278 漲る意欲

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経営コラム SOLID AS FAITH 第278号
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ご愛読ありがとうございます。第278話をお届けします。

 札幌では学校の短い夏休みが終わり、朝夕は涼しい日が増えて来ました。年
を重ねると時が経つのが速くなると言いますが、あっと言う間に今年も後半に
入り、残す所3分の一となります。ソリアズの記念号の準備をして、11月末に
は発送する恒例の英文クリスマスレターの原稿を書いて、これまた恒例のゴム
版彫刻の年賀状を作る。年の後半は恒例の作業に追われて終わっていく感じか
と思っております。

『漲る意欲』と題した今号は、社員の意欲を経営者はどのように捉えるべきか
について考えてみたものです。徒手空拳の状態でも、熱意や意欲で起業を果た
した経営者は数多く存在し、弊社のクライアントにも、そのような経営者が率
いる企業が幾つも存在します。そのような経営者は、幹部・社員の評価や異動
の判断に当たって、意欲や熱意を優先的な評価軸にしたがる傾向があるように
思います。その際の留意点などについて考えてみたことをまとめてみました。
本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへの
お返事の目標納期は5営業日!!
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その278:漲る意欲

 社長の肝煎りで理念浸透活動をプロジェクト化して行なっている会社がある。
その会社をいつものように訪れるとメンバーが足りない。尋ねると退職者が出
たという。
「メンバーとして相応しいコミュニケーション力があり、他の社員から慕われ
ているので、声を掛けてみたら、自分からやってみたいといっていた幹部社員
なのに、残念です。思う所があるということで退職したと私は報告を受けてい
ます」と後から現れた社長が言う。
 
 この会社は店舗のオペレーションを丸ごと請け負う業務請負を事業としてい
る。或る店舗の運営を請け負うにあたり、その責任者を組織の中から募ること
が常である。必ず立候補する者が社員から複数現われ、選ぶのに苦慮すると言
うのが社長の自慢。立候補者は他店でのオペレーションの経験を積んで、使わ
れる立場から使う立場で思うようにやってみたいと思うようになるという。社
長はこれを自立的な姿勢が芽生えたと評している。
 
 話を伺うと目が覚めるようなマーケティング手法などで売上が著しく高くな
るわけではない。発注側の企業が行なうよりも、コストが抑制され利益が上が
るのが典型的パターン。社長は付加価値創造に取り組めと檄を飛ばす。利益を
作れと言われると、店舗責任者は、人員をカットし、自分がサービス残業に入
ることがよくあると本部の幹部が言う。

 次月。再びプロジェクトの現場を訪れると、理念浸透のプロジェクトのメン
バーがまた欠けている。聞けば、店舗責任者が退職したために穴埋めに人が取
られた結果だと言う。やる気がある社員なのに、方向性が誤ってしまって結果
が出ない。早く方針や理念を徹底してゆくことが必要だと社長は繰り返し強調
した。

 中小零細企業の強みの源泉は、オーナー経営者の熱意と努力以外にないもの
と思うことが多く、現実にそれを痛感する場面も多々見てきた。意欲ある経営
者達は、努力を重ね、経営学を学んだ訳でもないのに、思考と試行の積み重ね
から経営の最適解に至ることがよくある。そして社長達は、意欲ある社員を登
用すれば、望ましい結果が出ると確信する。

 そんな社長達に尋ねるべきことがある。
 社員が言葉で表現する意欲は、時折、自分が嫌な職場や嫌な上司から逃れる
ための口実であったりする。経営方針や経営理念はハーズバーグの二要因説に
拠れば、不満は減らせてもやる気を引き出しはしない。社内と環境を俯瞰する
ことができない社員の学びの努力は、多くの場合、最適解に辿り着かない。溢
れるように見える熱意でさえ、やるべきことを一から手取り足取り教えねば、
空回りを繰り返して簡単に磨耗してしまう。
「それが、あなたとは違う、あなたの部下の本当の姿ではないか」と。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

10月・11月、両月初旬に、岡崎市にて、
店舗経営者の勉強会の一部として、
一回二時間ほどのお話をすることとなりました。

売れる店作りは、
当コラム 11周年記念特別号『不忠の咎』でも、
念入りに扱ってみました。
その関係か店舗の集客や販促の案件を
幾つか戴けるようになりました。

店舗の経営改善に特化した何らかのノウハウが
ある訳ではありませんが、
マーケティング力強化の観点から、
経営改善の企画を致します。
ご関心を賜れましたら、以下のページをご覧下さい。

弊社サイト関連ページ:
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当メルマガ 11周年記念特別号『不忠の咎』
http://tales.msi-group.org/?p=411

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 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第279話 『PU』 (9月10日発行) 
 非正規雇用労働者の立場は弱く、保護しなくてはならないとの論調をよく耳
にします。高いパフォーマンスが期待されれば、相対的な立場は強くなるのが
一般的には本当でしょう。正規雇用より弱い立場だからこそ考えなくてはなら
ないことについてまとめてみました。ご期待下さい。

(完)