土曜日の午前中遅くの回で、毎年恒例の感じで五年目のお勤めを果たしてきました。娘は今春から小学六年生になるので、「もうプリキュアって年でもないよね」とは話していたのですが、「けどなぁ、なんか毎春行っているから、もう行事化しているよねぇ」などと話し、娘の小学校卒業までは観に行こうと言うことにしました。マルチプレックスのシアターに立ち入ると、間違いなく親に連れられてきている子供達の中でうちの娘が最年長でした。
三部作と謳っていた『プリキュアオールスターズDX』シリーズが一昨年震災被災者への配慮から津波のシーンをカットする憂き目に会いながら(ストーリーに何らの関連性もありませんでしたが)完結し、昨年から始まった『プリキュアオールスターズ NewStage』シリーズの第二弾です。昨年の第一弾は『プリキュアオールスターズDX』の正統続編といった位置付けだったので、今度ももしかしてと思っていたら、全く期待を裏切り、完全なオリジナルストーリーでした。
『プリキュアオールスターズDX』シリーズでは、まるで懐かしの東映まんが祭り的なノリでサブタイトルがバラバラでしたが、今回、『プリキュアオールスターズ NewStage』シリーズの第二弾が出て、このシリーズではサブタイトルにも一定のパターンがあることが明確になりました。『●●のともだち』と言うパターンのようです。第一作が「未来のともだち」で今回が「こころのともだち」です。大分洗練されてきました。『プリキュアオールスターズDX』シリーズの第一作のサブタイトルは『みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!』でしたから、「ともだち」の表現はどうも原点回帰志向のようにも思えます。
今年三月で放映が終了するプリキュアのシリーズが『スマイル・プリキュア』で主人公は五人。今回始まる新シリーズは『ドキドキ・プリキュア』で主人公は四人。この九人が比較的露出が多いものの、前作に比べてどうもTV新シリーズの導入編としての色合いが大分弱まっているぐらいの程度です。寧ろその他大勢の歴代プリキュアの中で私がよく知る初代の『ふたりはプリキュア』と『ふたりはプリキュアMax Heart』の登場人物三人が意外に頻出し、個人的に嬉しいのと同時に、やはりこれが最大の代表作となっているのかと感じました。
それにしても総勢32人は圧巻です。ちゃっちゃちゃっちゃとカットが入れ替わると、半分ぐらいはどのシリーズの誰なのか、私にも分からないレベルになってしまいました。尺は今回71分。一人平均2分13秒あまり。おまけに今回は敵対者がプリキュアのパートナーである妖精の国の住人で、妖精の(洒落じゃありませんが)養成学校を舞台にしているので、モブの妖精はわらわらそこかしこに居て、その学校生活まで描写されなくてはなりません。そんな中で、プリキュア十八番の(或る意味キューティーハニーに始まり、セーラームーンで完成したと思われる)お色気変身シーンも、変身後の大見得も、さらには大技の見得もほとんどカットです。その意味では少々味気なくなっています。
おまけに、今回で定番と分かった『プリキュアオールスターズ NewStage』シリーズ共通の展開は、プリキュア達がストーリーの中心には居ないというものですので、プリキュア達の出番はいよいよ限られています。その手の観点からの愉楽を期待している方々にはかなりの駄作なのではないかと思われます。
それでも、プリキュアの伝統はよく守られている部分が多々見つかります。
今回の敵は自分の心の弱さにつけこんでくる影水晶に心を持って行かれてしまった妖精の一人で、例の養成学校ではプリキュアの「科目」を教科書を使って学んでいます。つまり、歴代プリキュアの攻撃パターンを個々に把握しているので、その攻撃をかわしつつ、変身アイテムを奪ってプリキュアをグループごとに捕獲することに成功します。この辺は懐かしのウルトラ兄弟がばたばたとヒッポリト星人にやられていくのと似たような展開です。
変身を解除されて戦闘力を失ったプリキュアの少女達は悪の妖精のパワーを浴びて急激に体が水晶と化していくのです。最後に水晶化させられた今春までのシリーズ『スマイル・プリキュア』のキュアハッピーは全身の中で僅かに水晶化が遅れた口と目で、周囲の意気地なしの妖精に(まだ一度しか会話を交わしたことしかない新シリーズ『ドキドキ・プリキュア』の)「キュアハートにつたえて…、ちょっとピンチ。助っ人お願いって」と言い残すや否や全身が水晶化してしまうのです。往年のシリーズもののヒーロー物語の定番の泣かせるシーンです。マジンガーZからグレート・マジンガーへのバトンタッチのエピソード並みに盛り上げてくれるよなぁと頷かされました。
当然ですが、この伝言を受け取ったキュアハートは、新プリキュア四人で残るプリキュア全員を救うために奮戦する道を選びます。この「諦めないこと」、「友達(と看做した人物)との約束に何が何でも忠実であろうとすること」は、プリキュアの世界観の中で非常に重要なコンセプトです。さらに、復活した32人のプリキュア全員がいつもの爆発シーンから折重なるように全員で飛翔してくる横からの全景カットの定番シーンも健在です。初代から定着している(セーラームーンなどに比べて)圧巻のコンバットシーンも執拗に登場します。
また、32人も居るのですから敵が破壊力あるエネルギービームを打ってきたら、数人が受けて、残りが敵を横や背後から攻撃すれば良さそうなものですが、決してそのような潔くない勝ち方を狙わないというのもお約束です。プリキュアの世界観の鉄則に従って、必ず全員でありとあらゆる技をエネルギー弾として打ち出し合わせ技のエネルギービームで押し返します。その際の「うりゃ?」だの「だぁ?」だのと言う絶叫と共に、「私たちは絶対に大切なみんなを守るんだからぁ」のような或る意味「呪」の言葉を誰かが言います。そして、盛り上がる綱引きの如く散々競り合って、プリキュア陣のエネルギー・ビームが押し勝って敵を直撃するのです。このカタルシスは初代のプリキュアから脈々と受け継がれています。
もう一つ、お決まりがあります。それは劇場内の子供達にも一人一つずつ配られたライト・スティックを妖精達や周囲の人々が、「プリキュアに力を?」、「がんばれ?」と振り回すと細かな金色に光る粒子が空中に満ち溢れ、プリキュアに降り注ぐのです。するとプリキュア達はそれをエネルギーとしてダメージが回復するだけでなく、パワーも格段に上がるということが起きます。プリキュアの面々はお決まりで「みんなの心が私たちに流れ込んでくる…」、「力が、すごい、漲ってくる」、「そう。私たちはみんなとの楽しい毎日を続けたい」などと口々に言います。聞きようによってはセックスの悦楽に絡め獲られた後の台詞のようでもあって、再生の中のエロチシズムが少々あります。
『プリキュアオールスターズ NewStage』以来の「罪を憎んで人を憎まず」的アプローチは、古いプリキュアに慣れてしまった私には少々違和感がありますが、ここまで、想定内の事象を重ね合わせて尚、楽しませてくれるシリーズはなかなかないのではないかと思えてきました。エンディングのCGダンスシーンもいよいよ磨きがかかり、DVDは買いなのは一応決定なのですが、娘が小学校を卒業しても、最低限レンタルぐらいはしてしまいそうな気がしてならなくなりました。