『そらのおとしものFinal 永遠の私の鳥籠(エターナルマイマスター)』

通称「そらおと」の映画第二弾を観てきました。封切からまだ一週間経っていないGWの中間に位置する平日の昼間の回です。明治通り沿いのミニシアターに行ってきました。全国でもたった八館でしかやっていず、23区内ではたった二ヶ所でしかやっていない、この映画はとても短く、約一時間しかありません。目一杯施設を稼動していると言った感じで、一日に六回も上映しています。

2011年の6月にやはりこの映画館で上映されていた『劇場版そらのおとしもの 時計じかけの哀女神(エンジェロイド)』を、当時、今流行っていると言うアニメもたまには観てみようかと、全く何の予備知識もなく観に行ったのが、総ての始まりでした。ジャンル不明のハチャメチャなブレンド感の面白さにすぐはまり、先ずはDVDのシリーズを入手して全部観ました。娘も一緒に観て、あっと言う間にファンになりました。自分が観た劇場版のDVDもすぐに入手し、娘に見せました。コミックを娘のサンタのプレゼントに指定して、その時点での全巻を揃え、これも繰り返し読みました。そうこうするうちに、DVDのシリーズ第二弾である『そらのおとしもの フォルテ』が発売され、これも全部観ました。

半年ほど前、コミックの帯には「DVDシリーズの第三弾始動中」のような告知があり、娘と「早く発売にならないか」と言っていましたが、先々月、コミックが「次巻、完結」と宣言しました。先月最終巻が発売され、総ての謎は解け、かなり重たい教訓を提示して、ストーリーは完結しました。世の中では長く続いたエヴァのコミックがついに完結する予定との発表があったと騒がれていますが、私と娘には「そらおと」の完結の方が、心に重たく圧し掛かってくる出来事でした。

その「そらおと」の久々の映画が上映されるということになりましたが、北海道では一館も上映館がなく、娘は「DVDが出るまで待つか」と言っていました。私と性格が似ている娘は、ネタバレ情報を聞いても全く気にならないどころか楽しめるぐらいなので、私は一足先に劇場版を観に行くことにしました。

上映時間20分ほど前に映画館に着きましたが、「そらおと」のポスターやPOP、雑誌記事の拡大コピーなどが壁にも柱にも貼り付けられ、BGMには、「そらおと」専属アーティストである blue drops の曲が穏やかに流れ、さながら「そらおと」博物館の如くでした。グッズも各種用意されていました。さらに、上映期間が前半と後半に分けられ、前半に行くと特別編集の冊子『そらぼん』の上巻が、後半に行くと下巻が貰えると言うキャンペーン付きです。さらに、コミック第20巻と一度観た入場半券を提示すると、次回からは一回1000円と言う、フリーケンシー・プログラムまで用意されていました。素晴らしいプロモーションの念の入れようです。

娘にお土産のグッズとパンフを買いつつ、周囲を見渡すと、ほんの一組の20代カップル以外、20代の男性の客ばかりで、どう見ても、50代は私一人です。全体で20人程度の観客がいたように見えました。

本編が一時間を少々切るぐらいの短さなので、予告などがやたらに長く感じられます。始まると、コミック最終巻の頭ぐらいの、ニンフと言うエンジェロイドの自爆によって、天空にあるシナプスと言う世界への道が開け、一方では、全世界、地球ごとどんどん瓦が剥ぎ取られるかのごとく雲散霧消していく状態になっていました。

いきなりここから始まるのかと思ったら、ここに至るまでのエピソードが遥か以前の時間軸ポイントから回想され始めます。「おお、コミックのあの話も入れているんだな…」などと見ていると、あっと言う間に時間が過ぎ、コミック最終巻の主人公と言っていいはずの大人気のエンジェロイド、イカロスまでが自らの体を徐々に消滅させながらも、マスターである智樹をシナプスに送り届けるところで映画が終わってしまいました。

当然ですが、コミックの方のストーリの結末は、この後のシナプスを舞台にした大展開がある訳で、例のフリーケンシー・プログラムで来ているのではない初見の観客は多分皆、肩透かしを喰らった状態だったと思われます。映画サイトの情報では“完結編”と言う話なのに、全く完結していません。

これは、また続きがあるのかと思い、パンフをよく読みこむと、声優達のコメントの中に「これで終わりにしてはいけない」、「皆さんでこれからもそらおとを盛り上げましょう」といった言葉が幾つも見つかります。つまり、これは、最後まで描いた作品を作る可能性をファンの反応に委ねている、ロー・リスクのマーケット・イン型マーケティングの優れた事例と分かりました。優れた作品には優れたマーケティング策が用意されるものだと膝を敲いて感心しました。

何を具体的にすれば良いのか分かりませんし、このブログを書いたことで、少しでも声を上げたことになるのか否か分かりませんが、私も間違いなく、動画で「そらおと」の完結を見たい人間の一人です。特に『プリキュアオールスターズ NewStage3 永遠のともだち』の感想でも言及した、総ての願いを簡単に叶えてしまえるようになったシナプスの天上人達の絶望と慟哭のシーンは是非動画で見てみたいものだと思います。

そのような本来の完結が描かれていないという意味では、このDVDは必要がないのですが、コレクション目的で買いたくなってしまうことでしょうし、そのような内容でさえ、劇場で見られなかった娘は見ることになると思いますので、一応DVDは買いです。

それに、「そらおと」の全ストーリーの中で、主人公のイカロスが自分の感情をあらわにするシーンはほんの指折り数えるほどの回数しかありません。DVDの二シリーズの中では見られない、自分の恋する気持ちに自覚的になって、叫び、泣き、嗚咽するシーンはこの映画の最大の価値を作り上げているのも事実です。

それよりも、今の悩みは、この程度の作品内容なのに、今一度、コミック第20巻を携えて映画を観に行き、コミック・サイドの内輪うけネタばかりが目立つ「そらぼん」の下巻を入手すべきか否かの方です。

追記
 タイトルの「エターナルマイマスター」は“マイマスター”がほぼ固有名詞扱いでもない限り、本来「マイエターナルマスター」になるはずです。その辺が、結構気になったりします。