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経営コラム SOLID AS FAITH 第252号
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ご愛読ありがとうございます。第252話をお届けします。
経営者の読書の傾向は、加齢と共に哲学と歴史に向かうように、以前から感
じていました。映画館で見逃してから予定が既に出ているDVD発売を待って
いる『しかしそれだけではない。加藤周一幽霊と語る』。その関心から、加藤
周一の著作を十冊近く買い込み、その長さを耐えつつ、少しずつ読んでいる自
分に気付きました。
経営者足りえるかは別として、加齢の例外ではありませんので、以前に較べ
てその手の分野の書籍を読むことが増えています。ジアタマがあまり良くない
ので、かなり挑戦的と思いつつ買い込んだ『ゲーデルの哲学』(高橋昌一郎著)
を何度か繰り返し読みました。仕事をしていて、文系か理系かということが話
題になることが時々あります。そのたびに『ゲーデルの哲学』が思い出されま
す。そこで考えたことをまとめてみたのが、今回の『寛容の科学』です。
文系・理系の相違が分からないままにいますが、『ゲーデルの哲学』を読む
と、その境界はかなり曖昧なものと考えざるを得ません。敢えて世の中で言わ
れる文系・理系の考え方を、周囲の企業経営のありようを見る目に適用すると
どうなるのかを考えた結果を一話にまとめてみました。本文に対するご意見・
ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5
営業日!!
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その252:寛容の科学
「俺も元はシステム屋だが、この大学に来て学部で経営のクラスを取ってみて、
理系の人間は経営に向いていると思う。人文の連中は、経営を理論や理屈で論
評したり鑑賞したりするもんだと思っている。技術の世界は結局、仮説を立て
てその通りかどうかを確かめることしかできない。今までの認識や価値観を疑
って、改善の余地や実現の可能性を単純に追い続けるってことじゃないか。経
営は利益ってモノサシしかないから話は単純だ。電話会社で技術屋をしていた
んだから、ショウ、お前も分かるだろ」。
シンガポール出身のベンが流暢なブリティッシュ・イングリッシュで能弁に
語る。ショウとは、正人の正の字を音読みした私の留学時代の渾名。留学当初、
英語の会話が儘ならない私について、同じ留学生のベンは、「勤勉な日本人が
低能な訳はない。英語は確かに下手だが、俺はこいつと友達になる」と、米国
人の学生達に宣言してくれた。
高校は普通科なのに、就職した電話会社では技術職として配属され、留学し
てから初めて経営学を専攻することができた。私が出演する社員教育ツールの
DVDを見たクライアント企業の社員の方々から、「市川さんは、理系・文系
のどちらなんですか」と尋ねられて、答えに窮した。大学の学位は Bachelor
of Science だから、一応理系なのかもしれないが、世の中一般の理系と文系
の分類を私はよく理解していない。
「人は研修などで変えることができるのか」。
クライアント企業の社長が投げ掛けてくる定番の問い。変えることができな
いなら、既に望ましくなっている人材を慎重に選別して採用することが唯一の
人材確保の手段となる以上、組織運用を考える上で避けて通れない。独立以来、
社員や顧客など、組織に関わる人々の動機付けを考えて続けて、最近やっと自
分なりの結論に到達した。
「事実は変えられないが、その認識は変えられる。そして、人の本質は変えら
れないが、適応させることはできる」。
留学時代に見学に行った木材工場では、工員が自分のラインで発生した不良
を、まるで天災の如くに認識していて、マネージャーが新たな指示をするまで
ただ呆然と待機していた。ここに居る自分は仮の姿とばかりに、定時になると
一目散に去って行く。人も資本の一つと見る「資本主義型経営」では、人が望
ましくないままに変わらなければ、入れ替えるしかなくなる。人は資本の一部
ではなく、資本を運用する組織の一部と考えるなら、入れ替えずに、組織環境
に適応して能動的に機能して貰うことになる。「人本主義」の本を数冊読んで
みて考えた。
短期的な利益のモノサシで計れる資本ではなく、組織の一部としての人。そ
のありのままを受け容れ、受け止めつつ行なう組織運用。分からないままに、
何となく文系の思考は物事をありのままに受け止め、理系思考は懐疑とシンプ
ルな因果が根本にあるように感じている。今の自分の商売における技術屋思考
の有効性を今一度検証した方がよいように思えてきた。
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次号予告:
第253話 『大人の薬』 (8月10日発行)
よく「仕事に教えられる」と言う表現を耳にします。意味する所は、仕事を
する中で効率の良い方法に気付かされ、スキルが伸びるということのようです。
もう少々巨視的に捉え、仕事が教えてくれることについて考えてみました。
(完)