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経営コラム SOLID AS FAITH 第318号
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ご愛読ありがとうございます。第318話をお届けします。
色々な方から尋ねられて、そこかしこで答えていて、とうとう或るクライア
ント企業様の勉強会の一テーマにまでなったのに、イマイチ自分も彫り込みが
浅いなと反省し、記号論と消費のことを勉強しようと思い立ちました。やはり
「記号と消費」とくれば、ジャン・ボードリヤールの『消費社会の神話と構造』
です。
最近、ちょっと面白く感じ始めてきた構造主義と共通点をちょっと感じたの
で、ボードリヤールのこともちょっと勉強することにしました。素人にも分か
りやすくマンガでボードリヤールの思想史を書いた『ボードリヤールなんて知
らないよ』を買い求め、読んでみると、これまた嵌りました。特にボードリヤ
ールの言う「社会の死」の概念は魅力的です。ボードリヤールが吉本隆明との
対談でそれについて言及していることを知りました。私の大好きな勢古浩爾が
吉本隆明の解説本を書いています。積読(つんどく)状態だったのを引っ張り
出して読むことにしました。
読むべき本がどんどん広がり、構造主義も記号消費も、そしてもしかすると、
前号までの当コラムのテーマだった「死すべき技術としての経営」も、幽かに
繋がっているように見えてきました。さてどこから手を付けようかと、積読の
本を見渡しています。何となく絡みを感じている書籍をPR欄にて紹介してい
ます。是非、ご笑覧下さい。
さて、今回の号は、前号で完結した「死すべき技術としての経営」を考える
シリーズ『応急処置』の番外編です。「死すべき技術としての経営」で言う所
の「経営」は主に組織統制と言う組織内部の経営分野でした。しかし、組織内
の人間との関係性のありかたが見直されるべきなら、組織外部にいる人間との
関係性も根本から問い直されるべきであるかもしれません。そんなことを考え
てみて、シリーズに収まりきらない話をまとめてみたのが今回の『浅知恵』で
す。お楽しみ戴ければ幸いです。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしてお
ります。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その318:浅知恵
「ええ。絞り込んでみて下さい。ターゲットの具体的なイメージをがっちり作
り込んでみて下さい。そのターゲットに対しての商売のあるべき姿を考えると、
コンセプトが分かり易い商売に成る訳です。分かり易いということは覚え易い
ことです。覚えられないものは、後で気になることもなければ、口コミになる
こともないんですよ」。
クライアント先の勉強会で営業管理者達を相手に私は説明した。この会社は
全国組織。人口激減地区も含めて全国津々浦々の営業展開を思い出して、「そ
うそう。この手の商売の形は20万人以上の商圏に限定ですよ。それ以下だと
少々問題が出るので」と付け加えた。
人口が激減しているエリアでは、概して人口減少よりも速く商業が衰退して
行く。通販や共同購入など見えざる競合相手の存在の可能性はあるものの、こ
んな飽和市場だらけの日本においても、需要が供給を上回る状況が出現するこ
とがある。マーケティング発祥以前のプロダクト・アウト型メインの市場環境
ができれば、差別化はあまり意味がない。その条件なら、ウォルマートにも見
習うべきものがあるだろう。しかし、現時点でそのようなことに言及している
マーケティング系の書籍や記事にはなかなか行き当たらない。
電車の中でページを捲り読み進むと、九州で取扱品目数200,000点超と言
う常識外れの品揃えを誇るハンズマンが注釈で紹介されていた。早速スマホで
調べると、同様のA-Zスーパーセンターも見つかった。地方都市のみで展開し、
「醤油だけでも約360種類の品揃え」とある。来店客・従業員両方への高齢者
対策も独創性が高い。私が読んでいた本は、ホウレンソウ禁止などで有名な山
田昭男氏の『日本一社員がしあわせな会社のヘンな“きまり”』。ホウレンソ
ウがないので営業所数が分からないなどと著者が語る、経営管理の一般論から
は理解不能な話が並ぶこの本は、奇妙な方針を採用している他社事例にも言及
している。
茨城に住む母のいとこから連絡が来て、NPOの代表になると言う。私より
一つ年下の彼女には留学時代に帰国した際に散々世話になっているので、ウン
ウンと話を聞いた。「まだ何を相談していいか分からないが、何を相談したら
いいか相談に乗って欲しい」と禅問答のような内容。ちょっと料金が高くなる
が、現場に行ってどんな商売か見なくては何とも言えないと答えた。
翌日はチラシ作りの勉強会。「皆さん、チラシの教科書のレイアウトと皆さ
んが考えたベネフィットに拘り過ぎです。ターゲットはどんな言葉遣いが好き
でどんな絵面に目が惹かれるのですか。ターゲットが普段見る文字や画像を
もっと研究して下さい。手抜きが過ぎますよ」と、私はターゲットが読むと言
う雑誌数冊を参加者に突きつけて苦言を呈した。ビジネス本に如何にもよくあ
る常識を否定してばかりの言動を、ふと気付くと自分もよくしている。人とそ
の環境をよく知る労を惜しめば、どのような経営管理体系も組織統制も役に立
たないとの確信が湧いて来た。
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<記号消費関係>
●『消費の記号論』 星野克美 著
●『消費社会の神話と構造』 ジャン・ボードリヤール 著
●『消費社会と現代人の生活 ?分析ツールとしてのボードリヤール』
矢部謙太郎 著
●『「買いたい!」のスイッチを押す方法』 小阪裕司 著
<記号論関係>
●『記号論への招待』 池上嘉彦 著
<ボードリヤール関係>
●『ボードリヤールなんて知らないよ』 クリス・ホロックス 著
●『ボードリヤールという生き方』 塚原史 著
<構造主義関係>
●『寝ながら学べる構造主義』 内田樹 著
●『本当にわかる哲学』 山竹伸二 著
<吉本隆明関係>
●『最後の吉本隆明』 勢古浩爾 著
●『ぼくが真実を口にすると 吉本隆明88語』 勢古浩爾 著
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合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
第319話 『深淵の両側』 (5月10日発行)
或るチェーンの一店舗で始めた取組みが成果を出しているにも関わらず、他
店では同じ結果にならない。その謎にマーケティングの理論らしきものを適用
して挑んでみました。
(完)