333 役員の有能化

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経営コラム SOLID AS FAITH 第333号
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 ご愛読ありがとうございます。第333話をお届けします。

 年の瀬も押し迫って参りまして、世の中はクリスマスの飾り付けだらけにな
りました。お客様からのメールの返信が遅くなったり、文章量が少なくなって
いるのを見ては、年末の繁忙を意識します。オリンピック景気も一部では始ま
っていると耳にします。

 最近は外での観察をベースにした仕事がやや増えています。販促と流通の企
画の検証のために、秋葉原の各種店舗で買物客を観察することがよくあります。
今となっては渋谷よりも海外からの観光客も若者が多いというこの街のどの一
角にどんな店が多いのかは分かるようになって来ました。その合間を縫って、
三軒茶屋付近の住宅街を歩き回り、ポスティングの計画を練ったりもしていま
す。20年近く前に中小企業診断士の三次実習の場所だった地域に程近く、時の
流れを街並みや家並みから感じます。

 川崎の駅前商店街の交差点に佇んで、客層や人の流れを眺めていることもあ
ります。以前、パチンコ店のクライアントさんの新店オープンでバスを乗り継
いで回ってから、5年近く経って、当時の印象と大きく人の流れが変わってい
ることに気付かされました。どこに行っても、自分の用意していた仮説を書き
換える事象に遭遇して、道端や喫茶店の窓際の席でう?んと考え込んだりする
うちに、師走が過ぎて行きます。面白さや楽しさを感じることは稀ですが、間
違いなく飽きが来ない仕事です。
 
 さて、今回の号は、『役員の有能化』と題して、私が結構好きなピーターの
法則を考えてみました。中小零細企業の組織には多くの階層が存在しないので、
本来、ピーターの法則による「無能化」は発生しにくいはずです。しかし、実
際には、思い込みや慣習による昇格・昇進制度によって、大手企業よりも「無
能化」が進んでいるケースも時々見つかります。師走の一時、自社の組織を省
みて戴けるネタになれば幸いです。本文に対するご意見・ご感想をお待ちして
おります。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その333:役員の有能化

 クライアントである社員数50人に満たない組織。毎年4、5人雇っている新
卒社員は入社後研修や動機付け策の充実で、なかなか光る人材に育っている。
入社後2年ぐらいで必ずぶつかる壁は自社の魅力の無理解。自社に魅力を感じ
ていない訳ではない。何か自社で働くことに不満がある訳でもない。ただ他社
と自社を比較論で語ることが全くできない。2年ぐらいで徐々に外部の人々と
の接点が増えると、「おたくのような会社で次々と新卒を採用しているのって、
珍しいしすごいよね。入ってみてどうなの」と必ず問われるようになる。何気
ないこの手の質問は、相手が抱く自社への関心の証。応じる言葉の質が問われ
る。
 
「やっぱり、大きい会社の人々って、仕事に対する“入れ込み感”が足りない
ように感じることはあります。これが、市川さんが言う、大手企業で働くこと
の“疎外感”とかの結果なんでしょうか。ウチだと入社2年目でも間違いなく
会社全体のことを考えながらモノを言ったりしなきゃいけないように感じてい
ますが、大手だとなんか課長クラスでもそんな感じがしないことがあります」。
 社員勉強会で出てくる大手組織と零細組織の違いについて模範解答。

「大手さんは、構造的に無能な人で組織を埋めることが宿命付けられているっ
て説もあるよ。ピーターの法則って言うんだけど。端的に言うと、大手は現場
でデキる人への報償として昇格をする。けれど現場でデキる能力は必ずしも管
理者としてデキることとは一致しない。だから、その昇格の結果、デキない管
理者が発生する上に、現場の方は主力選手を失って生産性ダウン。おまけに、
とんでもない失態を犯さない限り、極端な降格は行われないから、新しい地位
で無能が証明されるまで、昇格が続いて、『組織はその構成員が無能になるま
で昇格を続ける』と言う状態って話なんだけど。調べておいてくれるかな」。
 私は大手組織の構造的弱点の可能性を指摘してみる。

 或るクライアント企業を訪ねると、課長が案内の道すがら、「ウチは組織が
なっていない」と愚痴を聞かせる。「ウチは肩書があっても、そんなの渾名み
たいなもんで、役員だってパートの女性達に混じって袋詰め作業をしているこ
とがよくあったりするんですから」と嘆いてみせる。

 役員達が役員の視座も持ち合わせている前提なら、現場から乖離しない素晴
らしい役員が揃っていることだろう。小さな組織の強みを最大限活かす仕組み。
この後の話に期待が膨らみ、ついニヤついてしまう。しかし、初めての訪問先
の相手には、「組織の無能化回避の素晴らしい叡智の現出ですよ」と応じるこ
ともなく、なるほどと俯いて呟くだけにした。
 
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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※ピーターの法則による組織の無能化を説明する他号のご紹介
 第139話『週末の来訪者』
  http://tales.msi-group.org/?p=192
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【MSIグループからのPR】

株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所様から頂戴している肩書きが
「客員研究員」から「チーフ・エヴァンジェリスト」に変わって半年余り。

主に、「お客様カルテの活用による接客」が担当テーマになっています。
セミナーの講師も務めましたが、
最近は先方の会員企業様向けのファクスDMへの記事執筆が増えました。

過去に発行した記事が基礎編二部作や応用編四部作。
さらに、今月からは…
導入時の問題点やお客様モデル像設定時の留意ポイントについて
解説する記事が、合計6回以上発行されます。

高単価商品を販売する物販店や
飲食店を含むお客様が長時間滞留するサービス店舗などで
ホスピタリティを追求するには組織風土やオペレーションの問題がある…
そういった現場での接客の質の向上に最適です。

ネタが整理されて豊富になりましたので、
いつでも簡単にセミナーができるようになりました。
ご関心を賜れましたら、メールにてご一報を。
 bizcom@msi-group.org

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『反省させると犯罪者になります』 岡本茂樹 著
■『日本人へ 危機からの脱出篇』 塩野七生 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第334話 『徒手空拳』 (12月25日発行) 
 今年最後の号は、ビジネス上の基礎的読み書き能力の低下の影響と対策を考
えてみました。容易に頷いて戴ける内容だと思います。ご期待下さい。

(完)