016 現実の蟻穴

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経営コラム SOLID AS FAITH 第16号
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第16号をお届けします。
 
ご愛読ありがとうございます。読者数は1200を突破後、微増を重ねています。
誠にありがとうございます。この類の読み物が好きな方がお近くにいらっしゃ
いましたら、そして、もしよろしければ、是非、講読をお奨めになってみてく
ださい。

 それでは、今後とも、末永くお付き合いのほどお願い申し上げます。ご感想
はお気軽にお寄せください。(返事確実です。)
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その16:現実の蟻穴

16年前、田舎から東京に移って一ヶ月も経たないある土曜日の朝、私は殺人
的混雑の電車を乗り継いで南千住の駅に足を運んだ。そこでは当時、日雇い労
働者が路上や公園に寝泊りしていた。紙袋を持って横断歩道を渡る人物が、通
りから通りへと「引っ越し」をしているのだと分かるのに時間はかからなかっ
た。そんな中を子供たちがその地区の中学校に登校して行く。

永畑道子氏の「ほんとうの学校を求めて」(講談社現代新書)を偶然手にし
てから、別に児童教育には何ら関係のない仕事をしていたにもかかわらず、上
京までの一年間、私はこの学校の登校風景をこの目で見てみたいと願っていた。

その頃でも「とうに」といわねばならないほどの昔から、PTAは環境浄化
を叫んでいる。学校の近くから、ラブホテルを追い散らそうとも、街角の本屋
や自販機でいかがわしい本は売られている。今なら、インターネットもあれば、
コンビニもある。地方都市でもテレクラがある。教師が買春を控えても、子供
たちの知人は、親は、援交や買春ツアーに精を出している。子供たちに何を教
えるべきか。

社員が手を抜くと、指示の通りに働かないと、憤る経営者の声を聞く。どれ
だけ訓辞を聞かせようとも、どれだけ研修を受けさせようとも、社員はどうし
ても楽な道を選択して行こうとするという。苦しいこと、汗を流すことを厭う
者ばかりだという。お客のわがままを聞き、納期を守り、書く文字は丁寧に、
言葉遣いは誤りなく。こんな緊張がなくても暮らして行ける方法を今の社員は
知っている。とりあえず今楽に生きる別の方法を知っている。

あるべき論で周囲の現実は変わらない。楽だから、楽しいから、そちらを選
択する者が居る。結果を変えるには何を教えるべきか。それは存在する選択肢
とその各々の先にあるものではないかと私は思っている。
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次号予告:縁故的予定調和(6月25日発行)
 採用活動を何度も重ねて、「ウチの会社には良い人材が集まらない」と嘆く経
営者の方のお話を聞いて、考えたことをまとめてみました。今号に続き、著者
自身、比較的気に入っている号です。ご期待ください。