019 荒野のベニヤ板

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経営コラム SOLID AS FAITH 第19号
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ご愛読ありがとうございます。第19号をお届けします。
 
 暑い日が続きますが、皆様いかがお過ごしですか。以前にも、第7話「個性
ある社員」を転載していただいたノーマライゼーション住宅財団様から、再び、
ご依頼を受け、当コラムの文章を機関誌に転載することとなりました。(今回
は、メールマガジンとして発表前の原稿を翻案したものなので、正確には「転
載」とは言えないのですが…。)

 「With Life」という機関誌で、立派な装丁のものです。福祉や養護の施設に
置かれていることが多いそうですので、機会がありましたら、ご覧になってく
ださい。

 それでは、今後とも、お付き合いくださいご感想はお気軽にお寄せください。
(返事確実です。)
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その19:荒野のベニヤ板

 私の中学・高校時代の友人の一人にエホバの証人がいた。私は基本的に宗教
に興味がなく、別に感化されることもなかった。死にそうなときに輸血が受け
られなかったり、見ず知らずの人間に「兄弟」と呼ばれたりすることに、単純
に気が乗らなかったこともあるし、自分を自分以上に知っているらしい「神様」
がどうも好きになれなかった。

 しかし、彼の話の中には聞くに値するものが多々あった。とりわけ、進化論
に対する懐疑を表現する例え話は、説得の手法として秀逸だった。

「ただ風が吹くだけの荒野に、ベニヤ板や金槌や釘や鋸が散乱しているとす
るよねぇ。あるときに強い風が吹いて、ベニヤ板が巻き上げられる。その瞬間、
偶然、釘が飛んでくるってことはあるかもしれないよね。その後に、金槌が飛
んできてその釘をベニヤに打ち付ける。最適のタイミングと向きと強さで風が
吹き、散乱している材料と道具から、建物が建つ。そんなことって考えにくい
よね。じゃあ、こんなに複雑な組織ででき上がっている生物や、ましてや人間
が、例え何十回雷が海に落ちようとも、そして、例え何十億年経とうとも、何
かの意思なくして海から勝手に出てくるかな?」

 うまくできている仕組みには意志が働いている。この説得力ある話が、私は
好きだ。

 駅で、ホームに立っていると、「電車が発車になりまぁす」と駅員が叫んで
いる。この前、家にビデオの修理に来たサービスマンは、玄関で靴まで揃える
完璧な礼儀正しさであった。故障の原因を説明するとき、彼は「この部品が、
磨耗しやすい構造になっているんですよ」と説明していった。交換した部品も
高くはない。

 企業のパンフレットを見ると、鉄道会社では「皆様に安全な移動の手段を
…」のようなことが、家電メーカーでは「皆様の充実した生活のお手伝いを
…」などと書かれている。一つの疑問が湧き起こる。企業側はその商品やサー
ビスを目的を持って提供しているようであるが、社員のほうは他人事のような
物言いをする。一体誰が電車を発車させ、誰が磨耗する部品を設計段階で取り
こむのか。ユーザー側から見ると、答えはその企業だが、社員はその一部では
ないのか。

「電車を発車させます」「お求めやすくするために、こういう構造ですが、部
品は磨耗してもすぐ交換できるような設計にしてあります」こんなことを答え
る社員はベニヤ板にも自分で釘を打つだろう。
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