582 家族の肖像

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経営コラム SOLID AS FAITH 第582号
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 ご愛読ありがとうございます。第582話をお届けします。

「ズーニンの法則」と呼ばれる人間の行動特性があります。これは「初動4
分の法則」とも呼ばれ、米国の心理学者のレナード・ズーニンが主張しまし
た。内容は「一旦起こした行動を4分間続けると、脳の側坐核が刺激され、
その行動に対する作業興奮が始まる」というものです。

 脳の側坐核が刺激を受けると、ドーパミンが分泌されます。ドーパミンは
前向きに物事を捉えて意欲高いマインドの状態を創り出します。つまり、側
坐核がやる気のカギを握っていることになりますが、問題は側坐核を刺激す
る方法です。単に「さあ、やるぞ」と念じたり叫んだりしても、誰かから褒
められたりなどしても、側坐核を刺激することにはなりません。側坐核は既
に起こされた行動によって刺激されるのです。つまり、やる気はやり始める
から湧くものなのです。

 やる気が湧いていない状態でも、何かの切っ掛けや必然性で物事を4分間
やってしまうと、その「やっている動作そのもの」によって側坐核が刺激さ
れ、やる気が湧き、その動作は継続しやすくなるのです。

 年が替わり、年度が替わって、新たな取組みとして新規の案件のご相談を
いただくことが幾つか出て参りました。ところが、中小零細企業の経営者や
幹部の方々が、プロジェクトの作業の期限を守れなかったり、送ったメール
の返信がいつまでもできなかったり、いつまでも請求書一枚作成できなかっ
たりなど、首を傾げるような事態が頻発しています。

 中小零細企業が大手と伍してやっていく際にカギとなるのは「やると決め
たらすぐやり、止めると決めたらすぐ止める機動性」と「特定ターゲット客
の方々から選ばれ続ける高い顧客満足度」の掛け算であろうと考えられます。
その重要な第一の要素が日常の中で全く実現できていないことが露呈して、
なぜVUCAの時代になって経営が厳しくなって来たり、手詰まりになってきた
りしたのかがありありと分かるのです。

 経営者や幹部が決めたことを直ぐやったり止めたりできていないのであれ
ば、従業員がそれをやっているはずがありません。マーケティング策を案出
したりムダ取りをして生産性を上げたりする遥か以前の問題であろうと思わ
れます。経営環境の複雑さがジワジワと上昇して、色々な配慮が中小零細企
業経営にも必要になってきましたが、それ以前になまくらな側坐核を持つ経
営者や幹部も経営の大きな障害になっている実態に驚かされます。

 今号は『家族の肖像』と題して、世界的なポリコレ系の話題を通してマー
ケティングの基本的常識の一つであるターゲティングについて考えてみます。
海外の幾つかの国々では過剰なポリコレ的な配慮を「声高な勘違いの主張」
に対してすることで企業活動まで制約を受けているようです。

 ターゲティングのことを理解できない経営者も本文に書いたようにまだま
だたくさん存在しますが、ターゲティングを理解しても無意味なポリコレ的
配慮をしているのもまた困りものです。そのようなことを他の主要先進国に
比べて苦労しなくて良い日本の経営環境について一緒にご一考ください。ご
意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標
納期は5営業日!!

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その582:家族の肖像

「このようなスタイルのコマーシャルを、北米でも主流に出来ないんだろう
か?(加)」。「アメリカ市民として言わせていただく。日本よ、君たちは
勝利したんだ。(米)」。「このCMが爆発的に注目されたのは、これが僕た
ちにとって異質なものだからだ。欧米はもはや、人間であることの核心に語
りかける、基本的なメッセージを生み出せなくなってしまった。(英)」。

 2023年9月。日本マクドナルド社が公式SNSにて「特別じゃない、しあわせ
な時間」というメッセージ付きで配信した。同社の商品を自宅らしき場所で
親子3人(両親と娘)らしき人々が味わっているだけのシンプルで可愛らし
いアニメ。しかし、この広告は投稿から数日で閲覧数が1億2千万、「いいね」
が60万越えの大反響を生んだらしい。

 家族を描けば「家族の幸せという価値観を押し付けるな」と糾弾され、黒
人が登場しないと「人種差別」と糾弾され、男女のカップルを出せば
「LGBTQへの配慮がない」と糾弾される。それが欧米のポリコレの常識でこ
の広告はそのどれをも無視している。

「ターゲットというお客を絞り込んだら、他のお客に売れないじゃないか」。
 欧米など他先進国に比べてもダントツに消費が飽和している日本。そこで
は殆どの市場がレッド・オーシャンで、セグメント化されたサブグループの
ニーズを狙ったマーケティング展開は必然だと、マーケティングの祖マッカ
ーシーや記号消費の祖ボードリヤールの著書をちょっと齧ればすぐ分かる。
そんな当たり前のことなのに、中小零細企業の経営者に「ターゲットを絞っ
てないから売れない」と指摘すると激高して反駁されることがある。

 私がTCと略すほどに頻用する用語「ターゲット・カスタマー」。本来商品
・サービスはニーズを満たすためにある。特定のニーズを持つ人は色々いる
が、漠然と「こんなニーズ」では共有できない。だからそのニーズの持ち主
をTCのモデル像として想定する。

 30代後半のヒスパニック系の独身女性ノンキャリ会社員が、日常の買い物
にショッピングモールに着て行くようなカジュアル服を売っている店があっ
たとする。当然広告はヒスパニックの女性が主役だろう。白人も黒人も男も
老人も出てこない。白人でも黒人で男でも老人でも、そういう服が好みなら
来ればよい。店側はそれらの客が現れても歓迎する。

「広告は、日本のように自由であるべきだ。(米)」。
 先のSNS広告の反応のひとつ。企業は法律で人と見做されているから「法
人」という。個人も法人も広告のみならず経営の自由を謳歌できる日本市場
の有難味に気づく。

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

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■『感性のある人が習慣にしていること』 SHOWKO 著
■『零落』 浅野いにお 著
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 MSIグループ 市川正人
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次号予告:
 第583話 『BI前夜』 (5月10日発行)
 企業にとって従業員の離職が止まらないという話をよく耳にするようにな
りました。無業者の増加と合わせて一考してみました。

(完)