テレビのプリキュアはもう卒業して、クラスでも見ている女子はいないという、四月から四年生になる娘に、『ぴあ』が最近やたらに出版するムックの一つの『プリキュアぴあ』は要るかと尋ねたら、「買って欲しい」と言うので、買い与えました。基本的に与えられた本は穴の開くほど読む娘が、翌週には『プリキュアオールスターズのDX3』を見に連れて行って欲しい」と言い出しました。恐るべき販促効果です。
札幌でやっているのは一館だけで、春休み中は大混雑が予想されたので、DX2の時同様に小樽の映画館に行きました。札幌の家は名前の通り札幌の西に位置する西区にあるので、札幌市の西に隣接する小樽市もそう遠くはありません。
第一作のDXでは14人。第二作のDX2では17人。そして今回は総勢21人にプリキュアと称する主人公達は増殖していました。今回のオールスターズの悪役は、今迄とは異なり、歴代のプリキュアの単体劇場作品に登場した悪役が甦ると言う想定ですが、登場した魔女がいきなり「いつの間にやら数が増えたわね」と言い放つのには苦笑してしまいました。
『プリキュアオールスターズDX3 未来にとどけ!世界をつなぐ☆虹色の花』と言う長い正式タイトルですが、『プリキュアオールスターズDX』シリーズは、実は三部作と言う想定だったと言うことで、今回が最終作であると言う話です。劇中、21人ものプリキュアは、三グループに分けられて別空間で敵と戦うことになります。各々のプリキュアのシリーズの類似した役回りと性格のキャラばかりをグループにまとめた形に上手く分けられているため、本来のシリーズ別の集合必殺技が出せず、やたらに苦戦すると言う上手い設定です。プリキュアが苦戦するのは、話の盛り上がり上、構わないのですが、混成部隊を似たキャラ同士グループ分けされると、どれが誰か識別するのがかなり大変です。画面をさっとパンされたりすると、全く区別がつきません。
このグループ分けは、この手の物語の登場人物のキャラ分類として見ると、興味深いものです。大雑把に分けると、「真面目で思慮深い子」、「活発で明るく男勝りっぽい子」、「キャピキャピして夢見る女の子」で、そう言えば、娘が小学校の同じクラスの女子を分類するときにも概ねこのような“分類”ないしは“軸”が使われています。
全体で70分で、DX2より2分短く、DX(1)と同じ尺です。DX(1)に較べて、50%増しの登場人物の数です。変身後に切る見得と、各シリーズ毎の集合必殺技は手抜きなくキッチリやってくれるので、本当に時間が足りず、舞台設定その他に対する説明は殆どなく、上映開始後10分を待たずして敵と対峙するような展開です。おまけに、劇中後半では、前半の各々が互いに勇気付けあった場面を回想することが連発するなど、やたら水増し感があります。
さらに、劇場の入口には、「一部映像カットのお知らせ」なる立て札があり、「東北地方太平洋沖地震で被災された多くの方がいらっしゃる中で、災害を想起させる映像をそのまま上映するのは適切でないと判断した」と言う理由から、「一部を削除しての上映」としたと言うことです。これによって、三部作の中で最短の尺になり、当然、見得と必殺技の構成比率が高まったことになります。
DX2の時のような、ダンス・シーンのエンディングなどもありませんし、設定の妙やストーリーの捻りも少なく、三部作の中で好ましさで言えば最低レベルであるようには感じました。
しかし、『走れメロス』並みの友情への執着や、念じるように反復する勧善懲悪、強大な敵に圧倒されても続く不撓不屈、そして、何より最後の最後に絶叫と共に放つ必殺技のカタルシスは、間違いなく健在です。定番の展開がストーリーの粗末さに関わらず、きちんと存在し得るということが、力強く証明された作品であることも確かです。『水戸黄門』や『銭形平次』などの時代劇のような定番の安定した様式が持つ面白さが見出される気がします。これがいつまで続くのか分からないシリーズであるのなら別でしたが、三部作で完結と言われると、DVDは買いと言うことになるでしょう。(そうすれば、劇場によっては見られたはずのカットされた場面も確認できることでしょう。)