369 豊潤な時間

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経営コラム SOLID AS FAITH 第369号
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 ご愛読ありがとうございます。第369話をお届けします。

 PR欄でも紹介致しましたが、次号第370話から全7回に渡る、当コラム創刊
以来最長のシリーズ『これからの生活』が始まります。今までの最長シリーズ
は、200話発行記念特別号として発行された全6回の『斜陽の樹影』でしたが、
今回は通常号のシリーズとしてその記録を塗り替えます。

 ブログの方で当コラムをお読み戴いている方が徐々に増えるとともに、メル
マガ発行部数は緩やかに減少して来ました。広く浅く自分のブランドを告知す
る、経営コンサルタント一般のスタイルとは真逆に、狭く深く知って戴いた少
数の方々とのお付き合いするスタイルですので、数字の減少は気になっていま
せん。むしろ、今までは文章にして来なかった、顰蹙を買うリスクのある言説
を、このコラムの本来の主旨に沿って公開し易くなったものと感じています。

 シリーズ『これからの生活』は、人口減の日本社会について話題になるたび
に、私が考えてきた、世の中の一般論とは隔たりのある言説をまとめた内容で
す。お楽しみ戴けたら幸いです。

 今号は『豊潤な時間』と題して、所謂“時間節約型サービス”の効用につい
て考えてみました。或る事柄の関与時間が減った場合、浮いた分はより価値あ
ることに費やされるのでしょうか。“時間節約型サービス”そのものの価値の
決め方に関して逡巡してみた内容です。結論に旨く至っていませんが、是非一
緒に御一考下さい。

 ほぼ同じ内容を具体的な日常の場面から考えた第291話『懊悩の翌日』も御
併読戴けると、よりお楽しみいただけるものと思います。本文に対するご意見
・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は
5営業日!!
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その369:豊潤な時間

 クレジット・カードの明細書が来ると、支払の際に渡された控えの紙の束を
取り出して、支払内容をチェックすることにしている。タクシーに乗っている
回数が多い。2500円以内ぐらいの金額が半数を超えている。

 自動車学校のコース内で二度も人身事故を起こしたことがある私には、かな
り自動車運転に向かない人間だという自負がある。だから自家用車を持ったの
は、人間より牛が多いような、公共交通機関がほとんどない田舎町で暮らした、
米国留学時代だけ。「自家用車を持つことに比べたら、月5万ぐらいまでは絶
対に安い」との口実が常に頭の中にある。
 
 私は予定を立てるのが全く面倒で、素の私を知る人はほぼ総て、「こんな面
倒臭がりで、やる気のない人間は見たことがない」と私を評する。だから、ア
ポに行こうとしても、何か想定外のやることができて、時間が押す。しかし、
クライアントの心象勝負の個人事業主として、遅刻は極めて望ましくない。畢
竟、車道脇で手を挙げる。

「地下鉄は速いけれども、その場から駅に行き、地下まで降りて、電車を待つ
時間が長い。目的の駅で降りても、地上に上がり、さらに建物に辿り着くまで、
また時間がかかる」と言うのも、便利な別の言い訳。「市川さんは、クライア
ントさんからの信頼を大事にしているってことですよ」と慰めてくださる方も
居るが、人間を観察して絆すのが商売の私は、自分のぐうたらさをよく認識し
ている。「仕事ができない人間なのに、“クライアントさんからの信頼を大事
にし”なければならない」のが実態だと確信している。

「アマゾン」と聞くと、今でも『仮面ライダーアマゾン』しか想起しない私に、
「アマゾンのお勧めって、なんかちょっとイラっと来るよね」と、取引業者さ
んが打ち合わせの後に言う。時代遅れ甚だしい私に、彼女はアマゾンの機能を
説明してくれた。関心が湧いて、アマゾンの事業コンセプトを尋ねると、
「ユーザーの“時間って言う代えの効かない資源”の節約だと、社長がどこか
のスピーチで言ってたような気がする」との答え。

 確かに、家事代行、システム手帳、パソコンソフト。セールス・ツールには、
お定まりの「時間節約」と言う言葉が踊っている。取り戻すことができない時
間資源の価値は或る意味無限大。それが稼ぎ直すことのできるカネを幾ばくか
出せば手に入る。どんな時間節約のサービスも投資効果無限大になる構造。購
買まではこの構造認識は確からしい。

 問題は、浮いた時間の使い道だろう。カネを投じて時間枠Aを時間枠Bと交
換したのだから、各々“無限価値”のはずの時間枠AとBの価値には、投じた
カネの価値を超える差分が生じなくては、割に合わない。そもそも、時間の価
値はどう決定されるのか。「無用の用」は時間にも適用できそうではないか。
時間節約は結構哲学的問題かもしれない。

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■ 第291話『懊悩の翌日』 http://tales.msi-group.org/?p=481
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

次号、第370話から開始。
当コラム創刊以来最長の全7話シリーズ『これからの生活』

■シリーズ第一弾 第370話『無敵のスペック』
 子育て時点から決まる“売れる人材”の資質を考えてみました。

■シリーズ第二弾 第371話『労働主体形成法』
「若手社員は自営業の子に限る」と言う経営者の意見を考えてみました。

■シリーズ第三弾 第372話『高リターンの追求』
 世の中の数多の投資話より確実に高利回りな投資「子育て」を考えます。

■シリーズ第四弾 第373話『あらぬ方向』
 人口減社会の対策の一つは「女性の社会進出」と言う説を検証してみます。

■シリーズ第五弾 第374話『自己実現の余地』
 全国で進行する人口減。その原因を自己実現欲求と見立ててみました。

■シリーズ第六弾 第375話『遺伝子の教え』
 女性活用が叫ばれる中、女性の動機付け策のあり方を一考しました。

■シリーズ第七弾 第376話『続・面白くなる設定』
 第27話『面白くなる設定』から約15年。今一度中身を考えてみます。

奇論。暴論。との評価を覚悟して書いてみましたが、
事前に読んでいただいた方々からは意外に高評価なので、
堂々連載開始です。ご期待下さい。
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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『「反日」の構造…』 西村幸祐 著
■『もじれる社会』 本田 由紀 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第370話 『無敵のスペック』 シリーズ『これからの生活』(1)
 (6月25日発行) 
 当コラム創刊以来、最長の全7回シリーズ『これからの生活』の開始です。
シリーズ全体で、政府が政策を進めるという少子化や女性活用について、中小
零細企業経営の視点も絡めながら考えてみます。

(完)