結構前に、渋谷でみてきました。
緒川たまき。やっぱり、いいです。『ユメ十夜』のお百度をする若い母も最高ですが、今回はもっといいです。ストーリーははっきり言って、ストーカーものですが、ストーカーとしての不気味さや異常さは殆ど表面化しません。
主人公の男は、子供時代に望遠鏡でのぞき始めた女の子を、彼女が成人し結婚してからも、延々、彼女の転居先がよく見える場所に引っ越してまで、覗き続ける話なのですが、その事実に気づいた第三者では、まず男の父が登場しますが、驚きはするものの、どちらかと言うと、「たいがいにせぇよ」と言う感じで終わります。さすが、二番目に気づいた妻も、(気づき方だって、子供の怪我が原因なのであって、結婚前からの夫の趣味に気づかずに来ていた訳ですが)「不倫されている方がまだマシだった」様なことを言って、出て行くだけです。主人公は、そのうち目を患うようになり、それでも目薬を点しつつ、望遠鏡を覗き、緒川たまき演じる女性の方も覗いている存在を意識しながら生活し、病死します。
こんなおかしな話なのに、淡々と展開して、尚飽きさせないのは、多分、映画が二部構成になっているからでしょう。前半は主人公の男の視点から、描かれていきます。何がおきているのかはこれできちんと理解できるのですが、見ているうちにどんどん膨らむ疑問は、女性の方は、どの程度この「観察者」を認識しているのかと言うことです。ところが、後半は一旦子供時代に戻って、女性の方の視点から描かれていき、女性の方は、ある意味、足長おじさんか何かのように、この観察者のことを感じていたことが分かってきます。
しかし、女性の方の感情は、英語のタイトルの「watch me」ほどに積極性のあるようなニュアンスのものには感じられません。どちらかと言うと、陽光のように、自分の周囲にある暖かなものと言った感覚に見えます。最後の写真に写りこんだ望遠鏡の輝きの話は、結構刺さります。
買ったパンフレットによれば、10歳の時に始まった観察は40年間続いているということらしいです。ソリアズの『執着の表現』、そのものです。物凄い盛り上がりがあるわけでもありません。が、DVDは多分買ってしまいます。