ようにされていますか」と面接で尋ねる学生が一定割合存在します。

 そんな学生に私は、
「『今期は業績が悪かったから仕方ない』と課長から説明されて、前年より大
きく減ったボーナスを受け取った後に、テレビで流れる自社のCMで『当社は、
帯熱雨林での植樹を地球規模の取り組みとして数十億円かけてもう5年もの間
…』などと流れていたら、自分の会社を本当に好きになれるかな。中小企業で
は基本的に近い人への貢献を優先するのが当り前なんだが、地球規模に貢献し
たがる企業とどっちに入りたいと思うかな」
 と尋ねることにしています。

 中小零細企業での社会責任の考え方は第151話『閉鎖社会』でも取り上げて、
多数の共感の声を戴きました。今回はそれをマーケティング視点で再度考えて
みたいと思います。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴
したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その378:互恵の形

 高校を卒業してから二年間、北海道の田舎町の電話局で電話局内の設備保守
の仕事をしていた。或る日、何かでかい袋を持ってきてくれと、“線路”と呼
ばれる外の電話線をメンテナンスする部署の先輩が階下の駐車場脇で叫んでい
る。何が起きたのかと皆で各々に袋を持って玄関を出ると、梯子車二台に山盛
りに野菜が積まれていた。

 当時、ほとんどの電話機はダイヤル式の黒電話。公社である電話局側が“加
入者”にレンタルしていると言う扱いだったので、通常使用で故障すると修理
は全部無料だった。ところが、行った先の農家の主婦は、「こんな田舎まで来
て貰って、電話が直って助かるのに、タダで言い訳がない」と、作物を山盛り
にくれたのだと言う。

「夜に山道を走っていたら、飛び出てきた鹿を撥ねてしまったので」と、仕出
し弁当屋の部長が、鹿鍋を食べようと数十人の職員を夜に招いてくれたことも
ある。田舎の毎日には、貰い物が多く、GDPに算入されていない経済活動が数
多存在する。

「何か差別化の効いた販促活動を行なわないといけないのですが、予算も限ら
れているし、警察からの規制も色々とあるので、普通の企業のようなことがで
きなくて困りますよね」。
 訪問した零細パチンコ店の店長が嘆息している。車でたった15分のところ
に、周囲を広い駐車場で囲まれた、ネオンも華やかな大型店がもうすぐ開店す
る。パチンコの台数規模も各種店内設備もくらぶべくもない。警察からのご指
導で、パチコ店は客を公平に扱うこととなっている。「新聞の折込みチラシを
持参すると、粗品贈呈!」などのキャンペーンも、新聞をとっていない人には
不公平だということで実施できない。

「常連のお客さんがどこで飲み食いをし、どこで買物をしているか分かります
か」と私は店長に尋ねて、提案を続けた。
「店員たちにも、飲み会は全部それらの店を均等に使うようにさせましょう。
あとは、商圏範囲よりやや狭いぐらいの要所々々で、ゴミ拾いや清掃活動を徹
底的にやったり、防犯夜回りなどもどんどん手伝ったりしましょう。まだ何か
あるな。例えば、駐車場を盆踊りや学校のブラバンの練習などに貸し出しまし
ょう」。

 次々と変な思い付きを言い募る私に店長は呆れ顔だった。分かり易い仕掛け
や仕組みは、誰しもが思いつき、カネに物言わせて実現できる。しかし、金を
使わなくても、地元の見えない“日常”に溶け込めば、その中の流れに埋没し、
“あって当り前”の存在になれる。

「返報性の原理」で客を釣るのは、あまり好きな作戦ではない。ただ、多くの
人は自分を思い遣る人々に某かの礼をしたいと自然に思う。そんな働きかけの
多くは見えにくく計測しにくいが故に、経営論やマーケティング論の書籍で扱
われることがほとんどない。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

11月5日(木)
公益社団法人荒川法人会青年部会様からのご依頼で
『自社の経営の差別化』の講演をすることになりました!

■荒川法人会青年部会 11月全体研修会
『自社の経営の差別化』
日時:11月5日(木) 18:30?19:40
場所:荒川法人会館 会議室

当日は、1時間あまりの時間の中で、
マーケティング用語などを極力排除し、
いくつかの企業事例を重ねることで、
成功する中小零細企業の差別化について説明します!

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『インターネットは永遠にリアル社会を超えられない』 古谷経衡 著
■『自分を知り、自分を変える』 ティモシー・ウィルソン 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第379話 『想像天命』 (11月10日発行) 
自分のことを「ついている、ついている」と繰り返し言う自己啓発系の経営者
を見て、中島みゆきの『幸福論』の歌詞を思い出しました。お楽しみ下さい。

(完)