003 自販機のある生活

==================================
経営コラム SOLID AS FAITH 第3号
==================================
第3号をお届けします。

とうとうご登録いただいた読者の方が、1000人を越えました。他の経営心得の
ジャンルに入っているメルマガに比べて、私の書きたかったものはかなり毛色が
違い、おっかなびっくり始めましたが、ありがたいことに読者の方は今も増えつづ
けています。

 経営論の類の書籍は多く、テレビなどでも色々な経営の問題が論じられるように
なりました。それだけ、企業の経営が普通の人々の生活に良くも悪くも大きな影響
を及ぼすようになったのだと思います。ただ、私が残念に感じるのは、経営を論じる
ときに、手法・戦術論がその多くを占めているように感じられることです。SOLID
AS FAITH はそんな思いから書き始めることにしました。ご共感いただけるところが
あれば幸いです。

 また、第2号発行直後に読者の方から初めてお返事をいただきました。「読みに
くい」とのご指摘でした。改行を多少なりとも増やすなどの観点で検討したいと思い
ます。ご意見ありがとうございました。ご意見やご感想は、どうぞお気軽にお寄せ
ください。特に、内容に関する忌憚ない意見をお待ちしています。

==================================

その3:自販機のある生活

米国に住んでいて、一番不便であったのは、ソフトドリンクの自販機が少ないこと
だった。私が帰国してから既に8年、今はどうであるか知らないが、大都市でも、
地方都市でも、日本のように路地に整然と自販機が並んでいる風景は見たことが
無かった。友人に、尋ねると、「そんなことをしたら、車で自販機ごと持っていかれ
てしまうじゃないか!」と驚かれた。郵便受けを家から遠く離れた道路脇にぽつんと
立て、新聞配達は玄関前に新聞を投げ捨てていくこの国で、他にも盗まれそうな
放置物はあると感じるが、やはり、キャッシュが詰まった路上の金庫である自販機
を外に置いておくことはできないらしい。

 ビル・トッテン氏は、その著書で、日本のガソリンスタンドで働く若者を賞賛して
いる。全く無人であったり、半無人状態のガソリンスタンドでは、望むべくも無い
清潔で行き届いたサービスが日本では受けられる。合理化・効率化を推し進めて、
無人のガソリンスタンドが並ぶかの地では、通勤途中のOLまでもが男女平等と
ばかりに、スーツに落ちたガソリンの染みに舌打ちしながら給油している。

 しかし、トッテン氏が賞賛するのは、サービスの良さ自体ではない。企業が若い
人を教育し、その職場を確保している点であった。氏によると、合理化追求の結果、
こうした職場が無くなり、無職の若者が多くなったことが、米国の治安悪化の最大
要因であるという。端的にいうと、アメリカ人は、ガソリンの価格などに見られる
効率性追求の結果の代償として、カージャックの危険に甘んじ、高い税金を払って
無職者への福祉と刑務所の維持運営を実現しているということになる。

 坂口安吾が「堕落論」で言うように、絵画や建築そのものではなく、人々の生活の
中に文化が在るのなら、働き感謝される場を人々に提供するのは、立派なメセナ
事業ではないか。数億する絵をロビーでおっかなびっくり展示するよりはるかに素晴
らしい。

 「米国では既に…」。かの国を見習うばかりのこんな論調が、どこでもかしこでも
聞かれる。いい所掬いの情報で全ては分からない。車を持っていない私にはガソ
リンの価格はどうでも良いが、歩けば5分以内に自販機がある生活をしたいと思う。

==================================
発行 MSIグループ
ご意見・ご感想などを頂ければ幸いです。
msi-group1@mbb.nifty.ne.jp
このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して
発行しています。( http://www.mag2.com/ )
マガジンID:0000019921
講読の登録・解除はこちらのURLでお願いします。
http://member.nifty.ne.jp/MSI-GRP/