368 仮称「ニーズ」

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経営コラム SOLID AS FAITH 第368号
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 ご愛読ありがとうございます。第368話をお届けします。

 有難いことに書き物の仕事や調査の仕事など、通常案件とは異なるタイプの
幾つかの案件が重なって、ご発注戴いた方々にご迷惑を掛けないようにと、あ
たふたと毎日を過ごしております。ダッと駆け込んでは見てくることから『脱
兎見!』と題した映画館での映画鑑賞感想ブログも、更新頻度が落ちるほどに
なって参りました。

 気分転換には週一ぐらいの頻度で、昨年買った折畳み自転車を広げて、深夜
に新宿界隈を走り回ってみています。大久保、高田馬場、歌舞伎町、新宿二丁
目など、人々の様々な欲望の大パノラマは飽きが来ません。

 本年10月末日発行予定の当コラムの16周年記念特別号のテーマが、漸く決
まりました。久々にお楽しみ企画に舵を切ってみた内容です。PR欄にて紹介し
ておりますので、ご一読下さい。

 今回の号は、『仮称「ニーズ」』と題して、マーケティング論で言われる
「ニーズ」について、弊社代表市川の考え方に踏み入ってみた内容です。
「ニーズ」と言う言葉をきちんと掘り下げることなく、「シーズ」だの「ウォ
ンツ」だのを持ち出しては、瑣末な定義の相違を議論することを、弊社では全
く行ないません。そのようなことをしても、具体的な企画立案が実効上改善す
ることはほぼないものと考えられるからです。

 今回の号では構造主義まで持ち出して、言及はしていないものの“適応的無
意識”まで意識しながら、1900年代中盤に生まれたマーケティング論の「ニー
ズ」が何であったのかに迫ってみます。お楽しみ戴けましたら幸いです。本文
に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返
事の目標納期は5営業日!!
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その368:仮称「ニーズ」

 私は定番のマーケティングの説明で、ニーズの説明に時間をたっぷりかける
ことにしている。ニーズの理解が確実にならないと、4Pも4Cも、次々と現れ
るナンチャラ・マーケティングだの、ホンチャラ戦略だのも、無意味になると
思っている。

「ニーズって、マズローの欲求五段階説でも何でもいいんですが、ああいう形
で類型化された本質的なニーズだと思ってください。それで、仮説として、人
間は特定のニーズに支配され続けるものだと思ってください。たとえば、承認
されたいと言う欲求と言うか、ニーズを常時持っているサラリーマンのダンナ
を考えてみましょう。

 朝起きて、彼が『おはよう』と言っても、嫁さんも小学生の子供も、テレビ
の画面を見ながら『おはよう』と返すだけだと、ニーズが満たされません。駅
のホームで電車に乗る時も荷物のようにやたら押されると、乗客として承認さ
れていない気分になります。出社して、部下が向こうから挨拶してこなかった
り、自分が提出した書類に上司が眼を通すこともなかったら、またもや承認の
ニーズが充足しない…。こんな感じがニーズの様子です。
 
 そんな彼に、文房具屋は『ダンナ、この万年筆を持つと、会社の人が一目置
きまっせ』と迫り、花屋は『ダンナ、ちょっと気合の入った花束をぽんと渡す
と奥さんはイチコロでっせ』と言い寄ると言う感じ。これが商品によってニー
ズを満たすと言うことです。承認ニーズを満たす目的で、いろんなものが売れ
ます。別にサラリーマンじゃなくても、承認ニーズが共通で同じ用途が想定さ
れれば、他のターゲットを想定しても、同じです」。
 落語のように私が語ると、勉強会のメンバーは笑って聞いている。

 飲み屋で新規事業の話を聞いて居たら、どこかの会社の営業課長だと言う男
が容喙した。「顧客のターゲットを絞り込むのは時代遅れだ」と最近読んだ本
に書いてあったと、したり顔で語る。人間の行動は時と共に移ろうので、モデ
ルを想定しても、その通りに行動しないと言うのが根拠らしい。「ムービング
・ターゲット」がどうのと、頻りに言う。

「構造主義って知ってますか。そういう発想が大事だと私は思うんですよ。米
国で5万人の移動のエントロピーを調査したら、80%以上の精度で居場所が当
てられたらしいです。人間の行動に意志はほとんど関係ないんです。人を突き
動かす要因の堆積結果が“狙い”なんですよ。それを昔は大雑把に“ニーズ”
と呼んだんですよ。経済学でさえ、経済人仮説を捨てて行動経済学が流行る時
代ですよ。その“最近の本”の著者は、どうも人間観察も“最近の勉強”もし
ないで本を書くんですね」と私は面倒臭げに言い放って笑った。

 大学時代に習ったマッカーシーの古典的マーケティング論は、マーケティン
グを“特定のニーズを充足することによって継続的な利益を生み出す総ての行
為”と定義する。特定の人物層ではなく特定のニーズ。今尚全く褪色しないマ
ッカーシーの慧眼に感嘆する。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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今年10月末日発行予定!
「16周年記念特別号」の企画がとうとう決定しました!

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今回はなんと、そのタイトルだけにフォーカスして、
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「17周年記念特別号」、そして、「400話発行記念特別号」の企画は
まだまだ募集しています。

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メールにてこっそりご一報ください!
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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『分校の人たち 1』 山本直樹 著
■『「ニッポン社会」入門…』 コリン・ジョイス 著
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次号予告:
 第369話 『豊潤な時間』 (6月10日発行) 
 家事代行、システム手帳、パソコンソフトなど、時間の節約を謳う商品やサ
ービスが増えているように思います。その効果・効能について考えてみました。

(完)