309 ミクロ革命

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経営コラム SOLID AS FAITH 第309号
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 ご愛読ありがとうございます。第309話をお届けします。

 寒さが一入となりました。遅れ馳せ乍ら、来年の手帳を買い、予定を書き込
んでみています。独立してから一般的に想定される引退までの期間の約半分が
過ぎようとしています。一寸先で何が起こるかも分からないのに、一年の計を
考えることなどしたことがないのですが、自分の仕事のあり方などを振り返る
時間は少々持つようにしています。最近お仕事を戴けるお客様は以前以上に規
模の小さな事業の方が増え、よく考えている「死すべき技術としての経営」に
思い至ります。

「死すべき技術としての経営」については、現在、来年発行予定の久々のシリ
ーズモノでの紹介を予定しておりますので、もう少々お待ち下さい。(直接弊
社と接触のある方々には、新年早々のご挨拶状でも言及する予定でおります。)
今回の号はその「死すべき技術としての経営」の考え方を知った、最近嵌って
何度も読み返している増田悦佐氏の書籍のネタをベースにしたものです。

 経営改善の根幹に標準化と言う概念があります。技術の標準化はよく言われ
ていますし、何らかの社内検定試験などが存在する企業も珍しくはありません。
しかし、中小零細企業において、そのような技術や知識の標準化以前に、「会
社や職場の当然の状態に関する認識や表現」でさえ標準化しなくてはならない
ことはよくあります。

 今回の号はそのような取り組みの初期段階の困難を描いてみました。ウンウ
ンと頷いて戴ける方もいらっしゃるのではないかと思います。本文に対するご
意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納
期は5営業日!!
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その309:ミクロ革命

 にこにこしながら、私はテーブルの端の席で参加者の様子を見つめている。
今日だけでも既に3時間。議論に殆ど進展はない。社長が部屋の外へ私を呼び
出して言う。
「もう三回目じゃないか。こんな不毛な議論を社員に続けさせて、意味がある
のか」。

 社員二十数名の小さな金型工場。経営環境の悪化に危機感を抱いて、学歴・
年齢幅広い既存社員達の可能性を伸ばすと決めた社長は、スキルマップによる
作業標準化に、社員全員で着手させることにした。私は異業種他社数社のスキ
ルマップを事例として提示して、まずは作業全体の分類としての「柱」は幾つ
あるのか決めて下さいと指示した。
 
 社員は最低でも数年以上の勤務実績。装置から装置へ仕掛品が運ばれるのが、
社員間の常態的非言語コミュニケーション。挨拶と朝礼のほんの僅かなフォー
マル言語コミュニケーション以外は、休憩時間でも社員間の共通の話題など見
つからない。そんな組織構成員がいきなり自分達の作業全体の構成を議論でき
る筈がない。クライアント企業での当然の展開を勿論馬鹿にするでもなく、私
は精一杯の微笑で見守っている。
 
 大抵の小規模現場では装置の名前にさえ共通認識はない。「穴あけの大きい
奴」、装置名の略称、メーカー名の略称など。「佐藤がよく使うの」とホワイ
トボードに書かれていることさえある。装置各々の操作方法を誰にも分かるよ
うに記述することになると、パソコンを使える社員が半分もいないことが露呈
する。作業標準書の図と文字の構成など考えたこともない社員だらけの組織。
後の展開は更に難関と私は知っている。私は社長に「足りないものに、今の段
階で一気に気付いて貰わないと、この後が思い遣られますよ」と告げた。

「わずか二〇年後には同じメンバーで同じような戦争をもう一度やらなければ
ならなかったほど、不細工な問題を積み残しただけの戦争だった。けれども、
決着がついたことがひとつだけあった。それは、多民族多言語帝国は単一言語
の国民国家に絶対勝てない。と言う教訓である」。
 最近、私が酷く嵌って、読み漁っている増田悦佐氏の著作。その一つ、『そ
れでも「日本は死なない」これだけの理由』は、第一次世界大戦の歴史的教訓
を説明する。ページを捲る手を止めて、「『多民族』。『多言語』。『帝国』
ねぇ」と、私は嘆息する。「単一言語」の強さは「国家」単位の巨大な集団で
も遺憾なく発揮されるとの指摘に関心が湧く。

「ちょっと『多民族』っぽくて、ちょっと『多言語』っぽくて、ちょっと『帝
国』チックな組織の問題とは言え、高々二十人なら早晩強くできなきゃおかし
いよなぁ」とぶつぶつ呟いて本を閉じ、四回目の勉強会に向かった。

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次号予告:
 第310話 『高等教育』 (12月25日発行) 
 今年最後の発行号は、日本の大学教育の意義について考えてみました。零細
企業でも大卒採用に乗り出すケースが増えていますが、なぜ大卒なのかの答え
が用意されていることは比較的稀です。ご一緒に一時ご一考下さい。

(完)