264 放置される黒箱

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経営コラム SOLID AS FAITH 第264号
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ご愛読ありがとうございます。第264話をお届けします。

 この冬のシーズンに入ってから、体調が優れない日々が続いていて、年が明
けてからは、何とか普通に生活できるようになっていました。一月も半ばを過
ぎて、突如、腸炎性の風邪に罹ったりと、年のせいなのか、何か他の原因によ
るのか、仕事の予定をこなすだけでもかなり必死の毎日が続いています。皆様
はいかがお過ごしでしょうか。

 今回は、或るパチンコ店オーナー経営者の経営観について考えてみた号です。
店舗の業績は何によって左右されるのか。この疑問を伴わない経営のあり方に
ついて、一緒に御一考賜れましたら幸いです。本文に対するご意見・ご感想を
お待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その264:放置される黒箱

「売りに出ている物件も実はたくさんありますからねぇ。まあ、店のうち幾つ
かは、“不動産”としてしか見られていないから、今回のような話になってし
まうんでしょうね」。
 取引先の専務は古びたビルの上階を見上げながら、路上で私に言った。専務
はパチンコ店を顧客とする所謂“業者”。私がパチンコ店チェーンでの案件を
長く頂戴していることから、専務の会社でもお仕事を頂戴することとなった。
専務は私のパチンコ店販促策案を面白がって、彼が出入するパチンコ店オー
ナー経営者との面談の機会を作って下さった。
 
「随分と手間がかかる作戦だよね。そこまでやらないとパチンコ店は経営が上
向かないのか。これはかなり問題だね。勉強になったよ」と、パチンコ店のオ
ーナー社長は、私の話に一頻り耳を傾けた後に言い放った。
 社長は既に数十年パチンコ店を経営し、二桁のチェーン店を持っている。ど
の店も稼働率は芳しくなく、幹部は常に叱咤されているのを専務は知っている。
社長自身も自店をよく巡回して徐々に低下する利益額を肌身で感じている様子
だといわれていた。しかし、社長は販促策による改善に関心があったのではな
く、店舗の惨状の把握に関心があっただけというのが、今回の結論だった。
 
 賃貸マンションの管理会社のコンサルタントに会って話をする機会があった。
不動産業界は、旧態依然たる業界慣習がまかり通る、淘汰され行く業界という
のが彼の持論である。
「入居者がいるマンションを買うと、マンションの見取り図を前に、実質的に
そこにある情報だけで、投資物件として購入の判断がなされるんですよ。極端
な話、そこにシャワーがあるのかないのかや、傷み易い給湯器などの設置年も、
何にも分からないで買うケースも珍しくない。なのに、サラリーマンが貯金代
わりにと言う感覚で買ったりする」。

 コンサルタントの事務所からの帰途。駅前商店街にはしもた屋が目立つ。
「店舗と住居が同じ棟で、バンバンと夜中でも客がシャッターを叩くと、すぐ
に出てくるような店主がどんどん減って、今では店の土地を借金の形にして、
郊外に家を建てて、店に重役出社する店主ばかり。こうだから商店街が衰退す
るんですわ」。
 診断士の実習時、指導に当たって下さった小谷先生が、言っていたのを思い
出す。店舗は所有すると、一定の利益を生み出し続ける“システム”。商売の
工夫も、常連客との語らいも、目に楽しい陳列も、システムの内部に封じ込め
られていて、所有者はそれを意識することがない。システムが陳腐化して利益
を生まなくなれば、改善の余地は殆ど検討されず、現在価値を上回る価格での
買い手の出現が待たれる。
 
「改善するより、良いタイミングで売るっていうのは、やっぱり、そういう商
売のコンセプトと言うか、ビジネス・モデルなんでしょうね」。
 パチンコ店本社を後にして駅に向かいつつ、パチンコ業界の“業者”である
専務は苦笑いしながら言った。開くことができないブラック・ボックスの扱い
に企画立案の余地はあるのか、彼の表情を見ながら、私は考え込んだ。
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次号予告:
 第265話 『溜まる時間』 (2月10日発行) 
 中小零細企業の経営は「機動性」と「差別化」に尽きると言われます。差別
化の実現には、顧客ニーズを捉えた策の積み重ねが必要で、時には機動性を犠
牲にしても、奇抜な策を練る場面が必要です。その作戦会議の現場を描いてみ
ました。

(完)