311 バトル・ロワイヤル

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経営コラム SOLID AS FAITH 第311号
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 ご愛読ありがとうございます。第311話をお届けします。

 また、一年が始まりました。多くの皆様にとってこの号が届く1月10日は仕
事始めの週であることと思います。この号が届く頃には、弊社と直接接点のあ
る一部の方々には、弊社特製『季節のご挨拶』が届き始めているかと思います。
この『季節のご挨拶』には、昨年から考え始めた「死すべき技術としての経営」
に関しまして、文献などを明らかにしながら、かなり綿密に記述してみました。
今年二月後半から開始されるシリーズの予告編にもなっている内容です。是非
お楽しみ戴きたく存じます。ご要請に応じたお届けも致しますので、PR欄の
案内をご覧下さい。

 リンクトインでお知り合いになって下さった外国人の方々からは「SME
ショクニン」と呼ばれることがあります。SMEは中小零細企業のことです。
「コンサルタント」とは一線を画した弊社の商売のあり方をご理解戴いた上で
の称号を、非常に喜ばしく感じています。前回の号のご挨拶で言及したニュー
ヨーク行きの話は、その後なくなりましたが、逆に先方が日本を訪ねてくるこ
とになり、内容の詰めを始めました。そのような私にとっての新しいニーズ源
との付き合い方を、より意識的に磨いていかねばならないものと思っています。
 
 今回の号は、単なる偶然で、年始第一号にまあまあ相応しい内容になりまし
た。あまり好きな言葉ではありませんが、「グローバル化」と中小零細企業の
経営のあり方について、最近考えたことをまとめてみたものです。リンクトイ
ンでも巷間でも言われる中小零細企業のグローバル化の話とは大分切り口が異
なるかと思いますが、お楽しみ戴ければ幸いです。本文に対するご意見・ご感
想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業
日!!
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その311:バトル・ロワイヤル

「おい、こいつは頭がおかしいのではないか」。
 田中道信先生はテーブル越しに私の隣に座った私の先輩に言った。中小零細
企業向けの経営誌出版社で編集者として仕事を始めた頃、私の面倒見役の先輩、
本間氏は、彼の敬愛する田中道信先生に引き合わせてくれた。営業の鬼として
有名な先生は、大手の経営職を退いてから、請われて数十に及ぶ中小零細企業
の役員をすることにしたと伺う。中小零細企業の現場を見て、「身の毛の弥立
つほど使える人材がいない」ことに驚愕したと言う。
 
「大手に千人の社員がいて、仮に超優秀な奴が5%しかいなかったとしても、
50人もいる。これだけいれば何かは確実にできる。それが中小零細企業では打
つ手がない。そんな中小零細企業の経営におまえは本当に取り組むと言うのか」。
NTTを辞め、アンダーセン・コンサルティングを辞め、留学までしてきて、
中小零細企業の現場を考える仕事をすると言った私を、先生は鋭く凝視した。
 
「まあ、敵はテレビで言うグローバル企業なんですけどね。何とかしなきゃ、
こちらも食って行けなくなるからねぇ」と、嘆息しつつ相談して来るほんの数
坪の衣料店店主。「お客さんに選んで貰うことを徹底するには制作の流れ自体
を根っこから見直さなきゃならない」と言う競合激烈な業界の中のAVメー
カー役員団。10年来お付き合い戴いている規格外パイプを製造する荒川区の町
工場には、どこからともなく技術提携の要請が遥か遠くインドネシアの製缶会
社から届く。そう言えば、この会社で展示会に年一回用意周到に出展すると、
海外の名刺が徐々に目立つようになってきた。

 或るクライアント企業の依頼で、取引先の見極め方を自分なりにまとめる機
会があった。「MSIグループ版 会社の観察ポイント」と題した資料を先方
の常務に見せると、「ウチのお客さんは該当箇所が多過ぎて、市川さんの基準
じゃ駄目駄目ですね」と苦笑する。変わらぬ現場。変わらぬ資金繰り。そして
変わらぬ「身の毛も弥立つ」人材の質。それでも目も眩む程にカネもヒトもブ
ツも有り余らせるような相手と伍して商売をして行かねばならない。初めての
企業を訪れて、耳を疑うような経営課題を聞かされることが増えている。

「いっそ。全部アウトソースしてしまったら、と言う選択肢もありますよね」。
 自社の物流部門の倉庫作業を見学させてくれた専務に、感想を求められて、
「真面目に考えろ」との叱責覚悟で答えてみた。エンドユーザーの課題解決業
と自社を位置付けるかと考えあぐねていた専務は、核となる事業部分以外は極
力身軽にとの主旨の極端な私の意見に、「えっ」と一旦言った後、「まあ、考
えるとそう言う結論も見えてきてしまいますね」と呟いた。私は先程案内して
くれた永年勤務の物流管理者の将来を思い遣る。

 強みに磨きをかけ、小さなフィールドで確実に勝つことが要諦に変わりない。
けれども、フィールドの外の状況は以前以上に意識せざるを得なくなっている。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

昨年の後半に時折考えていた「死すべき技術としての経営」。
それをテーマに漸く準備が完了したシリーズ『応急処置』。
二月発行予定の第314話から4本シリーズでお届けします。
第一弾はいきなりミンツバーグの名作中の至言が炸裂です。

人材採用や育成の企画に携わると、
その作業群の究極の目標に、どうしても思い至ります。
経営の本質的な究極の目標は経営の消失とでも言うべき仮説。
じっくり考えてみます。

 第314話『その人の分け前』
 第315話『既成の新事実』
 第316話『充填方法』
 第317話『死すべき技術』

そして、技術としての経営の死後を考えた、シリーズの番外編
 第318話『浅知恵』

年の始めの「季節のご挨拶」DMでは一足先に
シリーズ4本プラス1本のソリアズからの抜粋を
コラージュ風にまとめました。
是非ご笑覧下さい。

弊社と直接接点のある方には、1月10日過ぎに郵送にて到着します。
弊社の「季節のご挨拶」DMをご希望の方は以下のアドレスに、
「季節のご挨拶希望」を件名にして御一報下さい。
 bizcom@msi-group.org

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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
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 発行しています。
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毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まず足掛け14年。

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 ソリアズのバックナンバーも各号の全文が読める弊社ブログ。
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次号予告:
 第312話 『社長の真相』 (1月25日発行) 
 秋葉原に会社を構える自称『オタク気質』の社長の仰ることが何か妙に思え
ました。そのおかしさの理由が、かなり後日になってから分った経緯をまとめ
てみました。

(完)