260 駅の伝言

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経営コラム SOLID AS FAITH 第260号
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ご愛読ありがとうございます。第260話をお届けします。

 冬らしい気候になってきて、寒さが苦手な私は体調が今一つな毎日を過ごし
ています。前号をタイマーセットして、発行日に至らぬ前に、8年来お世話に
なったクライアント企業の社長が逝去されました。当メルマガにも書いたエピ
ソードですが、弊社の売上急減に際して、全く無条件に先方の案件の単価を引
き上げて、弊社を支えて下さった方でした。今後も先方企業にはお取引戴く予
定ですので、案件対応の質と成果によって、恩返しを長くしてゆきたいと考え
ております。社長のご冥福を心より祈っております。

 今回の号は、新幹線の駅で見かけた光景を二つ重ね合わせて、大きな組織の
統制について考えてみました。文中の新幹線駅で起きたエピソードは、既にク
ライアント企業の方々には日常の接触の中でお話している私の実体験です。最
近、特定の書籍の読後感が内容に含まれない号が続いていることに、発行原稿
を構成しながら気付きました。次号は、巻末の予告にもあるとおり、書籍紹介
と見紛うような内容ですので、リアルなエピソードを今回までお楽しみ戴きた
いと思います。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴した
ご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その260:駅の伝言

 静岡に行く新幹線に乗る駅に着く。時間があったので話題のエキナカの飲食
店で昼食を取った。通された店奥の席の近くには、予備のレジが厨房脇に設置
され、店員数人と厨房の数人が首を伸ばしてプリントアウトを覗き込んでいる。
チェーン全体の締め日なのか、売上の多寡をごそごそと議論し続けている。ど
う考えても、来店客にも聞こえる場所で続ける会話ではないだろうと、その小
さな円陣の一人を呼び、「そういう話を聞かせ続けるのが、こちらの接客の当
り前なのか」と言った。悪びれもせず、「ああ、すみません」と一言だけ言っ
て、店員は円陣に戻り、売上分析を皆で続けた。
 
 チェーンの本部のサイトでは、連絡先が明確ではなかったので、エキナカの
連絡先にメールでその日の出来事を伝えると、数時間後には、謝罪と実施済み
の対策内容を簡潔にまとめた返信が届いた。
 
 数週間後、再び静岡に仕事で行き、夜遅く新幹線で帰京した。客もまばらな
車両の中に泥酔した男性客が一人いる。終着駅で皆が降りても、床に転がり落
ちたままで寝ている。私より一足先に降りた客が、ホーム上の初老の駅員に泥
酔客の存在を善意から告げていた。信じられないことに、初老の駅員は無言で
頷いただけだった。善意の申告客は、不愉快そうにその場を立ち去り、在来線
への改札口に移動する。そこには、改札の通過客も殆どいないせいか、女性駅
員が数人屯して、ペチャペチャと話し込んでいる。その一人に向かって、申告
客はホームの不遜な駅員のことを告げ直す。今度の女性駅員は、一応、謝るこ
とを知っていた。新幹線の駅で働く者には、自分の作業や雑談に集中するあま
り、客に耳を貸さない性向があるのかと、サンプルは少ないものの一連の出来
事から想像してみた。

 私が育った北海道の小さな町には、高校生の頃の厳冬の日、通学中の私もエ
キストラ出演している筈の映画『駅 STATION』にも登場する小さな駅があっ
た。待合室に隣接する事務所には、見える範囲で数人しか駅員がいない。蕎麦
屋、キオスク、土産物屋があるが、どれも店員が一名入るのが限界のような小
さな店。むしろ、売場と呼ぶべき代物。店員も駅員も皆見える範囲にいて、仕
事に取り組んでいる。その中の誰か一人が、乗降客の話を聞かずに叱責された
なら、何らのホウレンソウもミーティングも必要としないで、周知と改善が駅
全体に施されたことだろう。

 独立起業して数年のクライアント企業の社長と話した。数人の社員を抱える
ようになり、業績は不況下でも悪くない。世の中の好不況に関係なく、御蔭様
で業績を伸ばして来られたと、自社の経営を語り始めた社長は、将来組織を大
きくして行けば、優秀な人材も入って、強い組織になるだろうと言った。
「大きくなると、伝わらないことやできないことも増えますけどね」と、私は
応じた。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのメッセージ】

8年前当時、何らの実績のない私の、
行き当たりばったりの運用が前提の、前代未聞の「勉強会」企画を認めて、
現時点で、最長のお取引年数のクライアントとなって戴き、
中小企業診断士でも商業部門の私に、製造業の現場を学ぶ機会を下さり、
新卒採用と育成の奇策の数々を試すことを許容して下さり、

ご要望に従って、GWを丸々潰して書いた『人材育成のレポート』は、
その後、クライアント各社にて読まれる汎用性高い資料となり、
他にも数々の弊社企画のプロトタイプの案出にご協力戴いた
クライアント企業社長のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

前書きでも書いたとおり、社長は弊社の売上急減の際に、
弊社を“買い支えて”下さり、弊社の今を作って下さいました。

後を継ぐ専務にお願いして、
読書好きで勉強熱心だった社長の棺にプリントアウトを入れて戴いた
前述エピソードを含む『互助の始まり』を、
その後も何度も読み返しております。

当コラム第204話『互助の始まり』
http://tales.msi-group.org/?p=275

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 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第261話 『可視世界』 (12月10日発行) 
 自分の机の周りに散在する書籍の幾つかに眼を通しながら、気づきと改善の
可能性について考えてみました。いつもとは少々違う文章の展開を試してみま
した。ご期待下さい。

(完)