377 集団の平衡

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経営コラム SOLID AS FAITH 第377号
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 ご愛読ありがとうございます。第377話をお届けします。

 10月に入り、今年も残すところ3ヶ月なくなりました。弊社では個人や従業
員が数人ぐらいの組織からの案件がぽつぽつ増えてきています。フリーランス
やICと言った人々、さらに、そこから人を雇用して組織になった事業体。その
ような人々に事業の進め方の“常識”や“鉄則”はどの段階で誰が教えるべき
なのか、ぼんやり考えることがあります。こんなことも、今後の当コラムのネ
タに取り入れられて行く予定です。当面のところでは、第383話『小商いの姿』
もこのテーマを採用しています。

 毎年10月と言えば、当コラムの周年記念特別号発行の月です。1999年10月
31日に創刊された当コラムは今年で16周年を迎えます。当初100話ぐらいの
手持ちの原稿を出し終わったら終わりと思っていたメルマガですが、ブログに
までなって16周年を迎えることとなりました。長年の読者の皆様に心より御礼
申し上げます。PR欄に内容を簡単に紹介してありますので、ご笑覧ください。
 
 前回で当コラム創刊以来の最長シリーズ全7回の『これからの生活』が終了
しました。ジェンダー論的な評価も多分芳しくない内容で、炎上も覚悟してい
ましたが、常連読者の方々からは大好評でした。以前から会う方々から聞かれ
ることも多く、書きたいと思っていた、「人口減少」や「女性の社会進出」の
テーマを存分に書き連ねることができて、とても嬉しく思っています。特に子
供の教育に関しては、その後に読んだ『「学力」の経済学』で、私の主張が外
れていないことが確認できたことなど、書いてみて得るものが色々あったよう
に感じています。
 
 今号は7回シリーズの縛りがなくなって、打って変わって格差社会の将来に
ついての一考をまとめた内容です。格差は広がるばかりとの論調がよく聞きま
すが、長期スパンではどうもそうではなさそうであることについて、書きまと
めてみた内容です。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴
したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その377:集団の平衡

 映画『テルマエ・ロマエ』を娘と観た。現代日本で観た風呂やトイレにまつ
わる各種の技術を、ローマの技師ルシウスはローマ時代に再現する。人感セン
サーで自動的に開く便器の蓋は、黒人奴隷達をトイレの便器ごとに配置して開
閉させている。他の自動装置もほとんど同様で、ウォータースライダー裏の水
の汲み上げまで大量の奴隷が動員されて実現されている。

 建築・土木技術では今に残る歴史的建造物を数々残したローマ帝国で、生産
技術など他の分野の進歩が伴わなかったのは、奴隷制度が最も大きな原因だと
『日本の自殺』で読んだ。圧倒的なコスト・パフォーマンスの労働力が目の前
に溢れているときに、誰がそれをわざわざ機械化して効率化したいと考えるだ
ろう。

 多くの奴隷は単純労働に勤しんでいた訳ではない。産業のほとんどの分野で
同じ仕事を一生続ける奴隷達のノウハウは磨かれスキルは蓄積されていく。そ
の奴隷達の供給が経済の拡大に追いつかなくなったときに、奴隷達の報酬は急
騰し、ローマ経済は崩壊したと説明されていた。

 格差論が喧しい。格差の下側の人間は、その考え方や行動指針故にどんどん
下へ潜り込み、格差の上側の人間は持てる資産を運用してどんどん儲けてさら
に上へ昇る。こうして格差は広がって行くのだという。数十年スパンなら確か
にそうだろうと思う。大好きな名著『下流志向』を読んでも、格差拡大の構造
は説明されていても、圧縮の要素は登場しない。格差についての幾多の書籍も、
放置すると格差はどんどん広がるので問題だと喚きたてるが、その対策は書か
れていても、お粗末なものが多い。
 
 スペイン発祥のことわざ「ゆりかごを揺らす手が世界を支配する」は、元来
母の偉大さを述べたものではない。欧米の貴族が、母乳をくれる乳母から家庭
教師、侍医、そして日常の世話係など、膨大な数の家内奴隷達によって育てら
れていたことを指している。貴族達は、奴隷の中に蓄積された高度な技術がな
くては自分自身が一日たりとも暮らしていけないことを間違いなく理解してい
る。
 
 格差の下側に存在する人々が困窮し、技術の蓄積どころか消費も満足に行え
なくなったとき、何が起こるのか。歴史の中に既に答えはあると多くの書籍は
指摘する。奴隷達は自ら蜂起したり、権利主張を集団でしたりするまでもない。
システム自体が永らく格差の中に奴隷達を置いておくことができないのだ。

 女性、高齢者、非正規社員、障害者。差別に喘いでいる人々。格差の拡大で
困窮する人々。差別され理不尽に喘いでいるとされる人々の抱える課題と、彼
らを抱える社会が抱える課題。二つ並べて世紀スパンで眺めたなら、ジワリと
互いに緩和しあうらしい。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

16周年記念特別号、いよいよ10月31日(土)午前8時発行!

全原稿を組み合わせてみると、
本当にメルマガとして出せるのかどうか。
疑わしくさえなってくる大長編。

ソリアズのタイトルだけにフォーカスした各種の話題を
盛りだくさんにお届け致します。

 1.「ソリアズ・タイトルの傾向分析」
 2.「ソリアズ・タイトルの付け方分析」
 3.「タイトル付けの王道からみるソリアズ・タイトルの評価」
 4.「最短・最長のソリアズ・タイトル」
 5.「“イミフ・ソリアズ・タイトル”座談会」
 6.「帰ってきた“ソリアズ・タイトル ベスト10”」
 7.「ソリアズ・タイトル オタク度検定」

長年の読者の方であれば、笑って読める軽い内容です。
ただし、長いです。ご期待ください。

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『税金を払う奴はバカ! 』 大村大次郎 著
■『アドラーに学ぶ部下育成の心理学』 小倉広 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第378話 『互恵の形』 (10月25日発行) 
 地方経済に限らず、社会には互助・互恵の形で統計に捕捉されていない経済
活動が多々存在します。中小零細企業の互恵の形を考えてみました。

(完)