322 生活習慣病

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経営コラム SOLID AS FAITH 第322号
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 ご愛読ありがとうございます。第322話をお届けします。

 第321話『空調のリモコン』には、お会いした読者の方からぽつんぽつんと
ご感想を戴きました。経営者の方から頂戴した「結局、会社の空気は経営者が
決めているってことなんだろうなぁ」と言う感慨は印象に残りました。その第
321話の中に登場した大手経営コンサルティング会社幹部の方からは、『空調
のリモコン』のお話以外にも多数のネタを戴きましたので、調子に乗ってもう
一話作ってみたのが、今回の第322話『生活習慣病』です。前回にも紹介され
ていた“呑み屋の30周年記念パーティー” から話が始まる会です。

 参加したセミナーで説明された大手企業向けの社風改善度の指標の活用はい
みじくも、大手企業が合併を重ねて大きくなるにつれて、止め処ない失点を対
症療法的に食い留めている状態を描き出していました。大手の組織は巨大化に
伴い何が問題となるのか。多分その答えの一つと考えられる話を偶然同時期に
読んでいた増田悦佐氏の書籍の中に見つけて得心しました。そんな話をまとめ
てみました。

 大手企業組織のこのような話を考えるたびに、その轍を踏まないこと自体が
既に中小零細企業組織の強みの実現につながることが分かります。大手企業の
組織風土の劣化については、様々な見解や分析の切り口があるものと思います。
例えば、私が大好きなピーターの法則などもその一つです。どの説がどの程度
尤もらしいかの検証は、学者でもコンサルタントでもない私の関知する所では
ありません。ただ、このように使えそうな仮説を手に入れ、自分でも検証しつ
つ、クライアントの皆様や当コラムの読者の方々にも紹介できれば良いものと
思っています。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴した
ご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その322:生活習慣病

 真夏の暑い日に東京タワーの麓を延々歩いて、経営コンサルティング会社の
受付に辿り着いた。相手の名を告げて、「実は先日呑み屋さんの30周年記念パ
ーティーで撮影して差し上げた写真が入っていますのでお渡し戴けますか」と
USB入りの封筒を差し出した。その日の夕刻に届いたお礼のメールには、飲
み会のお誘いとセミナーの案内。セミナーのテーマは社風改善状況の指標によ
る可視化。大手企業のこの手の取り組みには暗いので、これは面白いかと参加
することにした。
 
 内容の大半は某超大手重工会社のケースの説明。確かに指標による可視化の
体系的な手法は直観的で興味深い。まるで健康診断の結果の如く状況を物語る。
しかし如何せん、結果が芳しくない。その重工会社の担当管理者まで登場して、
指標が悪くなるたびに、「このような手を打った」と逐一グラフをなぞりなが
ら説明した。
「時系列のグラフの一点一点において、実は組織構成はかなり変化しているの
で」と配られた資料には、この会社の関連各社の吸収合併の歴史が図表で描か
れている。昭和の政党の離合集散の図表を思い出したが、それより一段と細か
く、社名が小さすぎて読み取れないものまである。そして、「離散」は殆どな
く「合集」ばかりである。
「指標のお蔭で、このように現状を的確に把握し、手を打つことができたので、
悪化は防げている」とのまとめは一応納得できるものの、逆に対症療法のあり
方に方に関心が湧く。
 
 まるで滴が周囲の細かな滴を飲み込みつつどんどん大きくなるような合併の
歴史。明確な改善を見ることのない社内風土。そのセミナーの話を頭に抱きつ
つ増田悦佐氏の『それでも「日本は死なない」これだけの理由』を読んでいる
と、新日本製鐵と住友金属工業の合併を例に引き述べた文章に行き当たった。
「『そもそも日本企業の利益率が低いのは企業数が多すぎるからだ』との議論
を延々とやってきた連中が一斉にこの話に飛びついている。いったい、なにと
比べて利益率が低すぎるのかというと、欧米の同業種で事実上の独占を築いて
いる企業との比較らしい。
 事実上の独占企業は、市場に対して価格支配力を持っているから、自社の利
益率を極大化する価格で製品を売る。だから利益率が高いのは当り前のことだ。
 しかしそれが消費者の利益、国民経済全体の利益になっているかというと、
まったくそうなってはいない。独占がもたらす高利益率に慣れると、企業(経
営者)はどうしても研究開発や販売活動という地道な努力を怠るようになって
くる。『規模の経済』をフル活用して、より安い製品を消費者に提供する、な
どいうのはまったくの絵空事なのだ」。

 歴史を見ても、バンドを見ても、多くの勃興と隆盛の後には凋落が口を開け
て待っていると私も思う。セミナーでの関心事は、中小零細専門の企画屋風情
には正解が何であるかは分からないが、少なくとも尤もらしく響く仮説一つで
も手に入れば私は満足である。

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次号予告:
 第323話 『怪しい空気』 (7月10日発行) 
 今更ウェブ2.0でもないのですが、ネット礼賛論の中の「尋ねれば誰かが教
えてくれる情報生活」や、その先にある“集合知”について考えてみました。
ご期待下さい。

(完)