269 結束の勝手口

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経営コラム SOLID AS FAITH 第269号
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ご愛読ありがとうございます。第269話をお届けします。

 度重なる余震が収束に向かっているように感じられる中、毎週上空10000メー
トル近くから巨大津波の惨状を俯瞰しながら東京での仕事に向かっています。
雨天の後に東京でも高い放射線レベルの報道を聞き、計画停電の多大な影響を
見るにつけ、東京電力の人災の酷さに思い至ります。

 夕方早くに閉まる新宿の百貨店に行くと、夜逃げした後のように引き払った
後の海外高級ブランドのショップに出くわします。あちこちの職場からアジア
系労働者も「辞めます。逃げます」と去ったと聞くと、国ごと被災地であるこ
とを思い知らされます。皆様は如何お過ごしでしょうか。

 今回の269話は、企業が作り上げた経営の効率的な仕組みが、急激に陳腐化
してしまう二例を比較して、為し得ることを考えて見たものです。強い企業組
織も大きい企業組織も淘汰に耐えることができず、ただただ経営環境に適応で
きた企業組織だけが、生き延び、勝ち残ります。仕組みの陳腐化は新たな環境
への適応の開始ではありますが、磐石であればあるほど、破棄するのが躊躇わ
れます。そのような状況を一緒にひと時お考え戴ければ幸いです。本文に対す
るご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目
標納期は5営業日!!
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その269:結束の勝手口

 マーケティング実務の経験が全くないのに、写真用フィルムのメーカーのマ
ーケティング担当として採用された私は、零細組織の数少ない先輩の勧めで、
最初の一年間を、業界紙誌を読み漁ることと、各種の業者さんの売り込みを多
数こなすことに専念していた。敵は国内市場シェア7割の強大企業。写真用フ
ィルムは製品品質の違いが殆どの使用者に体感できない。マーケティングの4
Pで言う所のプロダクトでは差別化が難しい。低単価なのでプライスでも差別
化が難しい。その企業は、圧倒的な流通網の構築と膨大なメディア露出で7割
のシェアを実現していた。

 一年間で、7割のシェアの綻びを探す癖がつく。その企業は流通網構築のた
めに、「土地とダーマト一本持っていれば、すぐ写真屋を開かせる」と噂され
る施策を維持してきた。「融資もすれば、店の設計から建築まで、何でも支援
して自社製品を扱う店を全国津々浦々の商店街に作り上げてきた。そのように
してできた写真店が業界団体を構成する。業界団体も実質的にあそこの傀儡組
織だ」と業界紙の編集長が語ってくれる。

 その全国単位の業界団体の加盟店が経営不振に揺れ、支援を強大メーカーに
求める方向に動くと言う噂を耳にするたびに私はほくそえんでいた。十年以上
前の私が担当だった時代。カメラ量販店、そして家電量販店が台頭してきた時
代。強大メーカーがこれらの大型店チェーンとの取引を拡大し始めると、系列
零細小売店舗網はどんどん重荷になった。カメラ販売は量販店に奪われ、プリ
ントサービスは洗濯屋や文具店の0円プリントに奪われ、フィルム販売さえ、
コンビニに奪われていく。強大メーカーが自ら作った流通網の清算に苦悩する
姿が業界紙誌の記事に描かれるたびに、自社製品拡販の機会を私は窺っていた。
 
 数年前、社員の定着率が高くないままに、新卒社員の大量採用を始めたシス
テム開発会社の社長とお会いする機会があった。新卒社員採用時の選考メカニ
ズムと入社後の育成・動機付けを、まさにシステマチックに実行する企画を立
案し、全社規模で運用を行なった。大成功の結果に満足だった筈の社長は今、
景気が後退したので希望退職を募ったが、動機付けが効きすぎているようで、
なかなか辞めてくれる者がいないと、顔を曇らせて言う。この会社の魅力を植
え込み、この会社の組織の魅力を体感させる仕組み。現場で必要とされるスキ
ルがどんどん身につき、充実感が得られる仕組み。総てが希望退職の働きかけ
と逆行するのは想像に難くない。
 
 企画立案のプロセス上の前提条件が変化したときの企画の調整作業の難易度
は、企画立案のそれよりも遥かに高い。システムを構築する時、通常操作経路
に拠らないで、プログラムの運用テストを効率的に行なうため、“バックドア”
を設けておく。クライアント企業と長く付き合うには、企画結果の動機付け策
にさえ、バックドアが必要であると、最近気付いた。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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当コラムでも周年記念号などの文章構成でおなじみの
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●「デキる幹部について」
 http://www.youtube.com/watch?v=lxWj62YuWTY

本件についての弊社へのお問い合わせは、
こちらのメールアドレスまで、お願いします。
 bizcom@msi-group.org
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
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次号予告:
 第270話 『毎日買物日記』 (4月25日発行) 
 書籍で「嫌消費」世代について読みました。消費に向かわない理由は何であ
るのか。そして、消費に向かわせる方法は何であるのか。書籍にある解とは別
に、色々と考えてみたことをまとめました。

(完)