『つるかめのように』 番外編@SKIP シティ

国際Dシネマ映画祭で見てきた三本目の映画です。
「つるかめのように。長生きしたいなら、つるつる飲むな。噛めよかめかめ。戴きます」と言う長めの「いただきます」の挨拶をしてから食事を始める家族(夫婦と高校生らしい娘の三人)の話ですが、僅か14分の短編です。

主なシーンは、食卓と玄関しかありません。最初の場面で、娘が朝食卓に来ると、母親が既に料理を始めています。全く、「病気」とも「退院」とも何も語られませんが、雰囲気や会話の内容から、どうも母親は不治の病で入院先から短い間(それも久しぶりに)帰宅したような設定であることが窺えます。その後、三人で玄関に出て、記念写真を撮影します。桜吹雪が舞います。そして次の一連のシーンは、また食卓ですが、今度は娘が料理をしています。そして父親と二人でテーブルに着き、あの長い挨拶を変わらずにするのです。卵焼きに焦げがないかを見て、「完璧」という台詞回しを、先のシーンの母親同様に今度は娘が言います。

こうして、亡くなったと推察される母親の存在は家族の中に生き続けている様子が、淡々と言葉少なに、しかし、非常に丁寧に描かれています。ただそれだけの映画です。しかし、14分に盛れる言葉の殆ど混じっていないような映像で、家族の関わり方や互いの大切さを見事に描いていると思います。設定の本質的ではない部分について、極限まで説明をカットした作品としてみた時、驚くべき秀作に思えました。