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経営コラム SOLID AS FAITH 第262号
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ご愛読ありがとうございます。第262話をお届けします。
クリスマス当日となり、とうとう今年最後の当コラム発行日です。やっと寒
い日々に体が慣れてきたのか、芳しくなかった体調も多少ましになり、年末の
仕事は勿論、恒例の大判寒中見舞いの発送準備、決算用意など、それなりに忙
しい日々を送っています。年末年始のど真ん中に週末が来て、短めの札幌での
年末年始は掃除や事務所作業に追われて終わりそうです。皆様は如何お過ごし
でしょうか。
今回の号は、働く人々にとっての働く機会や評価される機会のあり方につい
て、新宿エリア外れの牛丼屋で考えてみた内容をまとめたものです。東京とそ
の周辺では特に、飲食店などで外国人が働いているのを目にするようになって
久しくなりました。そのような光景を観たときには、今号の内容などを思い起
こしていただけましたら幸いです。本文に対するご意見・ご感想をお待ちして
おります。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その262:機会の奔流
「ありあと、おざいまった?。まらいらさいまっせ?」。
最近どんどん面積が広がった新宿エリアの辺境の牛丼店に、私が着いてから
まだ数分。数度この店員の声を耳にした。彼の見送りの挨拶を楽しんでいる女
性客もいる。中南米出身者のように見えるこの男性店員の注文の復唱さえ聞き
取れない。「うん。多分、それで合っていると思うよ」と地元商店街の常連客
は、注文を一所懸命に復唱する彼に優しい。
彼の母国にはこのような挨拶を客に対してするように要求する職場はあるの
だろうか。彼が帰国して商売を始めることになったら、この慣習を踏襲するだ
ろうか。彼の真剣でたどたどしい見送りの挨拶に返礼するどころか、頷く者さ
えいない。労働は時間で測り、配膳や受注を単純に作業で評価するなら、この
ような挨拶の意義を疑って不思議ない。
先日連載が終了したコミック『エンゼルバンク』には、外国人労働者を大量
に雇用する農業経営者の話が登場する。著者は、登場人物に、彼らは日本人と
違って、故郷に送金するという明確な目的を持っているから根気があり、一人
前になるまで努力し続けられると語らせている。外国人経営者を単なる安い労
働力と捉えるのではなく、日本文化の担い手として認識し、人口減社会の中で
労働力確保のためにも、日本文化の宣伝マンを作り上げることが重要と説明さ
れる。
「超先端国・日本の実力」と副題がついた『21世紀、世界は日本化する』の
中で、日下公人氏は、日本が文明の先端の形を持ち、世界をリードすると述べ
る。脱軍備・脱武器輸出・脱宗教・脱イデオロギー・経済第一・清潔第一・勤
勉第一・平和第一・少子高齢化・女尊男卑などと、枚挙に暇ない。住みたくな
る国としての日本。頷く所がかなりある。
独立したて頃、訪れた零細鉄工所で、中国人労働者の前で、ゆっくりと拍手
しながら、工場でよく使う言葉を、私は発音して聞かせた。
「中国人労働者が増えてしまってなぁ、よくやってくれるんだが、ホウレンソ
ウがぐちゃぐちゃになっちまって。何人かは分かる奴がいるんだが、通じが良
くなるように、工場の言葉の研修をしようかと思っていてよ。留学時代に外国
人に日本語を教えていたんだってな。小遣い程度しか払えんが、なんかうまい
ことやってくれ」との社長の依頼で企画した。
留学前に朝日カルチャーセンターで一年間学んだ日本語教師養成基礎講座。
留学中も学生に教えて小銭を稼いだ。「留学して英検一級を持っている中小企
業診断士って、稀じゃないですか。英語を使った商売をなさらないんですか」
と尋ねられることがある。留学したのは大学で学ぶため。二年半で四年制大学
を卒業して、外国人がどのように振舞えば、その地で機会を得られるかを考え
尽くした体験が、学位以外の最大の収穫。一所懸命さが言葉の壁をも乗り越え
て、機会に至る道筋を実現する仕事は、かなり面白い。
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次号予告:
第263話 『解せない記号』 (1月10日発行)
新年第一号は、留学時代に実感した日本の記号消費のあり方について考えた
ものです。記号消費は長く論じられてきていますが、ものが売れない理由を記
号論に基づいて少しだけ考えてみました。ご期待下さい。
(完)