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経営コラム SOLID AS FAITH 第256号
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ご愛読ありがとうございます。第256話をお届けします。
9月も終わりに近づき、急激に秋が到来した様子です。暑いと調子がよくな
る私には、疲れ易く、眠い毎日が始まりました。そのような体調の中、最近数
件一気に始まった案件の準備で、ゼロから企画を練る作業を連続してなんとか
こなしています。
10月末日に発行予定の11周年記念特別号の企画は、原稿作成が徐々に進
んでおります。ソリアズが原理原則的経営論を排した日常目線であることから、
どうしても店舗経営が事例に多く登場してしまいます。そこで、11周年記念
特別号は店舗経営についてソリアズの切り口から考えてみることにしてみまし
た。店舗関係のテーマを含まないソリアズの号は省みられないこととなり、ソ
リアズ全体を扱うことの多かった記念号の経緯から、企画面での逸脱を計って
みました。
今回の号は、遥か昔、組合が非常に強い職場での残業決定プロセスを、実体
験から振り返ってみることから始めて、残業の価値を考えてみます。企画段階
では、第240話『不本意な取柄』(※)と混じっていた話なのですが、ストー
リーを整理した結果、二つの話に分化しました。各々に論点が明確になって読
みやすくなったものと思っています。本文に対するご意見・ご感想をお待ちし
ております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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※ 第240話『不本意な取柄』 http://tales.msi-group.org/?p=371
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その256:留保制限
4時半過ぎの地方電話局の機械室。定刻が近いのに、作業はずれ込んでいる。
特段急ぐ様子もなく工事者は、手許から目を逸らさず、「どうですかねぇ。き
ちんと片付けとかしたら、5時半にはなっちゃうんじゃないかなぁ」と、脇で
見守る主任に報告する。主任は足早にパーティション一枚向こうの事務所向か
う。事務所に並んだ机は二十に満たない。奥の三席では転勤族の課長と係長二
人が黙々と事務作業を進めている。
五十過ぎの主任は地元で採用されて以来この職場にいる。交換機の変遷も社
員の異動も、総て知っている。主任は事務所隅の電話の受話器を持ち、内線を
かける。相手は局内の小さな一室、組合事務所に居る分会長に状態を報告し、
残業の発生の承認を得る。
「ええ。そうです。作業はもう終わりに近いし、家庭持っていない奴の方が良
いでしょうから、市川に続きをさせようと思います。市川はまだ慣れていない
から、多目に見て一時間でしょう。ええ。勿論、時間単価で人選したのではあ
りません。社員の家族も含めた見地からの選択です。それで良いですか。では、
課長には分会長から連絡お願いします」。
昭和の終わり近く。初任給9万円余の私の一時間の残業は、いつも、予め内
容を同じ場所で十分認識している課長が、組合分会長から事態を説明する一報
を受けて、「そう言う訳だから、頼むな」と私に告げて、正式発令となる。
田舎町では、どこに行っても知り合いの目があって、アルバイトの口もない。
私の入社直前に、社会の多数派とは今でも言えない完全週休二日制が導入され、
組合は大幅な実質的賃上げと組合の新入社員向け研修で強調した。学生時代に
較べて休みが増えても、先立つものがなくては、何もすることがない。休みに
職場に行って仕事の本でも読もうかと思っても、「不当な労働」と疑われるか
ら止めろと先輩から言われた。
たった一時間の残業を終えた、その夏の日。まだ明るい道を帰ろうとすると、
後ろから来た係長が、「飯でも食いに行こう」と誘った。自分では行かない類
の飲み屋。仕事に厳しい係長に特に話すこともなく黙っていると、係長が空を
見つめて独り言のように言った。
「市川。札幌にある管理部のビルの前に行ったことがあるか。夜遅くまで電気
が消えてなくてな。皆、自分が与えられた仕事を片付けるまで帰らないんだ。
課長になるまでは残業で金もでる。仕事もバンバン覚える。経験も増える。会
社の中身がどんどん分かってくる。年を取る前に、技術とか、知識とか、経験
とか、人脈とか、覚えることは山ほどあるからな。俺はそういう職場の方も、
若いうちはいいと思うんだ」。
クライアントに行くと、サービス残業を厳格に管理しなくてはと人事課長が
嘆いていた。
「労基は五月蝿いですか。きちんとしなきゃならないですね。ただ、その時に、
企業が若手に提供できる財産をどうやって渡すかが問題ですね」と、私は独り
言のように言った。
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次号予告:
第257話 『あきないのネタ』 (10月10日発行)
小売業のコンサルタントのセミナーに出てみて知った、商売の鉄則。頑張り
を要求する根性論でもなく、何かをやり続けることと言った希望的観測でもな
く、すんなり腑に落ちる或るルールから、考えたことをまとめてみました。
(完)