307 見世物小屋

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経営コラム SOLID AS FAITH 第307号
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 ご愛読ありがとうございます。第307話をお届けします。

 秘密裏に進めて来たソリアズの13周年記念特別号がとうとう発行されまし
た。従来の周年記念特別号にはない、執拗なまでの現実描写の積み重ねは如何
でしたでしょうか。世に喧伝されるIT経営などとは全く異質な、中小零細企業
における満たされないITニーズのイメージが読者の方々に伝わったのであれば
幸いです。

 内容に凝ったせいか、少々校正が粗かったようで、数ヶ所の誤植のご指摘を
頂戴しました。弊社ブログ『MSI-TALES』では、誤りを訂正してあります。御
迷惑をお掛けして大変失礼致しました。また、御指摘とその御指摘に至る御精
読に心より感謝申し上げます。
 
 さて、今年も残す所、4号の発行を残す所となりました。長年の読者の方々
はご存知の通り、年末年始も全く気にすることなく、季節も時事も省みること
なく、毎月10日・25日の発行を重ねて参りますので、ご愛顧のほどお願い申
し上げます。
 
 今回の『見世物小屋』は、最近増えてきたオペレーションを見せる行為につ
いて考えて見たものです。ソーシャル系マーケティングによく見られる事業の
日常の公開や、所謂「情報公開ブーム」故か、本来お客様が見ることの無い筈
のオペレーションをわざわざ公開する企業が増えているように感じます。
 
 例えば、舞台裏を見せることで観客を喜ばせる発想や、厳しい稽古を見せる
ことで観客に価値を理解させる発想の劇団を想像することは一応できます。し
かし、その手法の濫用には疑問を感じざるを得ません。御一緒にひと時御一考
下さい。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想
などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その307:見世物小屋

 自宅から自転車で15分、まだ歩くのも少々覚束ない幼い娘を連れて、北海道
でも有名なチョコレート工場の見学コースに参加した。チョコレートの歴史な
どの展示物を見ながら廊下伝いに進むと突如視界が開け、チョコレート・クッ
キー生産ラインの終端を二階から見下ろすガラス張りの空間に出た。「わぁっ」
と言って、ガラス面に駆け寄る娘を追って眼下に広がる作業スペースを眺める。

 全身白尽くめの作業員達が二つのラインの間に各々立って、カーテンの陰か
ら次々と流れ出てくる焼き上がった製品の一個一個に視線を投げて確認してい
る。見慣れたクッキーの体を成していない不良品はかなり高い頻度で現れる。
片方のラインに気を取られていると、反対側のラインへの対処が遅れる。「ビ
ニール袋にドサって入れた、割れているのは、どうするんだろうねぇ。働いて
いる人たちで食べちゃうのかな。物凄い量だよね」などと娘に話し掛けていた
が、徐々に気が気ではなくなってきた。周囲の見学者も同様だった。

「あっち、あっち。ああ、こっちにも」と、指差しながら見ていると、作業員
が私達の様子に気付き、私達の指差す先を追うように不良品を取り除くように
なった。参加型のプログラムでもない様子なので、普段はどうしているのかと
訝らざるを得ない。
 
 派遣会社のSVと新宿の蕎麦屋で食事をした。少しの間、閉店していたが、
内装を変えたらしい。客席から厨房の中の人々の腰から上、頭ぐらいまでが見
えるようになっていた。そばの具か何かを落としたり、何か調理器具をきょろ
きょろと探している様子が見て取れる。客席側に立つ女性店員は、そんな様子
を背後に感じることもなく、数人いる客の様子に目配りをしている。

「リニューアルしてから、何か空いていますよね。やっぱり、あれでしょうか
ね」と私が尋ねると、この蕎麦屋によく来ていると言うSVは、頭を掻きなが
ら苦笑いする。
「厨房までいつも覗いていた訳じゃないけど、厨房の方もメンバーはそう変わ
っていないと思うんだよね。わざわざあの程度のオペレーションとも呼べない
ようなことを客に見せるようにして、前からそういうことだったと周知したか
ったってことになるね」。

 蕎麦を啜って言葉が途切れた彼に私は言った。
「或る種のエンターテインメントなんですかね。例えば、私が御社でSV相手
にやっている勉強会に伺う前に、ツイッターとかで、『前回の議事録をチェッ
ク中なう』とか『ん。今日使う資料を忘れてきたなう』とか呟きつつ訪問した
ら、今以上に参加者の満足度が上がって、料金も上げてもらえますか」。

 馬鹿馬鹿しいと笑って、彼は伝票を掴み立ち上がった。

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中小零細企業のオペレーションで特に求められる付加価値。
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次号予告:
 第308話 『策謀屋』 (11月25日発行) 
 普段、「業務系対人コミュニケーション企画請負業」と名乗っていますが、
英語版リンクトインを始めるに当たって、自社の業務内容をどう表現するか
練っていた際に考えたことをまとめてみました。

(完)