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経営コラム SOLID AS FAITH 第255号
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ご愛読ありがとうございます。第255話をお届けします。
9月に入っても、クーラーが一般家庭には全く普及していない札幌の私の机
では、PCのファンが轟音を立てています。暑いとウキウキする私には非常に
嬉しい年です。皆様は如何お過ごしでしょうか。
10月末日に発行予定の11周年記念特別号の企画もほぼ決まり、鋭意準備
を進めております。ソリアズ全体を振り返る路線から珍しく逸脱したテーマ設
定です。ご期待下さい。
弊社のクライアント企業の殆どは零細組織ですが、そこでは社員全員参加型
の行事が催されることがあります。飲み会や旅行など、かなり頻繁に行なって
いる企業もあります。海外の企業などでは、類例が少ないと聞きます。今回の
号は、企業におけるそのような取り組みに関して、考えたことをまとめてみま
した。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想な
どへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その255:島に眠る蛸壺
昭和の終わり。電話会社に高卒で入社した頃、電話の殆どがダイヤル式の黒
電話で、プッシュホンは画期的な新商品だった。接続サービスの分野では、キ
ャッチホンサービスが開始されて間もなかった。電話は一家に一台どころか、
地方の農家などでは、一回線を二軒で共用し、片方が使うともう一方は使えな
い、共同電話でさえ多く残っていた。共同電話は不便で、故障も多いと、一般
電話に徐々に置き換わる。
「一家に一台」が普及し始めると、今度は親子電話が便利な新商品として登場
した。玄関近くの皆が行きやすい場所に鎮座していた黒電話は、階毎、部屋毎
のカウンターやテーブルの隅などに置かれるようになった。以前は、通話者が
廊下に立って話していたので、誰が誰に電話して何を話しているか一目瞭然だ
った。部屋毎の電話になると、誰が何の話をしているか分かりにくい。家族の
間で共有されていた色々なものが失われ始める。
25年以上前の電話会社の二年間に渡る幹部養成の集中研修。一年目は大学
の教養レベルの種々の科目を履修する。社会学の講師は有名大学からの客員。
講義期間の途中に急に後任者に替わったのは、通信技術の発達が家族の単位を
壊していると指摘し、家庭における電話の使われ方に言及してしまったためと
噂されていた。
高校時代には、学校では学べない知識見識が手軽に読める講談社現代新書と
ブルーバックスを読み漁るようになり、新書好きが板に着く。新書はその後、
出版社各社が売り出すようになり、選択肢は一応増えたものの、社会の需要が
そうであるのか、心理学・社会学の分野が多いように感じる。新書を買い求め、
参考文献の欄を見ると、半分近く私も読んだことがある新書であることもある。
社会を俯瞰する新書で繰り返し述べられる「島宇宙」や「蛸壺化」。遥か昔の
社会学講義の前半で教えられたことは、今では「昔」と比較しなくては自覚で
きないほどに当り前になった。
「市川さん。来週と再来週の勉強会は、休止と言うことで良いですか。社員を
二班に分けて、社員旅行に行かせることになっていて、勉強会のメンバーも交
互にいなくなるので、落ち着かない以上に、満足に進展させられないと思うん
ですよ」。
サービス業のクライアント企業幹部が、「不景気でも、毎年のことなんで」
と私に苦笑いしながら言う。数年にわたるお付き合いをして戴いているので、
私には釈明も必要ない。
30年近く前の新入社員時代に、私が大嫌いだった社員旅行。温泉旅行、ス
キー旅行。どれも楽しかった思い出などない。その頃からさらに進んだ社会の
状況。社員を獲得する外部環境が大きく様変わりして来ていても、求める人材
像と組織像を頑なに担保しようとするクライアント企業のあり方に思い至って、
私の方も苦笑いした。
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次号予告:
第256話 『留保制限』 (9月25日発行)
残業の抑制が多くの職場で検討・推進されていると聞きます。30年近く前に、
労働組合の労働時間管理が厳しかった職場にいた頃を振り返り、残業の意義を
考えてみました。
(完)