354 ベイジアン・セオリー

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経営コラム SOLID AS FAITH 第354号
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 ご愛読ありがとうございます。第354話をお届けします。

 過去の14回分の周年記念特別号や100話、200話、300話発行記念特別号を
振り返って比較してみても、トップクラスの内容の濃さ。試し読みをして戴い
た方々から、口々に「これ、難しいね」と嘆息される15周年記念特別号
『Congenital Auto-cruisers』も、あと6日で発行となりました。既にまぐま
ぐの発行システムにタイマー・セットを終えて、安堵しております。

 もともと、14周年記念特別号で好きな著者を10人列記していながら、詳しく
記述できなかった5人をうまく組み合わせて文章にしようと言う試みでしたが、
自分の当初想定よりもうまく行きました。その結果、今まで当コラムの主旨で
一般の経営論や常識論と異なると指摘されていた部分が、実は無意識の存在と
その働きをなんとなく前提としていたことによるものと、まあまあすんなり説
明できました。9章もの文章を鎖のようにつなぎ合わせ、一本の流れにまとめて
みましたので、是非お楽しみ下さい。
 
 さて、今号は『ベイジアン・セオリー』と題して、細かな観察結果を積み重
ねて、購買者の仮説的モデル像を形成していくことによるマーケティング・リ
サーチのあり方が、大手企業のマーケティング・マネージャーが理解できなか
った話について、少々考えてみました。本文に対するご意見・ご感想をお待ち
しております。頂戴したご感想などへの
お返事の目標納期は5営業日!!
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その354:ベイジアン・セオリー

 クライアントのインド占星術師のお客のメインは30代前半の女性。二週間に
一度ほど、リフレクソロジーや美容院と同程度の料金を支払って、自分の運勢
を聞きに来る。実家は遠く、一人暮らしをしているか、シェアハウス住まい。
派遣社員かアルバイト、契約社員など、非正規労働者がほとんど。学歴は高卒
か専門卒。
 
 運勢を変える色を意識し、運勢を変える石でできたアクセサリーを身につけ
ている。多くの場合、交際相手はいない。いても、長続きせずに終わるか、些
細なことで諍いが起きやすい。状況に変化が起きるたびに、私のクライアント
に相談を持ちかける。彼女達のそんな相談をどのように有償の案件に変えてい
くかも、事業企画の要の部分。
 
 クライアントがマーケティングを考える時、私もそのお客がどのような人々
で、どのようなニーズを持つ人々なのか、スラスラ言えるぐらいに熟知できる
よう努力する。インド占星術の門を敲く彼女達は、今まで私の周辺にあまり存
在しなかった人々。彼女達が屯する喫茶店でPCを広げ仕事をしつつ、彼女達
の話題に耳を傾ける。彼女達が読む雑誌を買い求め、特集の話題、読者投稿欄
に寄せられる悩みをリストアップしてみる。彼女達が見るポータル・サイトを
見て、広告商品とそのキャッチ・コピーをメモる。彼女達が行くパワースポッ
トにも足を運び、彼女達の間で話題の映画も見、携帯小説も読む。
 
 東日本大震災の直後の経済の沈滞で、非正規社員の仕事が激減し、彼女達の
経済状態は急激に悪化した。水商売で稼ぐほどのコミュニケーション能力が不
足している彼女達の一部は、風俗業で糊口を凌ぎ始めたという。彼女達の想い
に強い関心が湧いて、クライアントが止めなければ、その風俗業も体験したい
ぐらいに考えた。
 
 北千住駅の二階出口の前に広がる広場の端に立って、ロータリーを見下ろす。
下のスーパーの入口脇にある、アルバイト求人のフリーペーパーのラックを見
つめていたら、国際的規模の某自動車メーカーの外国人マネージャーが、飲み
会の約束に現れた。何を見ていたか尋ねるので、「求人誌を取る人々の目線と
挙動」と答えたら、目を丸くして驚かれた。
 
 飲んでいると、彼の職場のマーケティング・リサーチの話になった。若手向
けの車を開発し、若手向けに売るために、若い社員の重点採用と集中配属が重
要だと会議で論じられているらしい。彼が「リサーチ・エージェントに比べて、
遥かにプラクティカルだ」と絶賛する手法を聞いて、私はそれらの若手社員が、
本当に開発する車の購買者と同様のニーズを持つのか否か尋ねてみた。彼は意
味が分からなかったらしく、「購買層の意見を反映したマーケティング手法に
問題がある訳がない」と答えた。
 
 時間はあるものの、インド占星術師のクライアントの話をするべきかどうか、
英語力の兼ね合いで躊躇した。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

いよいよ今月末日発行!
15周年記念特別号
『Congenital Auto-cruisers(先天的自動操縦装置)』

人に意志や判断能力はあるのか。
人にとって学習とは何であるのか。
人は努力によって変わり得るのか。

そんなことを“無意識の塊である人間”の観点から検証し、
中小零細企業経営のあり方にも言及してみます。

参考書籍・言及書籍タイトル数、なんと21!
一見つながりのない書籍の内容が、
ガチっと組み合わさるカタルシス!
ご期待下さい。

■第1章:忘れがたい書籍(1) =学びの世界観=
■第2章:忘れがたい書籍(2) =人生の構造=
■第3章:構造主義の悦楽
■第4章:受動意識仮説の衝撃
■第5章:仮説の検証
■第6章:催眠技術との出会い
■第7章:催眠領域の拡張
■第8章:組織経営の再構築
■第9章:応用制御作業

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『オタクで女の子な国のモノづくり 』 川口盛之助 著
■『不愉快なことには理由がある』 橘玲 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
 bizcom@msi-group.org
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インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して
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毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まずもうすぐまる15年。

マガジンID:0000019921 (ナント、たった5ケタ)
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次号予告:
 第355話 『分別づくり』 (11月10日発行) 
 問題を日常の中で意識するために“見える化”と言う手法をとることがあり
ます。けれども、それに先立って、問題を認識するための“定義”が必要であ
ることに思い至った話です。ご期待下さい。

(完)