325 紅海の漕ぎ手

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経営コラム SOLID AS FAITH 第325号
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 ご愛読ありがとうございます。第325話をお届けします。

 前号で少々お話した通り、照りつける日差しの下、図書館通いをしています。
読みたいと思った本は基本的に買って手許に置くという考え方である私は、ほ
とんど図書館のお世話になったことがありません。リサーチの傍ら、必要な本
の周りの本を眺めると、それなりに色々な発見があります。また、以前からそ
うであったのか全く分からないのですが、図書館司書の方々の非常に丁寧な対
応には常に驚かされます。

 PR欄には方向性が固まってきた、当コラムの14周年記念号の企画を少々紹
介してみました。14回目に至っても、尽きることなく、まとめて特集化するネ
タがあることには自分でも感慨が湧きます。ご期待下さい。
 
 今号は、『紅海の漕ぎ手』と題して、今となってはやや死語であるかのよう
な感じになってきたレッド・オーシャンでの競合状況について考えてみた内容
をまとめてみました。企業経営の視座では激しい競合は気の休まることのない
不安定で望ましくない状況と捉えます。しかしながら、経済全体の視座からで
は、いつもの増田悦佐氏の書籍を読んで全く話が異なることに思い至りました。
ご一緒にひと時、レッド・オーシャンの健全性についてお考え戴ければ幸いで
す。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想など
へのお返事の目標納期は5営業日!!
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その325:紅海の漕ぎ手

 悪い寝相を鑑みて置かれた、代々木の巨大マンションの小さな一室の大きな
ベッド。目覚ましで飛び起きて眠い目を顰めながら外を見ると、眼下に背広姿
ばかりの人集り。不動産屋の辺りか。ちょっと早めに部屋を出て、世話になっ
ている不動産屋の担当者に挨拶をして、先程の人集りについて尋ねてみた。

「ああ、ほら、金利が上がるでしょ。アベノミクス。で、うちのマンションの
部屋を買いに来た人達だね。さっきのは法人だから、一社で何人も来たけど、
個人でも何人も来ちゃってバッティングしそうになることがあるよ。市川さん
も買いたいのかな。まあ、空き部屋で良いなら、即決で手に入るよ。オーナー
チェンジの部屋ならちょっと待ってもらうことになるかなぁ」。担当者はカッ
プでコーヒーを飲みながらゆるゆると話す。

「なるほどねぇ。ローン組めるような身分じゃないし、キャッシュは今、売上
が不安定で大変だからキープしとかなきゃ駄目だし、ちょっと無理っぽいです
ねぇ」と私は笑いながら答えた。「ふ?ん。金利上昇ねぇ。経済学原論どんな
感じだったかな」などと呟く。

 山手線で重い鞄をよいしょと膝に載せ、中から増田悦佐氏の『格差社会論は
ウソである』を取り出して、栞紐を引っ張る。読み進むと我が目を疑うような
記述が飛び出した。
「この問題を歴史的な視点から考察したかったら、アダム・スミスやデイヴィ
ッド・リカードといった経済学の先達たちが、企業利益率の長期的な展望をど
う考えていたかを思い出すのがいちばんだ。経済学本流に属する人たちは、ひ
とりの例外もなく「長期的には、企業利益率は市場平均的利子率に収斂する」
と予測していたのだ。
 優秀な企業が精一杯がんばって、なんとか市場金利並みの利益率を確保する。
それ以下の企業は競争から脱落していく。それが、円滑に機能する市場経済の
もとで、経済学の始祖たちが予測した企業収益の定常状態なのだ」。

 増田氏は、米国の全企業収益の四割に当たる金融業界の収益には貧困層にま
で無理やり貸し込んだサブプライムローンまで貢献していることの異常を述べ
てから、日本企業の低利益性の健全性や先進性を述べている。

「平均金利に収斂するかぁ。しかし、これは嬉しくないよなぁ」などと考えな
がら降車した。クライアントの会社に着くと、社長が最近採ったばかりの四大
卒の社員に訓示を垂れていた。私に気付くと、社長は「おお、市川。なんか大
卒者が増えてきて、きっちり育成すると、やっぱり違うよな。成長が速いから、
大分儲け易くなりそうだぞ」と言う。

「金利も上がるから多少は利益率も上がるでしょうね」と私が付け焼刃の知識
をひけらかしても、社長はよく聞きもしないで、「おお。そうだな。そう来な
くちゃ」と勇んでいた。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

テキスト・マイニングで決まった!
『経営コラムSOLID AS FAITH』 14周年記念特別号のテーマ。

テキスト・マイニングをご存知ですか。

弊社では、10年ほど前、
人材会社のビジネス企画を請け負う仕事が多かった頃に
スーパー・マーケットでのデモンストレーション販売担当者からの
手書き報告書の内容を分析するために、
当時の技術を調べてみたことがあります。
その方法論をまとめて、ビジネスモデル特許も一つ申請しました。
http://www.msi-group.org/MSI-Manbiz-Planning.htm

ウィキで見ると…
「テキストマイニング(text mining)は、文字列を対象としたデータマイニ
ングのことである。通常の文章からなるデータを単語や文節で区切り、それら
の出現の頻度や共出現の相関、出現傾向、時系列などを解析することで有用な
情報を取り出す、テキストデータの分析方法である」となっています。

さらに、その効果として…
「テキストマイニングは、言葉的にはデータマイニングと似ているが、その効
果は異なる。データマイニングが顧客個人の購買傾向を分析するなどの目的で
行われるのに対し、テキストマイニングは顧客個人の特性よりも提供側の状態
を把握する面において威力を発揮する。例えば商品の評価や顧客サービスの問
題点などを把握することができる」とあります。

さて、当コラムの「提供側の状態」の分析の結果が、
14周年記念特別号のテーマです。

徐々に全貌を現す14周年記念特別号の企画。
続きはまた後日。

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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
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インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して
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 ソリアズのバックナンバーも各号の全文が読める弊社ブログ。
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次号予告:
 第326話 『厚い蹴上』 (8月25日発行) 
 折角各種のニーズ・モデルで多種多様なニーズのあり方について習っている
のに、最近周囲を見渡すと、「集団帰属」や「承認」についての欲求ばかりが
目立ちます。そう気付いたきっかけを一話にまとめてみました。

(完)