『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』

 9月の最終日の夜11時過ぎにスタートする回をバルト9で観てきました。水曜日の深夜、小さなシアターに観客は30人ぐらいいました。さすが人気作品の続編です。封切から既に3週間近く。それでも、バルト9で一日に7回ぐらいの上映をしていたと思います。最近でもあまり見ない人気作なのではないかと思われます。

 この作品を観ることにして観始めたのは9月ですが、観終わったのは10月で、このブログの感想はタイマー設定してでも、9月アップ分に入れようかと考え、悩みました。逡巡の末、作品を観終わった10月の方でカウントすることとしました。9月に観始めて10月に観終るという、月を跨いだ映画鑑賞は非常に稀です。

 観客は20代ぐらいに見える男女ばかりで、私ぐらいの年齢層は片手程度しかいなかったように思います。カップルもいれば、同性の数人連れも居ました。

 たったの88分しかない続編映画です。第一作も96分しかない映画でちょっと驚きましたが、さらに短くなっています。内容も観てみて分かりましたが、前作で事実上世界観とストーリーの大半を語りつくしていて、ダラダラとさせず、クライマックスと幾つもの謎解きを一気に凝縮して提示したのが続編なのだと感じました。

 今回は巨人に対する人間たちの絶望的抵抗の姿はあまり描かれず、謎解きのための人間社会描写に重点が置かれています。なぜエレンとかいう青年だけは巨人化できたのか。巨人は元々何であるのか。なぜ巨人は体に損傷を受けてもすぐ復活するのか。その謎はどの程度人間側が知っているのか。などなど、色々な謎が(原作との関係性を(原作を読んでいない)私は全く知りませんが)一気に解けてしまいます。凝縮された時間の中で、早いテンポでそれなりにきちんと整合性のある謎解きなので、爽快感があります。

 前作のトレーラーを観る以前から、ずっと気になっていた謎を前作の感想で私は…

「壁を破ることに成功した超大型巨人は、徐々に壁の上に顔を出しますが、それが壁を登ってきているということではないようですから、もともと壁の向こう側から覗ける立ち位置にいることになります。それなのに、徐々に顔が出てくるというのであれば、遠くから壁際に来て一旦しゃがみこんでいて、それからぬっと顔を出したことになるのではないかと思われます。なぜ、あの超大型巨人はそんなことをしなくてはならないのか分かりかねます」

 と書いていますが、これも、知能を持った巨人は劇中のエレン同様に、人間による研究結果の“次世代巨人”で、通常の人間から“変身”してなれるものであることが分かったので、すっきり謎が解けました。人間サイズから変身して超大型巨人になるのであれば、確かに徐々に壁の上に頭を出してくることになります。

 それ以前に、政府側が実は人間を巨人化する技術の研究開発を進める組織で、映画の主人公達などの壁に囲われた世界の住人こそが、政府の実験モルモットであったという構図をさらっと突き付けてくる展開は、かなり気に入りました。

 特に、自らも知性を持った巨人に変身できるシキシマが、政府の施設の部屋でエレンに見せる過去の歴史記録映像は、とても上手くできていて、よくできた『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』か何かを観ているようでした。中でも、コンビニのど真ん中で巨大化してしまう女子学生や、高層マンションの一室のパーティーか何かの記録画像のカメラが窓の外にパンしたら、(多分、パーティーの参加者であるように見える)若い男性が巨人となって立って途方に暮れている場面などは、何か妙にリアルでした。

 この手の歴史映像の謎解きだけで、全体の半分を占めても面白い作品になったのではないかと思えるほどです。

 前作を観た数日後、マンション至近のセブンイレブンに行ったら、まさに私のような人間をターゲットとした『進撃の巨人』の初心者用特別別冊マンガが売られていました。コミックの第一巻から第三巻ぐらいまでの内容を抜粋して作った、テレビ番組で言うところの“総集編”の初期ストーリー限定バージョンと言った感じです。つい、買って読み込んでみて、「ああ、コミックの世界は複雑だなぁ」と思っていました。それでも、この作品の持つ魅力について、大分理解が進んだように思います。

 前作では、登場人物が非常に多く、一人ひとりが、自分の役の人格を十分表現しきらないうちに、速いペースで惨たらしい死を迎えていくので、以前に観た映画作品でのその俳優をイメージしてしまって、どう観ても人間ドラマには感じられませんでした。今作は、生き延びた登場人物もかなり絞り込まれていて、巨人との戦闘シーン(または巨人同士の戦闘シーン)は限られているので、それなりに各々のキャラを観ることができました。

 特に、キャラの理解としては、アルミンの知性が、コミックの方が実写映画より強調されているのが印象的でした。ミカサは端っから強く生きることを運命づけられていたのも、実写映画とは大きく異なります。これでは、原作ファンが観たら、確かに別作品と理解すべきレベルだと思いました。

 しかし、やはり、前作に続いて、石原さとみの魅力が際立っています。ネットで「石原さとみ」の画像検索をしてみて、過去に今回のハンジのような役柄をしたような形跡は全く見当たりません。ゴーグルを常にしている役柄ですが、素顔を見ることができないこともあって、到底、石原さとみに見えないのです。

 考えてみると、マッド・サイエンティスト風の女性キャラと言うのは、あまり他作品でも見たことがないような気がします。赤木リツコだって、特にマッドな雰囲気ではありません。乗っている軍用車両から遠くに巨人が数体見つかり、「10時の方向、通常型の巨人、5、6、7体発見!」などと聞いても、通常型であることや特に攻撃しようと迫ってくる訳でもないことに「チッ」と舌打ちする、ぶっ飛びようや、巨人がどれだけ迫って来ようと、「おお?。攻撃を防いだ!知性がある!」などと馬鹿でかい声で大騒ぎする非常識さが、強烈に印象に残ります。

 私の知る中で、科学技術に対する意識の方向性で近いのは、『BLEACH』の涅マユリかと思いますが、それを外見も十分に魅力的な女性のキャラとして成立しているところが、注目に値します。

 前作とセットになって一本と言う流れがきちんと成立していますが、前作とはかなり色合いの違う作品です。爽快感を伴う謎解きと石原さとみの驚愕の好演で、DVDは勿論買いです。

追記:
 エンドロールの後に、政府側の人間の機会を通したような変な会話の声が少々流れ、シキシマが覆したかった体制が実感されます。この意味深い場面を見逃して帰っている客が10人近くいたのは残念です。