344 開口譚

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経営コラム SOLID AS FAITH 第344号
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 ご愛読ありがとうございます。第344話をお届けします。

 キミカン(『君と僕の完璧な世界 有村千佳』)の制作で、人生初の脚本書
きを無事に終わらせてから、何か堰を切ったように、文章書きの仕事が増えて
います。チーフ・エヴァンジェリストと言う珍しい肩書きを頂戴している、エ
ンタテインメントビジネス総合研究所様でも、毎週発行されるファクスDMの原
稿書きのご依頼を時々頂戴しています。PR欄に紹介したかつてない就活サイト
『逆襲の就活』のコンテンツも全編書き上げましたし、その販促目的で発行さ
れる電子書籍のアウトラインも構成しました。そして、今度は社員教育用の小
冊子の原稿作成を承りました。
 
 異業種交流会の運営方法の評価レポートから、社員研修用小冊子原稿、デー
トスポットの案内文、就活指南の読み物、パチンコ業界のニューズレターに、
中小企業向け経営方針提言レポート、そして、恋愛ドラマ脚本まで。それほど
の調査や準備なくガンガン書くという意味では、経営コンサルタントやシンク
タンク、調査会社より、寧ろ、編集プロダクションに近い位置付けのように感
じます。文章制作は、全体構成とラフドラフトまでに留めて、名前が外に出な
いようにして納品させて戴いています。“編プロ”ほど文章のレベルが高くあ
りませんが、請負業者としての位置付けは光栄です。
 
 勉強会や座談会などの運営企画を立案しては、自作自演をするような請負仕
事が多かったのですが、その場と時間に拘束されることもなく、経営コンサル
タントのように自分の名前をブランド化するのでもなく、稼ぐ選択肢が増えた
ことを、とても嬉しく思っています。
 
 今回は『開口譚』と題して、プロジェクトに近い形の勉強会の成果物を、敢
えて完結しない状態にしてしまうように判断した顛末を一つの話にまとめてみ
たものです。よくプロジェクトはゴールが見えなくては参加者のモチベーショ
ンが下がると言います。しかし、場合によっては、完結も区切りも選ばない選
択肢もあるのではないかとも考えられます。それでは、本文に対するご意見・
ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5
営業日!!

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その344:開口譚

 町工場のプロジェクトで進まなくなってきた議論を部屋の隅の席から眺めて
いた。たった10人あまりの、年齢もバックグラウンドも全くバラバラな中途採
用社員が、所狭しと並んだ各種の装置の担当にして、各々が操作方法だけでは
なく装置の加工上の癖まで理解している。深く理解した結果は暗黙知として堆
積する。知識や技能の標準化など全く省みられなかった組織。社長の決断で、
装置毎の操作方法を基礎から応用へと記述して行き、スキルマップを作成し、
技術や知識の相互理解を促進することとなった。
 
 スキルマップの「柱」と呼ばれる作業分類が、各自が持つ書類上にずらりと
並んでいる。柱の下部には作業項目がぎっちり書き込まれている。装置毎の基
礎作業をレベル1と名付け、記述は終わったという。今後は、まとめたレベル
1の作業を相互に教え合うべきだと進行役の課長が言う。レベル1の作業は本
当の基礎レベルであって、相互理解や技術の標準化などと言う段階には程遠い。
記述作業をこのまま続けて、先にレベル2も明確にすべきだと係長が容喙する。
プロジェクト作業の時間は非常に限られている。両方を手掛けることはできな
い。おい、早く何とかしろと社長の私への目線が語っている。

 休憩と宣言したら、部屋に残った係長が詰め寄ってきた。
「市川さん。まだ柱は下の項目をほんのちょっと埋めてみただけに過ぎないん
ですよ。こんな程度のことをお互いに覚えたって、技術の標準化といえるレベ
ルになんて到底到達しません。まず、スキルマップを相応の段階まで書き込ん
で完成させるべきなんです。それが市川さんの言う暗黙知の形式知への変換と
言うことじゃないですか」。

「書き出すとキリがなくて、自分のやっている仕事の複雑さに気付かされた」。
「パソコンで資料をまとめろと言われるのが辛かった。家で娘に教えて貰った」。
「自分の仕事も奥が深いと思った。隣の奴のまで覚えられるのかとても不安だ」。
「自分でできても、これを人に教えるとなると、とても難しいだろうと思った」。
 戻ってきたプロジェクトメンバー達に向かって、今迄の作業の感想を言って
貰った。素朴で素直な言葉に、普段の仕事が突如手強い勉強ネタに変貌したこ
とが見て取れる。

「レベル1をやってみて、皆さんができると思っていた装置操作は、きちんと
分かってもいなければ、図にまとめられもしない。話して教えることも満足に
できないようなもんと分かりました。自分でやってみても戸惑うほどなんです
から、他人から質問攻めにあったら、皆さんは否応なくもっと深く自分の仕事
を理解するでしょう。良いんじゃないですか。レベル1を先ず教え合えば。皆
で徹底して教えあったら、レベル2なんか馬鹿丁寧に書き込まなくても、技術
の標準化がどんどん進む人間関係になるかもしれませんよ。今皆さんが教えあ
ったらどうなるかについて考えていることなど、ガキの想像のレベルでしかあ
りません。皆さんの認識はどんどん成長していくんですから。そう。際限なく」。
 唖然とする全員を前に、ヘラヘラ笑いながら私は言った。
 
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

弊社の提案から、
株式会社KIH Partners様にて弊社代表の市川が嘱託になり、
進めてきたプロジェクトが始まりました。

プロジェクトの目的は、
日本の各種業界団体の紹介と活用を振興することです。

まずは各種業界団体のDBをネット上に上げました。
約2000の業界団体を紹介する類例ない業界団体DBです!

英語版と日本語版があり、
日本語版は大学卒業予定の就活学生向けの
他例のない、業界研究を軸にした“結果が出る”就活の
詳細解説サイトとなりました。

株式会社KIH Partners 日本語版 業界団体DB
『逆襲の就活』
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新しい就活の方法に取り組む女子大生を主人公にした物語が、
電子書籍で近日中に発行されます。
詳細は、改めて報告致します。
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ご連絡は下のメールアドレスまで。
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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『出会い系のシングルマザーたち…』 鈴木 大介 著
■『不変のマーケティング』 神田昌典 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
 bizcom@msi-group.org
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次号予告:
 第345話 『原材料表示』 (6月10日発行) 
 最近、勉強会の若い参加者の方々に、「人間の仕事観やスキル体系は大抵35
歳までに決まってしまう」などと言うことが多くなりました。それまでの間に、
自分には何を詰め込んでおいたのか。一考してみました。

(完)