289 見識の用意

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経営コラム SOLID AS FAITH 第289号
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 ご愛読ありがとうございます。第289話をお届けします。

 大寒を過ぎて、寒さが幽かに緩みつつあるように感じられます。毎冬恒例の
如く一度は罹る、下痢・嘔吐が酷くなるウィルス性腸炎も、なんとか発症には
至らずに済んでいます。中京地区にインフルエンザの猛威とのニュースを見て、
遅れ馳せながら予防接種を受けたりもしました。このまま大過なく冬をやり過
ごせればと思っております。皆様は如何お過ごしでしょうか。

 前号のご挨拶で報告した弊社のA4版寒中見舞いの不達事故は、郵便局にク
レームを入れた結果、調査に入ったとのことでしたが、クレームから一ヶ月近
く経って何らの連絡もない無責任さに呆れ返っています。民営化によるものな
のか、それ以前からなのか。最寄郵便局のみのことなのか、組織全般に見られ
ることなのか。全く分かりません。いずれにせよ、弊社寒中見舞いの不達が疑
われる方は、お手数ながら、メールにてご一報賜りたく存じます。
 
 今回の号は、育成手法の「シャドウイング」について議論した経緯などから、
「見て分かること」の事前の仕込みについて考えてみました。当てにならない
「百聞は一見に如かず」に、お考えを巡らせて戴ければと思います。本文に対
するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の
目標納期は5営業日!!
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その289:見識の用意

 以前から関心のあった企業が出すビジネス誌から取材の依頼が来て、取材お
断りのいつもの判断を翻して、社内勉強会の特集の一角を成すことになった。
読者企業から編集部宛には特段の問い合わせがあったのかどうか分からないが、
メールマガジンやサイトで紹介したせいか、自分の事前予想より多くの反応が
あった。

「けれども、勉強会を見学やら傍聴やらしても、あまり仕事の役に立たないと
思いますよ。私自身はノウハウを秘匿しようとあまり思っていませんし、クラ
イアント先が了承して下さるかと言う問題をおいておいても、見ることではあ
まり学びがないと思うんですよ」。
 クライアント先の勉強会を見学したいと言ってきたコンサルタント志望の中
高年の男性がいる。大手企業OBで幹部経験者の彼の依頼を私は断ることにし
た。

 勉強会も組織改善と言う課題解決の手段である以上、初期状態とあるべき状
態を比較してそのギャップを埋めるように構成員を導く必要がある。初期状態
を見ることなく、途中経過の或る回を見ても、その勉強会の状況を評価するの
は難しいのが、第一理由。勉強会の運営方法は、その組織の風土や、参加者の
スキル・レベルや人間関係など、様々な要素を鑑みて決められる。特定の勉強
会の或る特定の回の善し悪しを知るには、組織と参加者についての洞察や仮説
が必要であるように思えるのが、第二の理由。

「なるほど。確かに見る前にやることがたくさんありそうですね」と彼は得心
した。

 或る会社の若手社員を育成する担当者の勉強会。彼らの目下の最大の課題は、
テクニカル・スキルはほぼ完璧なのに、組織の一員として能動的な動きが全く
できていないように若手社員が見えること。影のように付き纏うことから名づ
けられたシャドウイングと言う手法を試そうと検討が進められている。具体的
な一日の作業中での優先順位付けや価値判断の基準、そのようなものを学ぶに
は優れた手法である反面、付き纏っている研修者の膨大な人件費が運営上の課
題。

「勉強会の時間前の雑談で話した勉強会見学希望者の話ってあるじゃないです
か。見るだけで、本当に分かるのかってことですよね。皆さんのケースでは、
少なくとも自分達の職場や、そこで発生する作業については若手社員の人達も
分かっていますよね。しかし、それが洞察だの仮説だのということになるとか
なり怪しくはありませんか。育成者の日常作業を見せながら、その判断基準や
作業の意義とかを綿々と説明してゆくか、見る前にそういうことを教え込んで
おくか、何かそういうメカニズムがないと、皆さんの場合はシャドウイングが
上手くいきそうにありませんね。コスト額よりも、まずは効果の出る方法論を
もっと揉んだ方が良いように思いますよ」。
 私は参加者の様子を窺いながら、ゆっくりと説明した。
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次号予告:
 第290話 『蓼食う虫』 (2月25日発行) 
 書籍の内容を見ても、就職指導の現場に触れても、独立志望の人々の意見を
聞いても、何かの強烈な洗脳でも浸透しているのか、「スキを仕事にする」が
頻出して辟易します。この言説について考えてみました。

(完)